- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 社会保障制度 >
- 医療保険制度 >
- 骨太方針に盛り込まれた「社会的処方」の是非を問う-薬の代わりに社会資源を紹介する手法の制度化を巡って
骨太方針に盛り込まれた「社会的処方」の是非を問う-薬の代わりに社会資源を紹介する手法の制度化を巡って
保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
政府内では現在、「社会的処方」(Social prescribing)の制度化に向けた議論が進んでいる。これはストレスや孤立などを感じている人に対し、医師が薬の代わりに患者団体などコミュニティの資源などを紹介することで、その人に生き甲斐や社会参加の機会などを持ってもらう方法であり、英国などで実施されている。
こうした社会的処方について、今年7月の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)でモデル事業の実施方針が唐突に盛り込まれたのを受け、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)では介護報酬への反映も視野に入れた議論が展開されている。
しかし、筆者自身としては、(1)英国と医療制度が大きく違う、(2)ソーシャルワークの違いが不鮮明――という2つの点で、診療報酬への反映など本格的な制度化には慎重な姿勢が求められると考えている。
以下、社会的処方の発祥地である英国の事例を見つつ、社会的処方の概念を整理し、国内での実践例や制度化に向けた議論も概観する。その上で、2つの疑問点を中心に、制度化に向けた論点、その是非を問う。
■目次
1――はじめに~社会的処方の功罪を考える~
2――社会的処方とは何か
1|英国における社会的処方の淵源と定義
2|健康の社会的決定要因との関係
3――社会的処方で期待されている効果
4――社会的処方に関する国内の事例
1|川崎市を拠点とした社会的処方研究所など現場の動向
2|プライマリ・ケア連合学会などの動き
5――骨太方針に至る自民党の議論、審議会の動向
1|骨太方針の記述
2|自民党議員連盟の提案
3|介護給付費分科会の議論
4|制度化に向けた展望
6――社会的処方を巡る疑問(1)~英国の医療制度との違い~
1|診療報酬制度の違い
2|代理人になり得るGPの存在
3|日英の制度的な違いを踏まえた整理
7――社会的処方を巡る疑問(2)~ソーシャルワークとの違いが不鮮明~
1|ソーシャルワークとは何か
2|ソーシャルワークとの相違点を踏まえた整理
8――社会的処方の制度化に伴う「副作用」
1|プロフェッショナリズムを失わせる危険性
2|医療化を引き起こす危険性
9――社会的処方のプラス面
10――おわりに
(2020年11月30日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
三原 岳のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/01/17 | 分権から四半世紀、自治体は医療・介護の改正に対応できるか-財政難、人材不足で漂う疲弊感、人口減に伴う機能低下にも懸念 | 三原 岳 | 研究員の眼 |
2024/12/24 | 「地域ケア会議」はどこまで機能しているのか-多職種連携の促進に効果も、運用のマンネリ化などに懸念 | 三原 岳 | 保険・年金フォーカス |
2024/12/05 | 「地域の実情」に応じた医療・介護体制はどこまで可能か(6)-重層事業が最も難しい?内在する制度の「矛盾」克服がカギ | 三原 岳 | 研究員の眼 |
2024/11/11 | 医師の偏在是正はどこまで可能か-政府内で高まる対策強化論議の可能性と選択肢 | 三原 岳 | 基礎研レポート |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年01月17日
トランプ2.0とEU-促されるのはEUの分裂か結束か?- -
2025年01月17日
分権から四半世紀、自治体は医療・介護の改正に対応できるか-財政難、人材不足で漂う疲弊感、人口減に伴う機能低下にも懸念 -
2025年01月17日
可処分所得を下押しする家計負担の増加~インフレ下で求められるブラケットクリープへの対応~ -
2025年01月16日
iDeCo(個人型確定拠出年金)を有効活用する方法と注意点-拠出限度額引き上げで税制優遇の恩恵も大きく -
2025年01月16日
ロシアの物価状況(24年12月)-前年比伸び率は9%台半ばまで上昇
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【骨太方針に盛り込まれた「社会的処方」の是非を問う-薬の代わりに社会資源を紹介する手法の制度化を巡って】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
骨太方針に盛り込まれた「社会的処方」の是非を問う-薬の代わりに社会資源を紹介する手法の制度化を巡ってのレポート Topへ