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最高裁では再び判断が覆り、契約社員Bに退職金を支給しなくても不合理な待遇格差とはいえないとされた(図表1)。要するに、長期雇用制の下にある典型的な正社員――(職務給ではなく)年齢給と職能給が支給され、人事異動を経ながら継続的に勤務する――のために用意した制度である以上、契約社員が対象とならなくても不合理とまではいえない、ということのようであるが、ではなぜそうなのかについては必ずしも明確に示されていない。
非正社員には退職金制度がなくても違法ではないという判断がなされたことで、とりあえず胸を撫で下ろした実務担当者も多いかもしれない。しかしこれで安心してはいけない。まず、本判決には宇賀判事の非常に説得力のある反対意見が付されている(図表2)。そして多数意見も、いかなる場合でも非正社員は退職金制度の枠外でよいと述べているわけではない。あくまでも今回のケースでは、ということである。
本判決は内部留保型の退職金制度に関する判断であるが、最近改正された確定給付企業年金法及び確定拠出年金法の法令解釈通知2は、確定給付企業年金及び企業型確定拠出年金が、パートタイム・有期雇用労働法のいわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」3が「不合理と認められる待遇の相違の解消が求められる」とした「退職手当・・・・等」に含まれるという前提に立っている。退職金・企業年金制度を実施する企業は、退職給付制度全体について、その支給対象者や給付額につき、正社員・非正社員の間に説明の難しい不合理な格差が存在しないのか、改めてチェックする必要があろう。
2 「確定給付企業年金制度について」(平14年発0329008号、最終改正令2年発0930-30号)、「確定拠出年金制度について」(平13年発213号、最終改正令2年発0930-29号)
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慶應義塾大学大学院 法務研究科(法科大学院)
森戸 英幸
研究・専門分野
(2021年02月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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