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「働き方改革」と企業年金

慶應義塾大学大学院 法務研究科(法科大学院) 森戸 英幸
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そして現行の企業年金法制も、非正社員を企業年金制度の対象としないことを許容している。「課長通知」と呼ばれる厚生労働省の解釈例規までたどり着かなければわからないのだが、労働協約や就業規則において、正社員と非正社員の労働条件が著しく異なっているのであれば、確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(DC)の加入者を正社員のみに限定してもよい、というのが実務上の取扱いである(図表1参照)。要するに、労働契約上の待遇の差異に応じた扱いであればそれが尊重されるということである。
では退職金・企業年金における正社員・非正社員間の待遇格差が、違法とされる可能性はあるのか。企業年金に関する裁判例はまだ存在しないが、正社員のみを適用対象とする退職金制度につき、労働契約法20条に違反するものではないとしたものがすでにある(図表2参照)。
働き方改革推進法案は、これに加え、有期契約労働者及びパートタイム労働者の雇入れ時等において、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化するという内容も含んでいる。結局経営者としては、仮に訴訟になる可能性が高くないとしても、自社において、正社員と非正社員の間で退職金・企業年金制度に関しどのような差異があり、それがいかなる理由によるものなのかを、それぞれの職務内容や配置の変更の範囲における差異と関連づけて合理的に説明する義務を負うことになる。そのための「理論武装」は急務である。
もちろん、これと同時に法政策側からの対応も必要である。労働法制の変化に合わせ現行法下での規約認可・承認基準を見直す必要があるのはもちろんだが、厚生年金保険の被保険者資格の有無によってDB・DC制度の適用範囲を画するという現行企業年金法制の基本的枠組みの妥当性についても検討の必要があろう1。
1 言うまでもなく、この検討は厚生年金保険の適用範囲拡大の動きを睨みつつ行う必要がある。
(2018年03月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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