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- 「東日本大震災による被害・生活環境・復興に関するアンケート」2019年調査結果概要-福島県双葉町民を対象とした第5回調査
1――基本情報
本調査は世帯主の方を対象としており、年齢、性別の分布については図1、図2の通りである。このように、国勢調査の年齢・性別分布に比べると、回答者の年齢分布は60代後半以上の方が多く、性別の分布は男性の回答者が多いという偏った分布である。加えて、震災という大変な状況が起こった後にご協力いただいた調査なので、回答者の傾向が一般的なアンケート調査とは大きく異なっている可能性も考えられる。そのため、本調査の結果が、必ずしも双葉町民全体の傾向を示すものではないことにご留意頂きたい。
1 本研究は、以下の研究助成によって実施されてきた。記して深謝する。
科研費(15J09313、26220502、LZ003)、日本経済研究センター研究奨励金
また、この調査は東京大学倫理委員会の承認(19-73)のもと実施された調査である。
2――健康状態について
3――社会関係資本の変化について
社会関係資本を図る指標として一般的に使われている指標はいくつかあるが、ここでは3つの項目に注目する。まず、「一般的な人への信頼感」については、2013年から2016年にかけて減少傾向だったが、2017年の調査からは「たいていは信用できる」という回答が増加し、震災から8年以上が経ち、全体的には日本全体の分布とほとんど変わらないレベルまで回復してきていることが分かる (図7参照)。一方で、震災前の双葉町の高いレベルまでの回復にはまだまた時間がかかる可能性がある。
また、「近所の人との助け合いの頻度」の指標についても緩やかに回復傾向が見られる。さらに、「近所の人への信頼感」についても、2016年以降は少しずつ回復傾向が見られるが、どちらも非常に緩やかな傾向である。社会関係資本の回復には非常に長い時間がかかり、今後もその変化を長期的に注視してゆくことが重要であると考えている。
4――避難先の住民の方との関係構築について
5――被災とこころの健康のつながりについて
6――これまでの5回の調査分析で示唆されたことのまとめ
(2) 中でも、仮設住宅に長期にお住まいの方のこころの健康状態が深刻な状態に置かれていた可能性があったが、仮設住宅にお住まいの方が少なくなった現在も、復興公営住宅の住民の方のこころの健康状態は深刻な可能性があり、継続的なサポートが重要と考えられる。
(3) 震災による健康状態や所得の変化について、悪化・減少幅が大きいほど幸福感も悪化している傾向があり、震災前の幸福感の状態に回復するには十分な補償が必要であると考えられる。
(4) 震災で双葉町民の社会関係資本が減少させられ、その回復にはとても長い時間がかかる可能性がある。
(5)震災前からのつながりを保つこと、震災後、趣味の会やボランティア活動などに参加することによってこころの健康状態を良好に保つ助けになる可能性がある。
(6) 避難先の地域の住民との関係構築は少しずつ進んでいる傾向が見られるが、その傾向は非常に緩やかで、現在も重要な課題であると考えられる。
(7) 被災による現在バイアス(先送り傾向)の増大が、こころの健康の悪化につながる可能性があるが、住民同士の交流や規則的な健康行動を促す政策がそうした健康悪化を防ぐ可能性がある。
これらの結果は国内外の学会で発表し、また国際的な学術誌で発表をしてきている。今後も分析を進め具体的な提案につなげていく所存である。
本調査結果は、調査にご協力頂いた約24%の双葉町の世帯の方のご回答のみを集計・分析した結果であり、この結果が双葉町民の方全員の傾向を表すものではございません。震災という大変な状況が起こったあとにご協力いただいた調査であるため、回答者の内訳は一般的なアンケート調査とは大きく異なっている可能性もございます。その為、健康状態の自己評価についての集計や、こころの健康状態についての集計においても、過大評価がされている可能性がございます。結果の解釈には十分な注意が必要であり、この調査結果のみによる断定的な判断は避ける必要がありますことにご留意いただれば幸いです。
(2020年02月07日「基礎研レポート」)
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03-3512-1882
- 【職歴】
2010年 株式会社 三井住友銀行
2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
2021年7月より現職
【加入団体等】
日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
博士(国際貢献、東京大学)
2022年 東北学院大学非常勤講師
2020年 茨城大学非常勤講師
岩﨑 敬子のレポート
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