コラム
2020年04月08日

新型コロナで取り組みの加速が求められる行政手続きのオンライン化

総合政策研究部 研究員   清水 仁志

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新型コロナウイルスが猛威を振るっている中、デジタル技術を用いたオンライン化、リモート化を模索する動きが加速している。対面が原則であった診療においても、初診からオンライン診療を解禁するなど、今まででは考えられなかった変化も起き始めている。
 
一方で、行政サービスは未だ対面方式での古典的な手続きが多く、感染予防が十分とは言えない。

行政手続きにおけるデジタル化は、昨年5月に公布(12月施行)されたデジタル手続き法案を根拠に取り組みが進められている。例えば、昨年から引っ越しの際の行政関係手続の一部と、水道、ガスなどの公共サービスの手続きが一括で完結するワンストップサービスの実証実験が行われており、夏以降に順次サービスが提供される予定である。

しかしながら、足元で感染者が急増している中、全ての手続きをオンライン化へ移行するための時間的猶予はない。今あるオンライン手続きのシステムを最大限活用しつつ、短期的な予防策も同時に推し進めていかなければならない。

行政窓口での混雑を緩和し、感染リスクを抑えるためには、(1)既存のオンライン手続きの推奨、(2)手続き期限の延長、(3)窓口の予約制導入、の3点が考えられるだろう。

特に、既にオンラインで手続きが可能なものに関しては、広報をより積極的にするほか、該当手続きを利用した場合に料金を割引するなどのインセンティブを与えることにより、オンライン利用率を上げ来場者数を減らすことが出来る。既存手続きにおけるオンライン利用率の向上は、長期的にみても今後デジタル・ガバメント推進に役立つ。

一方で、オンラインに対応していない手続きのうち急を要さないものに関しては、特例的に手続き期間を大胆に延長することで、現時点での来場者を先送りにできる。どうしても窓口で手続きしなければならない場合においても、予約制の導入や混雑状況を周知することにより、来場者を分散させ出来るだけ他者との接触を軽減させることが必要だ。既に、一部の手続き(確定申告、運転免許証の更新など)や、一部自治体で上記の取り組みが進められているが、これを幅広い手続き、あるいは全ての自治体窓口に広げていかなければならない。

新型コロナウイルスの災禍を収束させた後には、デジタル化3原則にのっとり、再び長期的な視点に軸足を移し、行政手続きのオンライン化を進めていかなければならない(図表)。

今まで行政手続きのオンライン化が進まなかったのは、行政が利便性向上に資する魅力的なサービスを十分に提供できていないということもあるが、利用者の意識改革が進んでいないという面も大きい。窓口に行けば質の高いサービスが提供されるため、それに甘んじて自ら積極的にオンライン手続きを利用しようとしてこなかった。実際に、政府は個人のオンライン手続きをするために必要なマイナンバーカードの普及を積極的に行っているが、未だ交付率は15.5%(3月1日時点)と低調である。

しかし、新型コロナウイルスにより、利用者の意識は変わりつつある。今までオンラインサービスを提供しても使われなかった手続きにも注目が集まっている。オンライン化への移行を加速させつつ、今般のオンライン化の波に乗ることが出来れば、行政のオンライン化を一気に進めることが可能になるだろう。
(図表)デジタル行政推進の基本原則
行政手続きのオンライン化は、危機の対抗策にもなる。マイナンバーカードは、マイナポータルを通じて特定の個人に対してプッシュ型の通知ができる。マイナポータル上で手続きの申請を行うことで、不備なく迅速に給付を受けられるようになり、経済対策をより効果的に打つことを可能とする。

7日に閣議決定された緊急経済対策のうち、中小企業、個人への給付金制度についてもオンライン申請が可能である。出来るだけ簡易な使い方、ヘルプなどのサポートを充実させ、オンライン手続きを利用してもらうことで迅速な給付が可能となる。そして、オンライン手続きの利便性を体験してもらうことで、今回のみならず今後も使いたいと思ってもらうことが重要だ。
 
今回の新型コロナにより、官民ともにリモート化、オンライン化に注目が集まっている。単に危機で終わらせるのではなく、行政手続きのオンライン化の重要性を再認識し、今後の取り組みを加速させることが必要ではないだろうか。
 
 

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総合政策研究部   研究員

清水 仁志 (しみず ひとし)

研究・専門分野
日本経済

(2020年04月08日「研究員の眼」)

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