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特別定額給付金の使い道(2)-貯蓄する理由は経済不安か、外出自粛で使い道がないためか

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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- コロナ禍で銀行口座の預金は増加傾向にある。ニッセイ基礎研究所の調査でも、特別定額給付金の使い道の2位は「貯蓄」(26.1%)である。この背景には、経済不安で貯蓄にとどめていることや、外出自粛により使い道がないために貯蓄にとどまっていることなどがあげられる。あらためて消費者の意識に注目して給付金の使い道を捉える。
- 給付金の使い道で貯蓄選択者は、全体と比べて収入減少や雇用の不安定化、日本経済や勤務先の環境悪化への不安が強く、コロナ禍における経済不安が強いために意識的に貯蓄にとどめている。また、貯蓄選択者は今後、教育費のかかる子どものいる世帯や、小売業など在宅勤務が難しく感染により仕事に直接的な影響が及ぶ就業者で多い。
- 一方、外食や旅行など必需性の低い消費項目に費やす消費者では経済不安のない層が多い。ただし、感染状況の収束が見えない中では、一旦、旅行などを保留しているために、見た目上、貯蓄にとどまってる部分もあるだろう。なお、給付金を使っているとはいえ、生活費の補填にあてる消費者は、当然ながら経済不安が強い傾向がある。
- 経済面をはじめとした今後の見通しについても、貯蓄選択者は全体と比べて悲観的な見方が強く、外食などの必需性の低い消費項目に費やす消費者では比較的楽観的な傾向がある。つまり、貯蓄選択者では現在の経済不安だけでなく、今後の経済不安も強いために、貯蓄にとどめている様子がうかがえる。
- 「貯蓄が増えているために、お金に困っている人は少ない」との見方もあるようだが、少なくとも給付金が貯蓄にとどまる理由は主に経済不安の強さによるものである。特に、比較的若い現役世代については、貯蓄が増えていても決して経済状況に余裕があるわけではない。データとして見える事実と背景について丁寧に読み解く必要がある。
■目次
1――はじめに~コロナ禍で増える預金、給付金の使い道でも2位「貯蓄」(26.1%)
2――経済不安や今後の見通し別に見た給付金の使い道~経済不安で貯蓄、不安がないと消費
1|経済不安別
~雇用悪化・収入減少等の不安のある層は貯蓄、不安のない層は旅行や外食などの消費
2|今後の見通し別
~経済・雇用環境回復に悲観的な層は貯蓄、比較的楽観的な層は消費
3――コロナ禍における貯蓄増は若い世代ほど経済不安の強さも、背景を丁寧に読み解く必要あり
(2020年11月17日「基礎研レター」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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