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- 中国の生命保険市場(2019年版)基礎データ【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(46)
2021年02月16日
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1-市場概況
近年の中国の生保市場は、国民の所得の向上、高い保障ニーズに加えて、2014年の予定利率の上限の緩和措置が奏功し、2016年までは短期・貯蓄型の保険を中心に急速な成長を遂げていた。一方、保険会社の中には資産と負債のデュレーションのミスマッチやリスクの拡大など多くの問題を抱える事態が発生した。よって、2017年以降、当局は市場の健全化をはかるべく、保険会社に対して、終身、医療などの保障性商品や、契約期間が長期で平準払いの貯蓄性商品の販売へのシフトを強く求めた。加えて、契約期間が短い一時払い商品の販売も規制したこともあって、2018年の収入保険料の規模はこれまでで最大となったものの、増加幅は小幅にとどまっていた。2019年は、依然として当局の指導や規制が続いているものの、市場のニーズが高まり、2桁の増加率に回復した。
1 1元=15.6円で換算
1 1元=15.6円で換算
2-商品構成

健康保険(傷害保険を含む)の構成比は前年から0.7ポイント減少して、全体の23.2%を占めた。既存の実損填補型の医療保険に加えて、ネット保険を中心に、「百万医療保険」といった高額な給付を目的とした保険商品も急速に普及し始めた。
3-販売チャネル構成
4-保険金、解約払戻金の支払い状況
5-主要な保険会社の業績状況
2019年、国内系の生命保険会社(医療保険専門、企業年金専門の保険会社を含む)は63社、外資系生保は28社であった。市場占有率(収入保険料ベース)は、国内系生保が90.5%を占め、外資系生保は9.5%であった。市場占有率の高い上位3社は、中国人寿、平安人寿、太平洋人寿である(図表5)。
国有生保最大手の中国人寿は2018年の業績低迷から浮上し、保険料収入、営業収入、純利益とも大幅に増加した。保険料収入の伸びは、新契約が奏功している。保険料収入の伸びに加えて、投資収益の増加、商品構成の見直しによる解約や満期保険金の減少も純利益の増加に貢献した。中国人寿は、復活戦略として、2019年3月に「鼎新プロジェクト」をスタートし、販売チャネル、投資、商品、デジタル化、金融エコシステムの形成といった分野での改革を推し進めている。
民間生保最大手の平安人寿は好調を維持している。2014年以降、他社に先駆けて取り組んだ総合フィンテック企業としての戦略が奏功している。UX(ユーザー体験)の向上を重視し、AIやビッグデータの分析と個人代理人のサービス提供を組み合わせることで実現している。また、保険のみならず、その他のネットサービスの利活用によって顧客1名あたりの契約件数が増加し、クロスセルにつながっている。2019年の保険料収入は前年比10.5%増の4,939億元、営業収入、純利益とも堅調に増加した。
太平洋人寿も、概ね好調を維持している。2017年の市場健全化を受けて、2018年から太平洋保険グループ全体で取り組む「戦略転換2.0」プロジェクトの実施過程にある。特に、代理人のレベル向上、金融エコシステムでのサービスレベルの向上、手続きやフローでのデジタル化の強化を重視している。2019年の収入保険料は前年比5.0%増の2,125億元にとどまっており、新契約の保険料収入の減少が全体に影響を与えている。なお、営業収入、純利益とも増加しており、グループ全体での取り組みが奏功している。
外資系生保については、引き続き中国の国内銀行が50%以上を出資するアクサ、シグナといった銀行系生保が上位を占めている。2019年の保険料収入の増加が大きいのは、2018年の銀行窓販の規制などを受けて大きく落ち込んだ後の反動回復が影響している。外資系生保については、全体的には規模は小さいながらも、保険料収入、営業収入、純利益とも堅調に伸ばしている会社が多く、市場占有率も毎年着実に上昇している。2019年12月には、中国銀行保険監督管理委員会が生命保険会社の外資出資比率規制を2020年1月1日から撤廃すると発表するなど、外資規制の緩和が進んだ。
国有生保最大手の中国人寿は2018年の業績低迷から浮上し、保険料収入、営業収入、純利益とも大幅に増加した。保険料収入の伸びは、新契約が奏功している。保険料収入の伸びに加えて、投資収益の増加、商品構成の見直しによる解約や満期保険金の減少も純利益の増加に貢献した。中国人寿は、復活戦略として、2019年3月に「鼎新プロジェクト」をスタートし、販売チャネル、投資、商品、デジタル化、金融エコシステムの形成といった分野での改革を推し進めている。
民間生保最大手の平安人寿は好調を維持している。2014年以降、他社に先駆けて取り組んだ総合フィンテック企業としての戦略が奏功している。UX(ユーザー体験)の向上を重視し、AIやビッグデータの分析と個人代理人のサービス提供を組み合わせることで実現している。また、保険のみならず、その他のネットサービスの利活用によって顧客1名あたりの契約件数が増加し、クロスセルにつながっている。2019年の保険料収入は前年比10.5%増の4,939億元、営業収入、純利益とも堅調に増加した。
太平洋人寿も、概ね好調を維持している。2017年の市場健全化を受けて、2018年から太平洋保険グループ全体で取り組む「戦略転換2.0」プロジェクトの実施過程にある。特に、代理人のレベル向上、金融エコシステムでのサービスレベルの向上、手続きやフローでのデジタル化の強化を重視している。2019年の収入保険料は前年比5.0%増の2,125億元にとどまっており、新契約の保険料収入の減少が全体に影響を与えている。なお、営業収入、純利益とも増加しており、グループ全体での取り組みが奏功している。
外資系生保については、引き続き中国の国内銀行が50%以上を出資するアクサ、シグナといった銀行系生保が上位を占めている。2019年の保険料収入の増加が大きいのは、2018年の銀行窓販の規制などを受けて大きく落ち込んだ後の反動回復が影響している。外資系生保については、全体的には規模は小さいながらも、保険料収入、営業収入、純利益とも堅調に伸ばしている会社が多く、市場占有率も毎年着実に上昇している。2019年12月には、中国銀行保険監督管理委員会が生命保険会社の外資出資比率規制を2020年1月1日から撤廃すると発表するなど、外資規制の緩和が進んだ。
6-資産運用状況
2019年の生保の総資産は、前年比16.1%増の16兆9,575億元であった。中国では、生命保険業全体の資産運用状況は公表していないため、以下では、生保大手5社(中国人寿、平安人寿、太平洋人寿、華夏人寿、太平人寿)について確認し、全体像を概観する2。
図表7は5社の資産のうち、負債を運用し、収益を確保することを目的とした実働資産について債券や株式など運用手段別に分類し、合計したものである。2019年は銀行の定期預金(10.4%)、貸付(7.5%)、債券(54.4%)といったインカム資産が実働資産全体の72.3%を占めており、安全な資産を中心に運用されている。また、およそ半分を占める債券については、国債・政府債が42.6%、金融債が13.2%と安全性の高い債券が過半の55.8%を占めている。
図表7は5社の資産のうち、負債を運用し、収益を確保することを目的とした実働資産について債券や株式など運用手段別に分類し、合計したものである。2019年は銀行の定期預金(10.4%)、貸付(7.5%)、債券(54.4%)といったインカム資産が実働資産全体の72.3%を占めており、安全な資産を中心に運用されている。また、およそ半分を占める債券については、国債・政府債が42.6%、金融債が13.2%と安全性の高い債券が過半の55.8%を占めている。
2 上位5社合計の市場占有率は54.0%である。
7-収支状況
8-保険の地域別普及状況〔生損保合計〕
2019年の1人あたりの保険料拠出は3,046元(生損保合計)で、2018年より321元増加した(図表9)。地域別の普及状況は、1人あたりの保険料拠出額、域内総生産に占める保険料拠出の割合を見ても、所得の高い東部地域が最も進んでいる。
1人あたりの保険料拠出が最も多い北京市(東部地域)は、全国平均のおよそ3倍の9,640元となっている。また、域内総生産に占める保険料拠出の割合(6.0%)についても先進国に相当する割合となっている。一方、拠出額、拠出の割合とも最も小さいのは西蔵(チベット)自治区である。チベット自治区の拠出額は1,066元で、全国平均のおよそ35%、北京市の1/9となっており、普及の地域格差は引き続き大きい。
1人あたりの保険料拠出が最も多い北京市(東部地域)は、全国平均のおよそ3倍の9,640元となっている。また、域内総生産に占める保険料拠出の割合(6.0%)についても先進国に相当する割合となっている。一方、拠出額、拠出の割合とも最も小さいのは西蔵(チベット)自治区である。チベット自治区の拠出額は1,066元で、全国平均のおよそ35%、北京市の1/9となっており、普及の地域格差は引き続き大きい。
9-世界における中国生命保険市場の位置づけ
(2021年02月16日「保険・年金フォーカス」)
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
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