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「仙台オフィス市場」の現況と見通し(2020年)~新型コロナウィルスの感染拡大を踏まえた市場見通し

金融研究部 主任研究員 吉田 資
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1. はじめに
2. 仙台オフィス市場の現況
三幸エステートによると、仙台市の空室率(2020年7月時点)は4.8%となり、5%を切る低水準で推移している。仙台では、2013年以降、新規供給が限定的であった一方、オフィス需要は、館内(内部)増床や東北エリアの拠点集約などを背景に底堅く、需給環境が逼迫している。空室率を規模1別にみると、2016年以降、規模が大きいビルと中型未満のビルの間で、格差が生じている。2020年7月時点の空室率は、移転集約等を受け皿となる「大規模ビル」が4.0%、「大型ビル」が4.1%であるのに対し、「中型ビル」が6.6%、「小型ビル」が8.1%とやや高水準であった。(図表1)。募集賃料は、需給の逼迫を受けて、上昇傾向で推移しており、2020年7月時点で10,900円/月・坪(前年比+4.3%)となった(図表-2)。
1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
3. 新型コロナウィルスの感染拡大がオフィス需要に及ぼす影響
宮城県の就業者数は、リーマンショックや東日本大震災の影響等を受けて長期的に減少傾向で推移していたが、2012年以降回復に転じており、2019年の就業者は122.5万人(対前年+1.3%)に達した(図表-8)。こうした就業者数の増加がオフィス需要を下支えしてきた。
しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、雇用環境は急速に悪化している。仙台市経済局・仙台商工会議所「仙台市地域経済動向調査報告」によれば、「増員する」と答えた事業所の割合から「減員する」と答えた事業所の割合「従業員数DI」(2020年第1四半期)は、「正規従業員数DI」で+16.8(前期比▲9.3)、「非正規従業員数DI」で▲0.8(前期比▲14.1)に悪化した。特に、「非正規従業員数DI」は2011年第1四半期以来、10年ぶりにマイナスとなった。(図表-9)。
2016年より始まった「働き方改革」に多くの企業が積極的に取り組んでいる。デロイトトーマツ「働き方改革の実態調査」によれば、「働き方改革を推進中」もしくは「実施した」を回答した企業の割合は、約9割に達した。「働き方改革」の一環でオフィス環境の整備に取り組む企業は多い。従業員満足度の向上、人材採用時の優位性確保などを目的に、好立地な高機能オフィスへの移転を検討する企業は増えていた。
財務省財務総合政策研究所「法人企業景気予測調査(2020 年第2 四半期時点)」によれば、宮城県の「企業の景況判断BSI」は、▲55.4となり、リーマンショック時の2009年第1四半期(▲49.2)を下回った。宮城県の景況感は急速に悪化している(図表-12)。
足もとでは、新型コロナの感染拡大を受けて企業の事業環境が悪化しており、先行きの不透明感も強まっている。今後、企業業績の悪化や設備投資の縮小とともに、オフィス環境の改善を意図して、費用をかけてまで拠点を移転しようとする動きはひとまず鈍化する可能性が高い。三幸エステートによれば、新型コロナウィルスによる業績への影響を懸念し、オフィスの新規開設や拡張移転計画を一旦見直す企業が増えている模様である。
(2020年07月15日「不動産投資レポート」)
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- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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