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新型肺炎拡大でも、日本株が大崩れしない3つの理由
金融研究部 上席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾
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■日経平均の戻りは鈍いが、大崩れしていない
もっとも、急落前の水準を回復した米国株や上海株と比べて日経平均の戻りは鈍い。その理由は1月30日付けレポート「新型肺炎だけじゃない 株価急落の本当の理由と今後の見通し」で述べたとおり、そもそも2万4000円は日本企業の業績と比べてやや高すぎる。加えて、日本国内で新型肺炎の感染拡大が懸念されているためだろう。
■理由(1):円高が進んでいない
しかし、実際は円高どころか1ドル=112円台の円安になった。これが日本株の支えになっているのだろう(円安は輸出企業の業績を改善するので株価にプラス要因)。
なぜ円高にならなかったのか。ひとつは日本や欧州、アジア新興国と比べて中国への依存度が低い米国(米ドル)にマネーが逃避しているからだ。日本は自動車や電気機器など多くの産業で中国への依存度が高い。欧州やアジア新興国も同様だ。米国の国内経済が堅調なことも背景にある。
主に海外の投資家が日本固有のリスクとみている面もある。クルーズ船の対応をめぐり海外では日本への批判も多いと聞く。筆者は防疫対応の適否を論じる立場にないが、日本が“安心安全な国”ではなくなったと評価され、“日本売り”が膨らんだ可能性は否定できない。
リスクオフになると海外株式などを売却すると同時に、円を返済するためのドル売り・円買い需要が強まる。その結果、急速に円高に動くというメカニズムだ。“有事の円買い”などと言われる。
ところが、最近は円よりもユーロの方が金利が低い。そのため円キャリー取引による投資残高が少なく、結果的に巻き戻しによる急速な円高が起きなかった。ちなみにユーロも対ドルで値下がりしたが、これは欧州経済の悪化を懸念したユーロ売り(ドル買い)が膨らんだためだ。
■理由(2):堅調な米国株と中国株
こうした背景から、新型肺炎で中国経済が一時的に急減速しても米国が受ける影響は限定的という見方が早期に広まったため、米国株は急落前の水準を早期に回復した。米長期金利が低水準で推移していることも、米国株の投資家を安心させているようだ。
一方、新型肺炎の影響が深刻な中国でも、当局による大規模な支援策を好感して上海総合指数が3,000ポイントを回復した。中国人民銀行は2月18日までに4兆元(約6兆円)ほどの流動性を銀行部門の供給したほか、20日には3ヶ月ぶりに政策金利を引き下げた。
■理由(3):根強い景気回復期待と日本企業の業績見通し
米中貿易摩擦が本格化した2018年3月以降の予想PERは平均12.8倍なので、13倍は決して高すぎることはない。こう考えると、国内でも新型肺炎が拡大している中でも日経平均が2万3,000円台を維持しているのは不思議ではない。
■今後は楽観できない
春節が終わって2週間あまり経ったことを考えると、日本国内で感染者が増える可能性があるだろう。もし東京など大都市圏で感染が広まれば、人やモノの動きが滞り、国内経済への影響は避けられない。
ほかにも2月末から3月に発表される経済指標には新型肺炎の影響が反映される。予想以上に悪い内容であった場合など、一時的に日経平均が2万2,000円くらいまで下落する可能性は意識しておく必要がある。
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(2020年02月21日「基礎研レター」)
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