2020年12月08日

オフィス市場は調整局面入り。REIT市場は価格の戻りが鈍い。-不動産クォータリー・レビュー2020年第3四半期

基礎研REPORT(冊子版)12月号[vol.285]

金融研究部 主任研究員   吉田 資

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未だ終息の見えないコロナ禍による経済活動停滞の影響は、幅広い分野に及んでおり、不動産市場でも顕在化している。

これまで上昇基調にあった地価は、都心商業地を中心に下落に転じた。東京Aクラスビルの空室率は依然として低水準を維持しているが、成約賃料は下落した。また、2020第3四半期の東証REIT指数( 配当除き)は6月末比3.6%上昇したものの、価格の戻りが鈍い。

1―経済動向と住宅市場

2020年7-9月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比5.0%(前期比年率21.4%)と4四半期ぶりのプラス成長になった。しかし、過去最大のマイナス成長となった4-6月期の落ち込みの6割弱を取り戻したにすぎず、経済活動の正常化に向けた足取りは重い。ニッセイ基礎研究所は、11月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2020年度▲5.2%、2021年度3.4%、2022年度1.7%を予想する[図表1]。経済活動が元の水準に戻るまでには時間を要する見通しである。
[図表1]実質GDP成長率の推移(年度)
2020年7-9月期の新設住宅着工戸数は前年同期比▲10.1%減少、首都圏のマンション新規発売戸数は+1.9%増加、中古マンションの成約件数は+1.4%増加した[図表2]。
[図表2]首都圏のマンション新規発売戸数(暦年比較)
2020年8月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)は前年同月比+2.3%となり11カ月連続で上昇した。景気悪化の影響は、今のところ住宅価格には及んでいない。

2―地価動向

これまで上昇基調にあった地価は、都心商業地を中心に下落に転じた。国土交通省の「地価LOOKレポート(2020年第2四半期)」によると、全国100地区のうち上昇が「1」(前回73)、横ばいが「61」(前回23)、下落が「38」(前回4)となり、下落地点が大幅に増加した[図表3]。
[図表3]全国の地価上昇・下落地区の推移

3―不動産サブセクターの動向

1│オフィス
三幸エステートによれば、2020年第3四半期の東京Aクラスビルの空室率は0.6%となり、8期連続で1%を下回った。Aクラスビルでは、解約時期が限定される定期借家契約の割合が高いことから、在宅勤務の導入やコスト削減によるオフィスの解約が直ちには現れにくく、空室率は低水準で推移している。一方、2020年第3四半期の成約賃料(月坪)は38,048円(前期比▲2.1%)となり、下落した[図表4]。
[図表4]東京都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
2│賃貸マンション
これまで上昇基調にあった東京23区のマンション賃料は転換期を迎えている。2020年第3 四半期の東京23区のマンション賃料は前期比でシングルタイプが▲1.33%、コンパクトタイプが+0.15%、ファミリータイプが▲0.37%となった[図表5]。緊急事態宣言やリモート授業・リモートワークの普及を受け、学生や転勤者等の移動(引越)が延期され、賃貸マンションの需要がやや弱含んだ。
[図表5]東京23区のマンション賃料
3│商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターは、テナントの業態により、好不調の差がみられる。商業動態統計などによると、2020年7-9月の小売販売額( 既存店、前年同期比)は百貨店が▲23.9%、コンビニエンスストアが▲5.4%、スーパーが+0.7%となった[図表6]。百貨店は外出自粛や悪天候の影響を受けて、大幅なマイナスとなった。コンビニエンスストアもオフィス街を中心に都心部の客数が減少している。一方、スーパーは、昨年9月の消費増税の駆け込み需要の反動で9月の販売額が前年比マイナスになったものの、住宅地を中心に日用品需要や巣ごもり消費が堅調であった。
[図表6]百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの月次販売額(既存・前年比)
コロナ禍により甚大なダメージを受けたホテルセクターは、依然として厳しい状況にあるものの、回復に向かい始めている。2020年7-9月の延べ宿泊者数は前年同期比▲50.9%減少し、このうち外国人が▲97.3%、日本人が▲41.7%となった[図表7]。一方、STR社によると、全国の9月のホテル稼働率は39.5%と4月のボトム14.1%から回復しており、7月にスタートした政府の観光需要喚起策「Go Toトラベル」の効果が地方を中心に現れている。
[図表7]延べ宿泊者数の推移(月次、前年比)
CBREによると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2020年9月末)は0.5%となり、過去最低水準に低下した。また、近畿圏の空室率は4.0%となり、前期から▲0.8%低下した[図表8]。ネット通販関連貨物の増加に伴い、EC関連企業は物流拠点の拡大に一段と積極的になっており、需要を牽引している。
[図表8]大型マルチテナント型物流施設の空室率

4―J-REIT(不動産投信)市場・不動産投資市場

2020年第3四半期の東証REIT指数(配当除き)は6月末比+3.6%上昇した[図表9]。2期連続での上昇となったものの1-3月期の大幅下落(▲25.6%)に対して価格の戻りは鈍く、依然として昨年末対比で▲19.5%下落している。
[図表9]東証REIT指数の推移(2019年12月末=100)
J-REITによる第3四半期の物件取得額(引渡しベース)は2,663億円(前年同期比▲8%)となった。大きく落ち込んだ第2四半期(同▲48%)から回復し、前年並みの水準を確保した。

日経不動産マーケット情報によると、2020年第3四半期の取引額は6,313億円(前年同期比▲9%)となり、第2四半期の3,967億円(前年同期比▲59%)と比べて持ち直しつつある。こうしたなか、日本の不動産市場は、新型コロナウイルス感染拡大による影響が相対的に軽微との評価から、海外機関投資家の関心が高まっている。日本経済新聞社によれば、カナダの不動産ファンドであるベルトール・グリーンオークは、日本の不動産に対し、今後2~3年で最大1兆円の投資を行う計画であり、香港の投資ファンドPAGも今度4年程度で最大8,000億円の投資を行うとのことである。今後も不確実性が高い金融市場環境が想定されるなか、海外資金を中心に投資家の不動産取得意欲は衰えていない模様だ。
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

(2020年12月08日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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