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確定拠出年金法改正の概要-加入や受給に係る要件の緩和と、今後の課題-
金融研究部 企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 梅内 俊樹
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1――年金制度改正の趣旨
2――DC制度改正の概要
現行では、企業型DCに加入できるのは、厚生年金被保険者のうち65歳未満の方とされ、60歳以上の場合には60歳までと同じ事業所に継続して使用される方に限られている。これに対して改正法では、65歳未満とする年齢要件や60歳以上の同一事業所要件が削除され、厚生年金被保険者(70歳未満)であれば加入が認められるようになる(図表1)。この結果、転職などにより60歳までとは異なる事業所で働く場合や65歳以降に働く場合であっても、厚生年金に加入していれば、企業型DCの規約の定めにより、最長70歳未満まで企業型DCに加入できるようになる。
個人型DC(以下、iDeCo)の加入可能範囲は、現行では国民年金の第1~3号被保険者のうち60歳未満の方に限られている。このため、民間会社員や公務員などの厚生年金被保険者からなる第2号国民年金被保険者のうち、60歳以上の方はiDeCoに加入することはできない。これに対して改正法では、60歳未満とする年齢要件が撤廃され、国民年金被保険者(65歳未満)であればiDeCoに加入できるようになる(図表1)。
なお、DCの受給開始時期は企業型DCとiDeCoとで違いはなく、現行では60歳から70歳までの間で選択することとされているが、改正法では上限年齢が75歳に引上げられ、受給開始時期の選択肢が拡大されることになる(2022年4月施行)。
企業型DC加入者のうちiDeCoに加入できるのは、iDeCoへの加入を認める労使合意に基づく規約の定めがあり、企業型DCの事業主掛金の上限額が所定の金額以下に引き下げられている企業の従業員に限られている。このため、iDeCoが企業型DC加入者によって活用されるケースは多くない。こうした現状を改善する目的から、iDeCoへの加入を認める規約の定めや、事業主掛金の上限額の引下げがない企業型DCの加入者であっても、事業主掛金が拠出限度額に満たない加入者については、iDeCoに加入して掛金を拠出できるように改正される。
企業型DCのみに加入するケースでは、事業主掛金が月額5.5万円の拠出限度額に満たない加入者は、2万円以内、かつ、事業主掛金とiDeCoに拠出する掛金の合計が拠出限度額(月額5.5万円)を超えない範囲でiDeCoに掛金を拠出ができるようになる(図表2)。DBなど企業型DC以外にも加入するケースでは、事業主掛金が月額2.75万円の拠出限度額に満たない加入者は、1.2万円以内、かつ、事業主掛金とiDeCoに拠出する掛金の合計が拠出限度額(月額2.75万円)を超えない範囲でiDeCoに掛金を拠出ができるようになる。
ただし、企業型DCに加入者が掛金を拠出するマッチング拠出とiDeCoへの加入の併用はできない。このため、マッチング拠出が導入されている企業型DCの加入者は、マッチング拠出とiDeCo加入のいずれかを選択しなければならない。しかしながら、マッチング拠出を導入する企業型DCは全体の5割強に留まっており、他方で、企業型DCの事業主掛金は給与や役職などに基づき決められるのが一般的で、故に若い世代の事業主掛金が拠出限度額に満たないケースが多いことを踏まえると、若い世代を中心に、企業型DC加入者によるiDeCoの活用が増えることが期待される。
3――人生100年時代に向けた課題
しかし、今般の改正の恩恵を受ける対象は限られており、DC制度の使い勝手は働き方によって異なる。このため、DC制度が広く公平に利用されるようにする等の観点から、改善を図る必要もある。具体的には、ⅰ)企業型DCに比べ加入可能範囲が狭いiDeCoの加入要件の緩和、ⅱ)私的年金から受けられる支援が相対的に見劣りする「企業年金に加入していない民間会社員」や「民間会社員などの被扶養配偶者」の拠出限度額の引き上げ、ⅲ)「簡易型DC」や「中小事業主掛金納付制度」などの中小企業向け制度の実施可能範囲の拡大、が検討課題として挙げられる。人生100年時代の到来を目前に控え、高齢期の所得確保を支援する制度の充実が求められるなか、DC制度の改善に向けた更なる検討が望まれる。
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(2020年06月01日「基礎研レター」)
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