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- 2019~2021年度経済見通し
2020年01月14日
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1―駆け込み需要は前回の4割程度
2019年7-9月期の実質GDPは、消費税率引上げ前の駆け込み需要を主因として民間消費が前期比0.5%の増加、高水準の企業収益を背景に設備投資が前期比1.8%の高い伸びとなったことなどから0.4%(前期比年率1.8%)と4四半期連続のプラス成長となった。
前回と今回の消費増税前の駆け込み需要の大きさを簡便的な方法で試算した。具体的には実質家計消費支出(耐久財、半耐久財、非耐久財)について、消費税率引き上げの半年前までのデータをもとにHPフィルターという統計的手法を用いてトレンドを抽出し、それを上回る部分を駆け込み需要とした。
このようにして求めた今回の駆け込み需要は、家計消費支出全体で0.9兆円(2019年4-6月期、7-9月期の合計)となった。形態別では耐久財が0.6兆円、半耐久財が0.2兆円、非耐久財が0.1兆円だった[図表1]。
前回と今回の消費増税前の駆け込み需要の大きさを簡便的な方法で試算した。具体的には実質家計消費支出(耐久財、半耐久財、非耐久財)について、消費税率引き上げの半年前までのデータをもとにHPフィルターという統計的手法を用いてトレンドを抽出し、それを上回る部分を駆け込み需要とした。
このようにして求めた今回の駆け込み需要は、家計消費支出全体で0.9兆円(2019年4-6月期、7-9月期の合計)となった。形態別では耐久財が0.6兆円、半耐久財が0.2兆円、非耐久財が0.1兆円だった[図表1]。
2―低迷が続く個人消費
駆け込み需要が小さかったため、消費増税後の反動減も前回増税後より小さくなるだろう。ただし、駆け込み需要とその反動は需要の発生時期がずれるだけで、一定期間を均してみれば影響はニュートラルだ。長期にわたって個人消費などの経済活動に影響を及ぼすのは物価上昇に伴う実質所得低下のほうである。前回の消費税率引き上げ後の個人消費は反動減が一巡した後も低迷が続いたが、これは消費税率引き上げによって急速に落ち込んだ実質所得の水準がなかなか元に戻らなかったことが主因と考えられる。
2014年度は3%の消費税率引き上げによって消費者物価上昇率が2%ポイント程度上昇し、実質所得が大きく押し下げられた。今回は税率の引き上げ幅が2%と前回よりも小さいことに加え、食料(酒類と外食を除く)及び新聞に軽減税率が導入されたこと、幼児教育無償化が実施されたことから、これらを合わせた消費者物価上昇率の押し上げ幅は0.4%ポイント程度にとどまる。このため、物価上昇による実質所得低下の影響は前回の消費増税時を大きく下回る。
ただし、消費を取り巻く環境は徐々に厳しさを増している。失業率は2%台前半の低水準で推移しているが、有効求人倍率は2019年4月の1.63倍をピークに10月には1.57倍まで低下し、新規求人数は前年比でマイナスに転じている。生産活動の低迷を受けて製造業の減少幅が特に大きくなっている。
賃金については、労働需給の引き締まりが反映されやすいパートタイム労働者の時給は大きく上昇しているが、一般労働者(正社員)の所定内給与は伸び悩みが続いている。
2019年の春闘賃上げ率は2.18%となり2018年の2.26%を▲0.08%ポイント下回った(厚生労働省調査)。企業の人手不足感は引き続き高いが、2020年の賃金交渉は消費増税後の景気悪化が判明する時期に行われる可能性が高いため、春闘賃上げ率は2.14%と2年連続で伸び率が低下すると予想する。7年連続のベースアップは実現するものの、消費者物価上昇率で割り引いた実質の伸びはほぼゼロ%にとどまるだろう。
業績との連動性が高いボーナス(賞与)は基本給以上に厳しいものとなっている。厚生労働省が公表した2019年の夏季賞与は、前年比▲1.4%(事業所規模5人以上)と4年ぶりの減少となった。足もとの企業収益は製造業の悪化が目立っているが、消費税率引き上げ後は国内需要の低迷によって非製造業の収益も下押しされるだろう。法人企業統計の経常利益は2012年度から2018年度まで7年連続で増益となっていたが、2019年度は減益に転じる可能性が高く、2019年の年末賞与に続き、2020年の賞与も減少する可能性が高い。
1人当たり賃金の伸び悩み、雇用者数の増加ペース鈍化から実質雇用者報酬の伸びは2018年度の前年比2.4%から2019年度が同1.1%、2020年度が同0.5%、2021年度が同0.6%へと低下するだろう。また、利子所得の低迷、年金給付額の抑制などによって、家計の可処分所得の伸びは雇用者報酬の伸びよりも低くなる。消費税率引き上げの影響は限定的だが、実質可処分所得の伸び悩みを主因として消費は低迷が続くことが予想される。
2014年度は3%の消費税率引き上げによって消費者物価上昇率が2%ポイント程度上昇し、実質所得が大きく押し下げられた。今回は税率の引き上げ幅が2%と前回よりも小さいことに加え、食料(酒類と外食を除く)及び新聞に軽減税率が導入されたこと、幼児教育無償化が実施されたことから、これらを合わせた消費者物価上昇率の押し上げ幅は0.4%ポイント程度にとどまる。このため、物価上昇による実質所得低下の影響は前回の消費増税時を大きく下回る。
ただし、消費を取り巻く環境は徐々に厳しさを増している。失業率は2%台前半の低水準で推移しているが、有効求人倍率は2019年4月の1.63倍をピークに10月には1.57倍まで低下し、新規求人数は前年比でマイナスに転じている。生産活動の低迷を受けて製造業の減少幅が特に大きくなっている。
賃金については、労働需給の引き締まりが反映されやすいパートタイム労働者の時給は大きく上昇しているが、一般労働者(正社員)の所定内給与は伸び悩みが続いている。
2019年の春闘賃上げ率は2.18%となり2018年の2.26%を▲0.08%ポイント下回った(厚生労働省調査)。企業の人手不足感は引き続き高いが、2020年の賃金交渉は消費増税後の景気悪化が判明する時期に行われる可能性が高いため、春闘賃上げ率は2.14%と2年連続で伸び率が低下すると予想する。7年連続のベースアップは実現するものの、消費者物価上昇率で割り引いた実質の伸びはほぼゼロ%にとどまるだろう。
業績との連動性が高いボーナス(賞与)は基本給以上に厳しいものとなっている。厚生労働省が公表した2019年の夏季賞与は、前年比▲1.4%(事業所規模5人以上)と4年ぶりの減少となった。足もとの企業収益は製造業の悪化が目立っているが、消費税率引き上げ後は国内需要の低迷によって非製造業の収益も下押しされるだろう。法人企業統計の経常利益は2012年度から2018年度まで7年連続で増益となっていたが、2019年度は減益に転じる可能性が高く、2019年の年末賞与に続き、2020年の賞与も減少する可能性が高い。
1人当たり賃金の伸び悩み、雇用者数の増加ペース鈍化から実質雇用者報酬の伸びは2018年度の前年比2.4%から2019年度が同1.1%、2020年度が同0.5%、2021年度が同0.6%へと低下するだろう。また、利子所得の低迷、年金給付額の抑制などによって、家計の可処分所得の伸びは雇用者報酬の伸びよりも低くなる。消費税率引き上げの影響は限定的だが、実質可処分所得の伸び悩みを主因として消費は低迷が続くことが予想される。
3―経済対策の押し上げ効果は限定的
政府は、事業規模26.0兆円、財政支出13.2兆円の「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を閣議決定した。財政支出の内訳は、(1)災害からの復旧・復興と安全・安心の確保に5.8兆円、(2)経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援に3.1兆円、(3)未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上に4.3兆円となっている。
政府は今回の経済対策による実質GDPの押し上げ効果を1.4%程度としているが、この試算はやや過大と考えられる。政府の試算は経済対策とそれに伴う補正予算がなかった場合をベースとしているが、実際には毎年のように経済対策を目的とした補正予算が編成されているため、実質的な上乗せ幅は見かけほど大きくない。たとえば、2018年度には経済対策は実施されなかったものの、国土強靭化を目的とした公共事業関係費の大幅な積み増しが行われるなど補正予算で3.6兆円の支出が追加(予算補正追加額が4.9兆円、予算補正修正減少額が1.3兆円)された。今回の経済対策に盛り込まれた一般会計の2019年度の補正予算は4.3兆円で前年度とあまり変わらない。
また、補正予算が成立しても消化しきれないという問題もある。日本の予算は単年度主義となっており、予算によって認められた国費の歳出期限が及ぶのは原則として当年度限りである。年度内に使用し終わらない金額は、一定の条件を満たせば翌年度に繰り越すことができるが、そうでなければ国庫に返納することになっている。最近は補正額を上回る未使用額(翌年度繰越額+不用額)が毎年発生しており、特に公共事業関係費は人手不足の影響もあって予算の繰越率(翌年度繰越額/歳出予算現額)が大きく上昇しており、2018年度は31.3%となった[図表3]。2019年度補正予算は規模が大きいことに加え、成立が年度末近くになることが見込まれるため、予算の使い残しが膨らむ可能性がある。経済対策による景気の押し上げ効果は見かけほど大きくならないだろう。
政府は今回の経済対策による実質GDPの押し上げ効果を1.4%程度としているが、この試算はやや過大と考えられる。政府の試算は経済対策とそれに伴う補正予算がなかった場合をベースとしているが、実際には毎年のように経済対策を目的とした補正予算が編成されているため、実質的な上乗せ幅は見かけほど大きくない。たとえば、2018年度には経済対策は実施されなかったものの、国土強靭化を目的とした公共事業関係費の大幅な積み増しが行われるなど補正予算で3.6兆円の支出が追加(予算補正追加額が4.9兆円、予算補正修正減少額が1.3兆円)された。今回の経済対策に盛り込まれた一般会計の2019年度の補正予算は4.3兆円で前年度とあまり変わらない。
また、補正予算が成立しても消化しきれないという問題もある。日本の予算は単年度主義となっており、予算によって認められた国費の歳出期限が及ぶのは原則として当年度限りである。年度内に使用し終わらない金額は、一定の条件を満たせば翌年度に繰り越すことができるが、そうでなければ国庫に返納することになっている。最近は補正額を上回る未使用額(翌年度繰越額+不用額)が毎年発生しており、特に公共事業関係費は人手不足の影響もあって予算の繰越率(翌年度繰越額/歳出予算現額)が大きく上昇しており、2018年度は31.3%となった[図表3]。2019年度補正予算は規模が大きいことに加え、成立が年度末近くになることが見込まれるため、予算の使い残しが膨らむ可能性がある。経済対策による景気の押し上げ効果は見かけほど大きくならないだろう。
4―実質GDP成長率の見通し
2019年10-12月期は前回の消費増税後に比べれば規模は小さいものの、駆け込み需要の反動減が発生すること、消費の基調が弱い中で税率引き上げに伴う物価上昇によって実質所得が低下することから、民間消費が大幅に減少し、マイナス成長となることは避けられないだろう。ただし、反動減が小さいこと、ポイント還元制度などの消費増税対策による押し上げ効果が一定程度見込まれることから、成長率のマイナス幅は前回増税後を下回る公算が大きい。
実質GDPは反動減の影響が和らぐ2020年1-3月期に小幅なプラスに転じた後、東京オリンピック・パラリンピックが開催される7-9月期にかけて伸びを高めるが、オリンピック終了後の2020年度後半から2021年度前半にかけては、押し上げ効果の剥落から景気の停滞色が強まることは避けられない。実質GDPが潜在成長率とされる1%を上回る伸びとなるのは2021年度後半となるだろう。
実質GDP成長率は2019年度が0.8%、2020年度が0.6%、2021年度が0.8%と予想する。
実質GDPは反動減の影響が和らぐ2020年1-3月期に小幅なプラスに転じた後、東京オリンピック・パラリンピックが開催される7-9月期にかけて伸びを高めるが、オリンピック終了後の2020年度後半から2021年度前半にかけては、押し上げ効果の剥落から景気の停滞色が強まることは避けられない。実質GDPが潜在成長率とされる1%を上回る伸びとなるのは2021年度後半となるだろう。
実質GDP成長率は2019年度が0.8%、2020年度が0.6%、2021年度が0.8%と予想する。
(2020年01月14日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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