2020年04月07日

実効性が試されるプラットフォーマー規制

基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.277]

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任   矢嶋 康次

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1―GAFAに負けじと動く日本企業

GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)と称される米国の巨大IT企業の独走が続く中、日本のプラットフォーマーも負けじと動きを加速させている。例えば、Zホールディングス(ヤフーの親会社)とLINEが経営統合を発表した。キャッシュレスの分野では、ITや金融、通信等の参入増加や大規模キャンペーンで消耗戦が続く中、提携や統合による陣営作りが進んでいる。

デジタル時代は「規模が力」と言われる。買収、統合で大きなユーザー基盤を確保した上で、データ収集や顧客接点で優位に立ち、経済圏(エコシステム)を拡大することを目論んでいる。

2―規制とイノベーションのジレンマ

提携や統合などのニュースの一方、楽天による送料一部無料化に対する出店企業の反発など、プラットフォーマーと取引企業をめぐる問題もクローズアップされている。

公正取引委員会(公取)が実施したアンケート調査*では、取引企業の不満も見て取れる。同調査では、オンラインモールに関して、プラットフォーマーに「一方的に規約を変更されたことがある」との回答は、楽天で93%、アマゾンで73%に上っている。これだけ不満が多いと何らかのルール整備は必要だろうが、この領域でイノベーションが起きる可能性も高い。踏み込んだ規制を導入すると、イノベーションを阻害してしまうのではないかとの懸念もある。

政府は、プラットフォーマーによる取引の透明性・公平性の確保や、独占・寡占の弊害などを防ぐため、「独占禁止法の見直し(消費者に対する優越的地位の濫用への対応、データの価値評価も含めた企業結合審査)」、「個人情報保護法の改正(外国事業者への域外適用の範囲拡大など)」、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律案」の3本柱で対応を進めている。

この通常国会に提出された新法案では、大規模なオンラインモールやスマートフォンなど向けのアプリストアを運営する事業者を対象に、契約条件の開示や運営状況の政府への報告を義務付け、透明性や公正性を高めることを目的としている。経済産業省はプラットフォーマーからの報告をチェックし、不正行為があれば公取に対応を要請する。その一方で、企業活動の萎縮を避けるため、不正行為を禁じる規定の導入は見送った。企業活動への影響や、中小企業も多いプラットフォーマーの取引先の保護など、バランスに腐心したことがうかがえる。

3―実効性をどう担保するか

今年は5Gの商用化がスタートし、日本企業が強みを持つ「リアルのデータ」を活用したプラットフォーマーなどが出てくる可能性がある。今回の規制は「デジタル企業」に焦点が当たっているが、日本の「リアル企業」の巻き返しに水を差すようだと困る。そういう意味では、今後こうした規制の議論がどのように進んでいくのかは注視が必要だろう。

巨大IT企業が更に力をつけると、取引先に対する優越的地位の濫用のリスクは高まる可能性がある。規制を厳しくすると、巨大IT企業だけでなく日本企業も大きく影響を受ける可能性がある。規制を緩くすれば、プラットフォーマーがイノベーションを牽引するだろうが、寡占が進んで新規参入や競争が減ると、逆にイノベーションが停滞してしまう。寡占が進めば、価格の上昇など、消費者が不利益を被ることもあり得るが、あらゆるサービスがワンストップで使える「スーパーアプリ」が登場すれば、消費者は安くて(もしくは無料で)一層便利なサービスが手に入る可能性もある。バランスのとり方、両立は簡単ではない。

規制の議論はいつもこのような難しい問題を抱える。今回、法案が通ったからといって、デジタル市場のルール作りの議論が終わるわけではない。この領域は変化が激しい。できるだけイノベーションは阻害したくないが、巨大IT企業の行き過ぎた行いはしっかり牽制したい。バランスも意識しながら、いかにルールの実効性を担保していくのか、規制当局の手腕に注目が集まっている。
 
* デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査について(中間報告)
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/apr/190417.html
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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

(2020年04月07日「基礎研マンスリー」)

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