2020年07月07日

新型コロナウイルス感染症と生命保険会社の入院給付金-ホテル等臨時施設や自宅で療養する場合も入院給付金が支払われる?

基礎研REPORT(冊子版)7月号[vol.280]

保険研究部 主任研究員   小林 直人

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1―はじめに

新型コロナウイルス感染症で入院した場合等の、医療保険における入院給付金の取り扱いについて紹介したい。

2―疾病による入院に関わる 給付金の支払事由

(疾病)入院給付金の支払事由については、ほとんどの約款で、以下のような規定を設けている。

(1) 責任開始時以後の疾病を直接の原因とする入院であること。
(2) その入院が治療を目的とした病院または診療所への入院であること。

「疾病」の定義は、保険法上に規定はなく、約款上にも規定がないのが通例である。

「入院」とは、「医師または歯科医師による治療が必要であり、かつ、自宅等での治療が困難なため、病院または診療所に入り、常に医師または歯科医師の管理下において治療に専念すること」といった規定が設けられている。

「病院または診療所」については、「医療法に定める日本国内にある病院または患者が入院するための施設を有する診療所」であるなど規定されている。

3―病院等医療機関に入院した場合

新型コロナウイルス感染症は、約款規定上の「疾病」に該当すると考えられる。

新型コロナウイルス感染症が指定感染症に指定されたことで、新型コロナウイルス感染症に罹患した疑いのある場合は、病院等の医療機関に入院することになるであろうが、多くの生命保険会社が、検査結果の陰性・陽性にかかわらず、医師の指示により入院した場合は、(疾病)入院給付金の支払い対象となる旨を公表している。

4―臨時施設・自宅で療養した場合

「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(2020年4月7日改正)に従い、重症者等に対する医療提供に重点を移す観点から、「軽症者等」は、病院等ではなく、宿泊施設や自宅等で安静・療養を行う場合も生じている。

この場合、( 疾病)入院給付金支払に関するポイントは、医療法上の「病院または診療所」への入院が支払要件とされていることであろう。

「医療法」、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」、「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令」、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」には、管見の限り、ホテルのような臨時施設について、医療法上の「病院または診療所」として法的根拠を与える規定は見当たらず、各生命保険会社の約款規定の字義からは、(疾病)入院給付金の支払要件を満たさないことになりそうである。

しかし、宿泊施設や自宅等で療養する場合も、医師または医療機関の証明書等を提出することにより、( 疾病)入院給付金の支払い対象とする旨を多くの生命保険会社が公表している。

これは、新型コロナウイルス感染症に罹患した場合、医療施設の受入可能病床数不足という事情がなければ、本来は「病院または診療所」に「入院」したであろうが、重症者等への医療提供に重点を移す必要性から、臨時施設や自宅等で安静・療養することとなったこと、臨時施設や自宅等で安静・療養する場合も、感染拡大防止のため、宿泊施設や自宅から外に出ず、一定期間療養する必要があるとされていること、更に、療養中は看護師や保健所等が定期的に健康状況を確認し、症状変化があった場合、医療機関と連携し、必要な医療を受け、必要な場合には、入院することとされている*ことなどから、各生命保険会社が、(疾病)入院給付金の約款規定上の要件を満たすとみなすという判断をしたと考えられる。
 
* 厚生労働省(新型コロナウイルス感染症対策推進本 部)「『新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊 療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に 向けた準備について』に関するQ&Aについて」2020年 4月6日。

5―おわりに

新型コロナウイルス感染症で入院、療養した場合等に、加入していた生命保険の(疾病)入院給付金が役に立つことが望まれる。

今回の取り扱いは、保険会社として支払要件を広げることになるが、未曽有の緊急事態下で、国民の生命保険に対する信頼に応えるべく実施された取り扱いであると考える。
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保険研究部   主任研究員

小林 直人 (こばやし なおと)

研究・専門分野
保険商品・法制

(2020年07月07日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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