2020年12月14日

日銀短観(12月調査)~企業の景況感は2期連続で改善も、警戒感は根強い、投資は軒並み下方修正

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 12月短観では、前回に続き景況感の明確な改善が示された。大企業製造業では、海外経済回復に伴う輸出の持ち直しや、国内外での自動車需要の回復等を受けて景況感が大きく改善した。特に改善が目立つ自動車産業は裾野が広いだけに、幅広い業種に好影響が波及した。非製造業も「Go To キャンペーン」拡充などを受けて景況感が改善したが、対面サービスの自粛ムードが続いているうえ、11月に鮮明化した「コロナ感染第3波」とそれに伴う「Go To キャンペーン」の一部縮小などが重荷になったとみられ、改善は製造業に比べて鈍い。D.I.の水準でみると、それぞれ依然としてコロナ拡大前を明確に下回っており、とりわけサービス需要への打撃が大きいコロナ禍の特徴を反映して非製造業の水準が低い。景気回復の道のりはまだ長い。
     
  2. 先行きの景況感には警戒感が色濃く表れている。特に非製造業は内需型産業が多いだけに、国内で拡大を続けている新型コロナの感染やそれに伴う需要喚起策縮小への懸念が強く、景況感の悪化が示されている。製造業はサービス業に比べてコロナ禍の影響を受けづらいほか、中国など海外経済回復への期待もあり、先行きにかけての景況感悪化は回避されている。ただし、製造業でも内外でのコロナ感染動向など先行きの不透明感が景況感の重荷になっているとみられ、小幅な改善に留まっている。
     
  3. 2020年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比3.9%減へと下方修正された。下方修正は3期連続となる。例年、12月調査では上方修正される傾向が強いものの、コロナ禍で収益が大幅に悪化したうえ、事業環境の先行き不透明感も依然として強いことから、企業の間で設備投資の見合わせや先送りの動きが広がり、この時期としては稀な下方修正となっている。研究開発投資やソフトウェア投資も含め、企業の投資計画は軒並み下方修正されており、利益・キャッシュフローの確保や先行きへの懸念から、投資圧縮姿勢を強めている姿がうかがわれる。
業況判断D.I.の改善幅は製造業が優勢(大企業)/業況判断DIが大幅上昇した事例(2000年以降)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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