2020年12月08日

GoToトラベル・イートの利用意向-第2回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査

基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.285]

生活研究部 上席研究員   久我 尚子

新型コロナウイルス 消費者行動 などの記事に関心のあるあなたへ

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1―9月末のGoTo利用状況

政府の需要喚起策である「GoToキャンペーン」には、トラベルやイート、イベント、商店街の4本の柱がある。トラベルは7月下旬、イートは9月から開始され、イベントや商店街は10月中旬から事業者の募集が始まった。
 
ニッセイ基礎研究所の調査*1にて、先行して始まったトラベルとイートの利用状況を見ると、9月末時点では「利用した/予約済み」の割合は、トラベルは15.2%、イートは1.4%にとどまる[図表1]。
GoTo利用状況
ただし、イートは9月から順次開始したため、10月以降は大幅に伸びている可能性もある。
 
「利用した/予約済み」に「具体的に検討中」をあわせた『利用積極層』は、トラベルは21.3%、イートは9.4%で、さらに「今後、検討予定」をあわせた『利用意向あり』層は、トラベルは47.2%、イートは50.8%を占める。
 
つまり、現在のところ、トラベルもイートも積極的に利用する消費者は少数派だが、約半数には利用意向がある。

2―GoTo利用積極層の特徴

全体の約2割を占めるGoToトラベルの利用積極層の特徴を見ると、独身の若者基礎研レポートや既婚で子どものいないシニア・ミドル層、既婚で子どものいる比較的若い層、近畿地方居住者、職業は公務員や正社員・正職員、高所得層で多い傾向がある[図表2]。

また、不安や意識の面では、利用積極層は、感染しても適切な治療を受けられない不安や世間からの偏見や中傷への不安、感染によって仕事を失ったり収入が減少する不安の弱い層で多く、今後の感染拡大の収束や経済回復への見通しを比較的明るく捉えている層で多い傾向がある[図表3]。
 
GoTo利用積極層
つまり、GoToトラベルを利用している消費者は、時間やお金に余裕があり、感染による不安が弱く、今後の見通しを楽観的に捉えている層が多い。

3―GoToを利用しない最大の理由は感染がおさまっていないため

「利用した/予約済み」以外の回答者に対して、利用していない理由をたずねると、トラベルでもイートでも最も多いのは「国内の感染がまだおさまっていないため」である[図表4]。
利用していない理由
トラベルでは、次いで「旅行・外食をする予定がないため」や「感染して健康状態が悪化する不安から、外出を控えているため」と続く。つまり、感染不安があるため、そもそも旅行を計画していない様子が読み取れる。
 
なお、当初、東京は、感染が再拡大したためにGoToトラベルの対象地域から除外されていた。しかし、このことを理由に利用していない割合は1割未満にとどまる。
 
一方、イートを利用していない理由は「キャンペーンの内容が分かりにくいため」が2番目に多いが、これは周知状況の影響だろう。
 
トラベルは全国的に感染が再拡大した時期に開始したため、その賛否も相まって、メディアでの注目度が高く、消費者が具体的な仕組みを知る機会も多かった。一方、イートはそういった機会が少なかった印象がある。なお、イートの仕組みは、対象となる飲食店予約サイトから予約をすれば、支払い時にポイントが付与されるといったもので、難しいものではないだろう。

4―感染状況が改善すれば、消極層の過半数に利用意向あり

現在の利用状況で「今後、検討予定」と「利用(予約)するつもりはない」と回答した『利用消極層』は、トラベルは78.7%、イートは90.6%を占める。
 
この利用消極層に対して、どうなれば利用するかをたずねると、トラベルでは「国内の感染状況が収束したら」(22.2%)や「国内の感染状況が落ち着いたら」(21.5%)、「居住地域の感染状況が今より落ち着いたら」(9.3%)をあわせた『感染状況の改善』が過半数(53.0%)を占める。ただし、30.8%は、感染状況が収束せずとも、今より「落ち着いたら」利用意向がある。
 
イートでも『感染状況の改善』が過半数(59.7%)を占めるが、今より「落ち着いたら」利用意向がある層は40.0%であり、トラベルを大きく上回る(+9.2%pt)。やはり、身近な場所で、短時間でも楽しむみやすい飲食は、旅行と比べればコロナ禍でも利用しやすいのだろう。
 
一方で、感染状況によらず「利用したいと思わない」(『超消極層』)は、トラベルでは利用消極層の31.0%、イートは26.7%を占める。この超消極層の特徴を見ると、低所得層が多く、感染不安について「どちらともいえない」・「不安ではない」と回答する割合が高い。つまり、超消極層では、感染不安が強いために外出を控えているというよりも、旅行や外食を楽しむ経済的余裕がないために「利用したいと思わない」という消費者が多いようだ。
 

5―おわりに~ GoTo東京追加の効果と今後の懸念は

10月からGoToトラベルの対象地域に東京も加わり、消費者の一層の需要喚起を期待したいところだ。しかし、東京が対象地域でないことを理由に利用していない消費者は少数であり、利用していない最大の理由は、感染がおさまっていないことであった。
 
現在のところ、新型コロナウイルスのワクチンや特効薬は開発段階にあり、コロナ禍はしばらく続きそうだ。また、今後はインフルエンザとの同時流行の懸念もある。よって、東京が追加されたとはいえ、短期間での観光業の劇的な回復は期待しにくいだろう。
 
一方で、コロナ禍における消費者の経験値は上がり、企業の創意工夫も至るところに見られるようになってきた。
 
例えば、旅行者や地元の安心・安全を担保するためにPCR検査付きの旅行プランが登場したり、レストランではソーシャルディスタンスを保つために使わない座席にぬいぐるみを配置するなど、楽しさというゆとりを持った感染対策を実施する事例も増えてきた。今後とも、消費者の安心感が醸成されるような企業の取り組みに期待したい。
 
一方で、懸念されるのは低所得層だ。現在、飲食業や観光業など、新型コロナによって経営に打撃を受けた業種における立場の弱い労働者から、雇い止めなどの影響があらわれている*2。GoToキャンペーンを利用したくてもできない、利用するどころではないという生活者も徐々に増えているだろう。
 
これらの層に対しては、消費喚起策とは別途、生活支援策が必要だ。「特別定額給付金」は迅速さの観点から、国民1人当たり一律10万円の給付となったが、今後は生活困窮世帯に対して、就業状況や家族構成などの各自の事情に合わせた手厚い支援策が継続的に必要だろう。
 
*1 調査時期は2020年9月25~28日、調対象は全国の20~69歳男女、インターネット調査、株式会社マクロミルのモニターを利用、有効回答2,066。
*2 久我尚子「家計消費で見る足元の消費」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2020/8/24)
 
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

(2020年12月08日「基礎研マンスリー」)

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レポート紹介

【GoToトラベル・イートの利用意向-第2回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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