2021年03月17日

ペット保険-損害保険だけど生命保険会社でも加入可能

小林 直人

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1――はじめに

一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2019年から2020年で、犬猫の新規の飼育頭数が増加している1

犬や猫といったペットを飼育している場合に、万一、ペットがケガや病気により動物病院で治療を受けた場合の動物医療は人の医療とは異なり、「自由診療」が原則とされており、近年では、高度な診療技術やチーム獣医療の普及に伴い、診療の内容はますます多様化し、診療料金についても疾病により、あるいは対応時の診療体制により幅があるとされている2

本稿では、ペットがケガや病気により動物病院に治療を受けた場合に、治療費等を補償するペット保険について紹介したい3
 
1 一般社団法人ペットフード協会「令和2年全国犬猫飼育実態調査」(https://petfood.or.jp/data/chart2020/index.html, 2021年3月8日最終閲覧)
2 公益社団法人日本獣医師会「小動物臨床」ほかリンク先参照(http://nichiju.lin.gr.jp/small/ryokin.html, 2021年3月8日最終閲覧)。
3 紹介・引用する会社・商品は例であり、本稿で紹介・引用する会社・商品以外にも同様の取り扱いの会社・商品がある場合がある。
 

2――ペット保険とは

2――ペット保険とは

ペット保険とは、犬や猫などのペットがケガや病気により動物病院での治療費や入院費などを補償する保険である。ペットは、人とちがって公的な医療保険の制度がないため、治療費は全額自己負担となるが、そのような経済的負担を軽減するための保険である。
 

3――ペット保険を取り扱っている会社

3――ペット保険を取り扱っている会社

ペット保険を取り扱っている保険会社には、「損害保険会社」、「少額短期保険業者」の2種類がある。

少額短期保険業者とは、扱う保険金額が「少額」で保険期間が「短期」の保険のみを取り扱う会社である。具体的には少額短期保険業者は、損害保険については、保険金額は1,000万円以下、保険期間は2年以内とされている(保険業法第2条第17項、保険業法施行令第1条の5・同第1条の6)。また、年間の収受保険料が50億円以下の基準範囲内で業務を行うこととされている(保険業法第272条2項、保険業法施行令第38条)。そして、最低資本金は損害保険会社の10億円に対し(保険業法第6条第1項、保険業法施行令第2条の2)、少額短期保険会社のそれは1,000万円となっている(保険業法第272条の4第1項第2号、保険業法施行令第38条の3)。

ペット保険を取り扱っている会社として、損害保険会社では5社、少額短期保険業者では10社が確認できる(図表)。
図表:ペット保険を取り扱っている損害保険会社・少額短期保険業者
なお、損害保険会社は、損害保険契約者保護機構という団体への加入が義務付けられているので、万が一、保険会社が破たんということになった場合、損害保険契約者保護機構の対象となる。一方、少額短期保険業者は損害保険契約者保護機構という団体への加入が義務付けられておらず、保険契約者等の保護の観点から、供託金の供託が義務付けられている(保険業法第272条の5第1項・第2項、保険業法施行令第38条の4、保険業法施行規則211条の9)。
 

4――ペット保険の加入対象の動物の種類・年齢

4――ペット保険の加入対象の動物の種類・年齢

保険会社によって加入できる動物の種類、年齢は異なる。

ペット保険の対象としている動物の種類については会社・商品により異なるが、一般的に、犬、猫については、ペット保険を取り扱っている会社のうち、大抵の会社で加入が可能である。保険会社によっては、犬や猫以外の鳥やウサギ、ハムスター、爬虫類などの動物も補償対象としているところもある4

また、対象となる動物について、年齢条件が設けられていたりする場合や年齢により保険料が異なる場合があるし、犬に関しては、会社・商品によって犬種や体重によって保険料が異なる場合がある。
 
4 アニコム損害保険は、小動物(うさぎ、フェレット、モモンガ、リス、ハムスター、ネズミ、モルモット、ハリネズミ、チンチラ)、鳥、爬虫類(カメ、トカゲ、へビ)、SBIプリズム少額短期保険は、小動物(うさぎ、フェレット、モモンガ、リス、ハムスター、モルモット、ハリネズミ、チンチラ)、鳥類(オウム、ヨウム、ブンチョウ、サイチョウ、カナリア、インコ、ジュウシマツ)、爬虫類(カメ、イグアナ)を対象とする商品を取り扱っている。
 

5――ペット保険の補償内容

5――ペット保険の補償内容

1補償対象の診療形態
ペット保険の主な補償は、通院時の補償、入院時の補償、手術時の補償である。基本的に日本国内の治療を補償対象としている。会社・商品によっては、これらの通院、入院、手術といった診療形態のうち一部を補償対象から外したりして保険料負担を抑えて加入できる場合もある5

通院時の補償は、ペットがケガや病気などにより、動物病院で診察、治療を受けた際の診療費についての補償である。補償の対象となる病気や治療法については、例えば、予防接種や不妊治療は補償の対象外であることが一般的です。

入院時の補償は、ペットがケガや病気などで動物病院に入院した際の診療費についての補償である。会社・商品によっては、補償対象の入院を手術に必要な入院とし、途中で退院した場合はそれ以後の入院は補償の対象外とする商品もある6

手術時の補償は、ペットがケガや病気などで手術を行った際の診療費についての補償である。
 
5 au損害保険は通院時の補償がない「通院なしタイプ」も用意し、アイペット損害保険は手術を伴わない入院・通院は補償対象外とする商品も取り扱っている。
6 アイペット損害保険。
2補償割合
ペットがケガや病気で診療を受けた際に、かかった診療費に対して何%が補償されるのか、といった補償割合が会社・商品によって定められている。

補償される割合は、補償割合が50%、70%、100%など会社・商品によって異なる。一般的に、補償割合が高くなるほど保険料も高くなる傾向がある。
3支払限度
会社・商品によっては、通院、入院、手術などの給付の対象となる診療において、保険期間中に支払われる保険金の合計に限度額が定められている場合がある。通院、入院、手術といった診療形態ごとに1日(1回)あたりの支払限度が定められていたり、年間の支払い日数や回数の限度が定められたりしている場合がある7。会社・商品によって限度額の定め方は様々で、例えば、保険期間中の支払い限度額までなら、1日(1回)あたりの支払限度や保険期間中の保険金支払いの回数制限がない商品・会社もある8
 
7 アニコム損害保険、アイペット損害保険。
8 au損害保険。
4待機期間
会社・商品によっては、保険期間の開始時から30日間等一定の期間の診療には保険金が支払われない期間、いわゆる「待機期間」(「免責期間」などともいわれる。)が設けられていることがある。

ペット保険における待機期間の定められ方も会社・商品によって様々である。ケガの場合は15日間、病気の場合は30日間(がんの場合は90日間)といった待機期間を設けている会社・商品9もある一方で、ケガについては待機期間を設けていないが、病気については30日間を待機期間としていたり10、けがの場合も病気の場合も待機期間を設けていない会社・商品11もある。また、疾病に関する待期期間について、がんについての待機期間をがん以外の疾病の待機期間より長期に設定している会社・商品12や、がんについての待機期間のみを設け、がん以外の疾病やケガについては待機期間を設けていない会社・商品もある13

待機期間が会社・商品によって区々であるうえ、会社・商品によって加入手続きから保険期間の開始時までの期間も様々であるので、実質的に補償される時期がいつからかは留意する必要があるだろう。
 
9 ペット&ファミリー損害保険。
10 アニコム損害保険、au損害保険。
11 アイペット損害保険、FPC、ペットメディカルサポート
12 アクサ損害保険。
13 SBIプリズム少額短期保険。
5補償を充実させる特約
ペット保険の主な補償として既述してきた、通院時の補償、入院時の補償、手術時の補償に加え、さらに充実した補償にすることができる会社・商品がある。主契約の他に、任意で特約をつけたりすることで、補償内容を充実させることができる会社・商品がある。ただし特約であっても自動付帯となっているため補償を外すことができない会社・商品もある。

補償内容を充実させる例をいくつか挙げると、以下の例がある。

まず、待機期間を不適用とする特約がある14

ペットが他人にかみ付いてケガをさせたり、他人のモノを壊したりするなどすると、飼い主が法律上の賠償責任を負うことがある。こうした、ペットの行為に起因して偶発的な事故により、他人の身体の障害または他人の財物の損壊について飼い主が法律上の賠償責任を負った場合に、その損害に対して保険給付を行うペット賠償責任特約等を用意している会社・商品がある15

それらの他にも、保険会社に保険金を請求するために必要な診断書作成そのものに費用がかかった場合、その診断書費用に対する補償16、高度後遺障害に対する補償17を提供している会社・商品、がんに対する補償を充実させている会社・商品18のほか、ペット用車イス等の制作費用に対する補償19や、ペットが亡くなったときの遺体処理費用や火葬費用を補償する商品・会社20など様々である。
 
14 アニコム損害保険。
15 アニコム損害保険、アイペット損害保険、イオン少額短期保険、楽天少額短期保険、イーペット少額短期保険。
16 イオン少額短期保険、SBIプリズム少額短期保険。
17 SBIプリズム少額短期保険。
18 SBIプリズム少額短期保険。
19 ペットメディカルサポート。
20 イオン少額短期保険、SBIプリズム少額短期保険、ペットメディカルサポート。
 

6――ペット保険の保険金の請求・支払方式

6――ペット保険の保険金の請求・支払方式

万が一、ペットがケガ、病気で診療を受け、保険金の請求を行うことになった場合、ペット保険の保険金支払方法には立替請求方式と窓口割引方式の2種類の方式がある(会社・商品によって表現は異なる。)。

立替請求方式は、一旦は動物病院で治療費を全額払い、後日保険会社に保険金を請求する方式である。この場合、保険金請求後、指定口座に保険金が振り込まれる。

これに対して、窓口割引方式は、動物病院の窓口で、保険による給付分を差し引いて自己負担分だけ支払う方式である。保険加入を証明する保険証などを掲示することにより、診療費から保険による補償分を差し引いた金額を自己負担として動物病院に支払うことで保険給付がなされるという方式である。この方式では、後日保険金の請求をする必要がない。ただし、保険会社が提携している動物病院で診療を受けた場合に限られるため、この方式を採用しているペット保険に加入していても、提携外の病院で診療を受けた場合は既述の立替請求方式により、保険金の請求をする必要がある。
 

7――その他の保険料割引制度やサービス

7――その他の保険料割引制度やサービス

加入者が利用できる保険料割引制度や無料サービスを用意・提供している会社・商品がある。

保険料割引制度としては、複数のペット分をまとめて加入すると割引になる多頭割引や、マイクロチップを装着済みのペットの場合に保険料を割り引くマイクロチップ割引など、会社・商品によってさまざまな制度がある。インターネットから申し込み手続きをすると保険料が割引になる会社・商品もある。

無料サービスの例としては、獣医師の無料相談を受けられるといったサービスを提供している会社・商品がある。
 

8――加入方法・経路

8――加入方法・経路

会社・商品によって加入の方法・経路についても様々な方法・経路がある。

まず、保険会社に個別で資料・契約申込書等を請求する方法がある。資料請求については、インターネットで一括して資料請求するやり方もある。

また、取り扱っている会社・商品にもよるであろうが、ペットショップなどが保険代理店となっている場合もあるので、ペットショップなどで加入することもできる。代理店という点では、生命保険会社が損害保険会社の代理店となっている場合もある21

その他、インターネットにより加入する方法もある。
 
21 太陽生命「太陽生命がおすすめする損害保険商品」(https://www.taiyo-seimei.co.jp/lineup/nonlife.html, 2021年3月8日最終閲覧)、日本生命保険「商品一覧」(https://www.nissay.co.jp/kojin/shohin/ichiran/sompo.html, 2021年3月8日最終閲覧)、明治安田生命保険「損害保険」(https://www.meijiyasuda.co.jp/find/damage/index.html, 2021年3月8日最終閲覧)。
 

9――おわりに

9――おわりに

ペット保険は、取り扱い会社が損害保険会社と少額短期業者の2種類であることに加えて、会社・商品によって様々な補償内容の商品が発売されているし、加入方法・経路も様々である。どういったことを重視するか、どういった補償やサービスが必要か、どういった補償、サービスは不要かを考えて、飼育しているペットにふさわしい保険を選びたい。

また、加入に際しては、ペットの過去のケガや病気の履歴、現在の健康状態等についての告知義務があり、それら健康状態等によっては、加入できなかったり、加入できても特定のケガや病気については支払対象外となる条件が付いたりする場合もあるので、ペットの加入年齢の制限とともに留意が必要であろう。

(2021年03月17日「保険・年金フォーカス」)

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小林 直人

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