2020年11月17日

インドの生命保険会社の状況-2019年度の決算数値を踏まえての成長性・効率性・収益性・健全性等の動向-

保険研究部 研究理事   中村 亮一

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(2)予定死亡率
予定死亡率については、各社とも、2018年度までは、従前の標準生命表である「IALM(2006-08)Ult.」をベースにしていたが、2019年度は新しい標準生命表である「IALM(2012-14)」3をベースにしている。ただし、この生命表をそのまま使用しているわけではなく、商品毎、性別、年齢別、対象市場毎に異なる調整を行った死亡率を採用している。さらに、その水準や方式についても、各社毎に異なっている。
責任準備金計算基礎(予定死亡率)2019年度末―個人生命保険(有配当)契約の場合―/(参考)責任準備金計算基礎(予定死亡率)2018年度末―個人生命保険(有配当)契約の場合―
また、LICにおける商品毎の予定死亡率は、次ページの図表の通りである。全ての保障系商品について、最新の標準生命表ベースに変更している。なお、生存保障要素の高い商品等については、低めの割増率や年齢のセットバックによる割引を行い、死亡保障性の高い商品では、相対的に高い割増率を採用している。

また、個人年金保険契約の年金受給後の予定死亡率については、2015年度末にセットバック年齢を3歳から4歳に引き上げ、2016年度末にはさらに5歳に引き上げ、2017年度末には6歳に引き上げるという変更を行っていたが、2018年度以降は変更していない。
責任準備金計算基礎(予定死亡率)―LICの場合(個人保険商品毎)―
以上のように、予定死亡率については、各社の経験データ等に基づいて、対象とする市場における経験発生率の状況等も勘案する中で、各社が合理的・妥当と考える水準に設定されてきている。
 
3 生命保険会社24社の調査機関(2012年4月1日~2014年3月31日)のデータに基づいて作成された。標準表は、有診査の男性被保険者の2年以上の段階的終局死亡率で構成されている。なお、2019年4月1日より適用されている。
2|ソルベンシー比率(Solvency Ratio
6社のソルベンシー比率の推移は、以下の図表の通りである。各社毎に絶対水準は大きく異なっているが、各社ともIRDAIが最低基準としている1.5(150%)の水準を上回っている。
大手各社のソルベンシー比率(Solvency Ratio)
なお、LICのソルベンシー比率は安定的に推移しているが、民間の5社は規模の拡大に合わせて、基本的には絶対水準は低下傾向にある。ただし、引き続き高水準を維持している。
3|剰余の分配(契約者配当)の状況
保険契約者に対する配当としては、保険金増額式配当(Reversionary Bonus)と消滅時配当(Terminal Bonus)がある。このうち、例えば、2019年度決算に基づいて、2020年度に割り当てられる、2019年度の保険金増額式配当率については、次ページの図表の通りとなっている。

2016年度から2017年度にかけては、ICICI Prudential、HFDC Standard及びBajaj Allianzが配当率の一部引き下げを行ったが、他社は2016年度と同水準となっていた。2017年度から2018年度にかけては、HFDC Standard、SBI Life及びBajaj Allianzが配当率の一部を変更したが、2019年度は、LIC、SBI Life及びBajaj Allianzが変更を行った。

なお、LICの養老保険や終身保険の場合、2018年度までの8年間の配当率は同水準であり、安定的な配当が行われてきていたが、2019年度は終身保険の配当率を引き下げている。
契約者配当率―個人生命保険(有配当)契約の場合(保険金増額式配当率)―
(参考)EVEmbedded Value)の公表
EVについては、大手の生命保険会社が公表している。算出方式は、ICICI PrudentialとSBI LifeがIEV(Indian Embedded Value)という方式で、HDFC Standard等がMCEV(市場整合的EV)となっている。 ここで、IEV(Indian Embedded Value)というのは、インド・アクチュアリー会が作成しているアクチュアリー実務基準に基づいており、基本的には資産と負債の市場整合的な評価を行うMCEVと調和している方式である。

EVや新契約マージンは、会社の成長性や収益性を示す1つの指標となっている。

これによれば、各社の2019年度の新契約マージンは18%~26%の範囲にあり、2018年度に比べても水準を上げている。このように、引き続き新契約における高い収益性を確保している。

EVについては、2015年度に増加率が低下していたが、2016年度から2019年度においては各社とも、Bajaj Allianzを除けば、2桁近い進展と大きく増加してきており、会社の価値を着実に高めてきている。
インド生命保険会社のEV

6―まとめ

6―まとめ

ここまで、2019年度決算に関する各社のPublic Disclosures資料等に基づいて、インドの生命保険業界の主要各社の成長性・効率性・収益性・健全性等の状況について報告してきた。

インドの生命保険市場は、大きな潜在力を有し、今後さらなる成長が期待できる市場であるが、市場の変化に対応して、これまで、各種の保険監督規制の改革等が行われてきている。こうした環境下で、生命保険会社は、商品開発とチャネルの改革、リスク管理体制の充実等の課題に取り組み、経営効率化を進めてきている。

成長性が高く、健全性を維持しつつ、一定の収益性が期待できる市場だからこそ、日本の保険会社も含めて、欧米の主要保険グループが、この市場に魅力を感じて注力してきている。

なお、今回は2019年度決算数値の報告であることから、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響についての情報開示等は、相対的に限定されたものとなっている。

インドにおいては、現在新型コロナウイルスの感染が拡大しており、その影響が懸念されるところとなっている。その動向は極めて注目されることから、こうした点も含めたインドにおける生命保険各社の状況については引き続き注視していくこととしたい。
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保険研究部   研究理事

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

(2020年11月17日「保険・年金フォーカス」)

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