- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 年金 >
- 企業年金 >
- 賃金水準と退職給付制度の変化
2008年度から2018年度の減少傾向には企業規模による違いが見られる。大企業において、「企業年金がある」企業の割合は5.0%の減少に留まっているのに対して、小企業においては16.1%減少して14.1%にまで低下している。「退職給付制度がない」企業の割合についても、大企業は4.8%→8.9%(4.1%増加)、小企業18.3%→25.4%(7.1%増加)と差が大きい。4分の1以上の小企業において退職給付制度がない状況になっている。
「退職金制度のみ」の企業の割合は、大企業は、18.4%→19.3%(0.9%増)、中企業(300~999 人)28.3%→34.1%(5.8%増)、中企業(100~299 人)36.2%→47.8%(11.6%増)、小企業51.5%→60.5%(9.0%増)となっている。100~299 人の中企業における増加率が最も高くなっている。これは先述した税制適格退職年金に加入していた中企業が、「退職金制度のみ」にシフトした結果と推察される。
賃上げの環境にあるにもかかわらず、退職給付の給付額は上昇していない理由は、この間、ポイント制など、給与上昇と退職給付額とが連動しにくい制度が導入されてきたことが影響している。企業がフローとしての賃上げには応じても、将来の負担、債務として転換される退職給付については抑制的に対応している。つまり、経営者としては将来リスクについては回避的ということが明確に表れている。
退職給付制度として望ましいことは何であろうか。経営者は資金保全をより積極的に行うことが望ましい。簡易版企業年金制度の導入によって、企業側の確定拠出年金導入のハードルは低くなっている。ただし、多くの中小企業にとって、未だに「キャッシュ・インセンティブ(確定拠出年金導入による企業の拠出負担)>税優遇」となっていることを考えれば移行を促進することは容易でない。とすると、税優遇措置、加入要件の拡大だけでは不十分で、現状を鑑みた大胆な優遇措置が必要かもしれない。
このレポートの関連カテゴリ
静岡県立大学 経営情報学部
上野 雄史
研究・専門分野
(2020年08月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月26日
米GDP(24年1-3月期)-前期比年率+1.6%と前期から低下、市場予想の+2.5%も大幅に下回る -
2024年04月26日
滞留するふるさと納税 -
2024年04月26日
EUのDMA関連調査開始決定-GAFAそれぞれの問題を指摘 -
2024年04月25日
欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2023年決算数値等に基づく現状分析- -
2024年04月24日
中国経済の現状と注目点-24年1~3月期は好調な出だしとなるも、勢いが持続するかは疑問
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【賃金水準と退職給付制度の変化】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
賃金水準と退職給付制度の変化のレポート Topへ