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中国「相互宝」の加入者の特性、加入理由、加入効果―中国「ネット互助プラン」が保険事業に与える影響に関する調査

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき
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4――【相互宝の加入理由】50代を中心とする1960年代生まれは病気への備え、そのこどもの世代である20代を中心とする1990年代生まれは加入・解約手続きの利便性を重視。
まず、性別にみると、女性は「加入・解約手続きとも簡単にできるから」(全体より+3.7ポイント)、「保険会社の保険は給付がされるか不安だから」(+3.7ポイント)、「他の会員と供に重大疾病に罹った患者を助け合えると思ったから」(+3.6ポイント)が全体を上回った(図表5)。
出生年齢別にみると、50代を中心とする1960年代生まれは、「病気になったときに備えて」が全体より3.9ポイント上回り、選択割合が高かった。その一方で「他の会員と供に重大疾病に罹った患者を助け合えると思ったから」は全体より14.4ポイント下回り、選択割合が低かった。40代を中心とする1970年代生まれは、その逆で「他の会員と供に重大疾病に罹った患者を助け合えると思ったから」が全体を4.7ポイント上回り、選択割合が高かった。30代を中心とする1980年代生まれは、「治療費が高額になったら公的医療保険で給付されないから」(+5.5ポイント)、「アリババのサービスを信用し、評価しているから」(+4.6ポイント)、「仕組みが分かりやすく、透明性が高いと思ったから」(+4.2ポイント)が全体を上回っており、加入理由として、既存の制度への不安と同時に相互宝やアリババへの信頼性の高さを示した。20代を中心とする1990年代生まれは、「病気に備えて」は全体を6.1ポイント下回る一方、「加入・解約手続きとも簡単にできるから」などの利便性が全体を9.8ポイントと大きく上回った。また、「保険会社の重大疾病保険の保険料は高いから」が全体より6.7ポイント、「公的医療保険に加入していても自己負担が高額だから」が全体より6.5ポイント上回っており、既存の保障制度への不安と手続きなどの利便性の高さが加入理由として選択割合が高った。また、10代を中心とした2000年代生まれは、「自分が払う費用が少なくてすむと思ったから」が全体を7.4ポイント上回り、コスト面が重視されている点がうかがえた。
5――【相互宝の加入効果】50代や40代は罹患した場合に給付を確実に得られるという安心感、30代は帰属感、10代は自身が誰かの役にたっているといった社会性の効果がより強い。
6――おわりに
調査結果から、相互宝は、地方都市の30代以下を中心に加入が進んでおり、本人のみならず、その家族の加入も進んでいることが分かった。特徴としては、10代、20代を中心に、自身の加入に加えて、父母の加入も多かった。加入者の居住地域は、およそ6割が地方の中核都市である三線都市、更に規模の小さい四線都市に居住している。ただし、相互宝のみに加入している場合に限り、四線都市に加えて、北京、上海といった大規模の一線都市も加入が拡大していた。これは、アリババ・グループのECが大規模都市を中心に普及している点が影響していると考えられる。
月額負担については、重大疾病プランは10-19元が全体よりも選択割合が高く、慢性病患者向け癌プランは30-39元が全体よりも選択割合が高かった。よりニッチなニーズに適合し、加入者が限定されている保障プランは月額負担が相対的に高くなっている点が推察された。
加入理由は50代を中心とする1960年代生まれは病気への備えがより重視される一方、そのこどもの世代である20代を中心とする1990年代生まれは加入・解約手続きの利便性などを重視するなど出生年代別の特徴を捉えることができた。
また、加入効果については、癌などの罹患率が相対的に高くなる50代や40代は給付を得られるという安心感、30代は何かしらの民間医療保障に加入しているという帰属感、10代は自身が誰かの役にたっているといった社会性の効果がより強くなっていた。
このように、相互宝は、これまで民間の医療保障にアクセスが難しかった地方都市の若年層を包摂しながら、民間保障の裾野を広げつつある。
(2020年11月12日「基礎研レポート」)
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03-3512-1784
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
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