2019年12月10日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(12月号)~輸出は米中貿易戦争を背景にアジア向けを中心に減速

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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19年10月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比4.0%減(前月:同2.3%減)と低下した(図表1)。輸出の伸び率は昨年後半から海外経済の減速やITサイクルのピークアウト、米中貿易摩擦の激化、コモディティ価格の下落などを受けて低下し、今年は減少傾向が続いている。足元では米中通商協議の第1弾合意を巡る不透明感は漂っているが、ITサイクルが下げ止まりつつあるほか、11月の中国製造業PMIが改善するなど明るい材料が出てきており、輸出に底入れの兆しが見え始めている。

ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、10月は北米向け(同10.8%増)が堅調に拡大する一方、米中貿易戦争の長期化を背景に東南アジア向け(同7.6%減)と東アジア向け(同1.9%減)が減速したほか、製造業景況感が悪化しているEU向け(同4.5%減)も低迷(図表2)。
(図表1)ASEAN6カ国の輸出額/(図表2)ASEAN6ヵ国仕向け地別の輸出動向
タイの19年10月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比4.5%減(前月:同1.4%減)と低下し、3ヵ月連続の減少となった。輸出は2月と7月に上振れて一時的にプラスとなったが、基調としては昨年後半から米中貿易摩擦や世界経済の減速、通貨バーツの上昇を受けて電子機器を中心に減少傾向が続いている。また輸入額も前年同月比7.6%減(前月:同4.2%減)とマイナス幅が拡大した結果、貿易収支は5.1億ドルの黒字となり、前月から7.7億ドル黒字が縮小した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同2.6%減(前月:同0.2%増)と低下し、2ヵ月ぶりのマイナスとなった(図表4)。工業製品の内訳を見ると、主力の自動車・部品(同1.1%増)と家電製品(同3.5%増)が増加傾向を維持した一方、機械・装置(同9.6%減)と石油化学製品(同10.5%減)、電子機器(同0.7%減)が低迷した。また鉱業・燃料は同34.5%減(前月:同22.8%減)となり、石油製品(同35.9%減)を中心に低迷した。さらに農産物・加工品も同4.2%減(前月:同3.1%減)と3ヵ月連続のマイナスとなった。加工食品(同8.3%増)や果物(同9.5%増)、畜産物(同10.5%増)など一部の品目は増加したものの、コメ(同26.6%減)や輸出削減の期間終了によって価格が急落した天然ゴム(同22.9%減)、ゴム製品(同3.4%減)が落ち込むなど、総じて低調だった。
(図表3)タイの貿易収支/(図表4)タイ輸出の伸び率(品目別)
ベトナムの19年10月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比7.3%増(前月:同10.7%増)と低下した。輸出の伸び率は今年2月に旧正月に伴い営業日数が減った影響で一時的に減少したものの、その後は繊維関連の堅調な拡大と電気・電子製品の持ち直しによって好調を維持している。また輸入額も前年同月比2.9%増(前月:同11.8%増)と低下した結果、貿易収支は18.6億ドルの黒字となり、前月から2.5億ドル黒字が拡大した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が同10.0%増(前月:同6.8%増)と上昇した。またコンピュータ・電子部品も同24.1%増(前月:同32.0%増)と増勢が鈍化したものの、8ヵ月連続の二桁成長となった(図表6)。繊維関連では、履物が同15.0%増(前月:同13.4%増)と好調を維持した一方、織物・衣類が同1.4%減(前月:同5.8%増)が8ヵ月ぶりのマイナスに転じた。農林水産物は、コーヒー(同37.2%減)や水産物(同4.4%減)が低迷する一方、コメ(同12.1%増)が好調、天然ゴム(同5.7%増)と野菜(同3.8%増)が増加に転じるなど、総じて改善傾向がみられた。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同1.5%増(前月:同5.1%増)と鈍化する一方、地場企業が同22.2%増(前月:同25.7%増)と好調を維持した。
(図表5)ベトナムの貿易収支/(図表6)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの19年10月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比7.4%減(前月:同7.7%減)と、僅かにマイナス幅が縮小した。輸出の基調は昨年後半から主力の電気・電子製品の鈍化とパーム油の出荷減少により減速傾向が続いた後、今年に入って原油需要の低迷が加わって10ヵ月連続で減少している。一方、輸入額が前年同月比9.4%減(前月:同1.3%減)と低下した結果、貿易収支は41.4億ドルの黒字となり、前月から21.4億ドル黒字が拡大した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同2.6%減(前月:同9.5%減)と、主力の電気・電子製品(同3.9%減)を中心に3ヵ月連続で減少した(図表8)。また鉱物性燃料は同29.4%減(前月:同16.6%減)と3ヵ月連続の二桁減少となった。原油(同50.9%減)と石油製品(同27.8%減)、天然ガス(同17.6%減)がそれぞれ減少した。さらに動植物性油脂が同10.0%減(前月:同9.2%増)とパーム油を中心に落ち込んだほか、化学製品が同12.7%減(前月:同9.9%減)と9ヵ月連続のマイナス成長となった。
(図表7)マレーシア貿易収支/(図表8)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
インドネシアの19年10月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比6.1%減(前月:同5.7%減)と低下した。輸出は自動車・同部品の増加が下支えとなっているものの、昨年後半から世界的な需要減退と商品価格の下落を背景に主力の資源関連が振るわず、12ヵ月連続で減少している。また輸入額も前年同月比16.4%減(前月:同2.4%減)とマイナス幅が大きく拡大した結果、貿易収支は1.6億ドルの黒字となり、前月から3.3億ドル改善した(図表9)。

全体の9割を占める非石油ガス輸出が同2.5%減(前月:同2.7%減)とマイナス幅が縮小、また石油ガス輸出が同40.1%減(前月:同37.1%増)と3ヵ月連続で大幅に減少した(図表10)。品目別に見ると、自動車・同部品(同10.5%増)が好調に推移、鉱石、スラグ及び灰(同86.6%増)が増加に転じた一方、鉱物性燃料(オイル・ガス除く)(同11.9%減)や衣服(同7.8%減)、履物(同12.7%減)、宝飾品(同16.7%減)、動植物製油脂(同17.9%減)など幅広い品目の減少傾向が続いた。
(図表9)インドネシアの貿易収支/(図表10)インドネシア輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの19年10月の輸出額(石油と再輸出除く、ドル建て、通関ベース)は前年同月比11.8%減(前月:同8.6%減)となり、マイナス幅が拡大した。輸出の伸び率は昨年後半から低調に推移していた電子製品が年末頃に減少幅を拡大、また石油化学製品が低迷するなど、主力の輸出品を中心に不振が続いている。なお、総輸出額は前年同月比8.7%減(前月:同5.7%減)、総輸入額は同9.7%減(前月:同5.3%減)となり、それぞれ低迷した。結果として、貿易収支が33.5億ドルの黒字となり、前月から4.3億ドル黒字が拡大した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品が同15.9%減(前月:同25.2%減)と低迷し、11ヵ月連続の減少となった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同16.6%減)をはじめ、PC(同30.9%減)、PC部品(同4.6%減)、通信機器(同15.1%減)などが軒並み低迷した。また電子製品と並び全体の約3割を占める化学は同25.2%減(前月:同15.4%減)と5ヵ月連続で減少した。化学製品の内訳を見ると、石油化学製品(同18.7%減)と医薬品(同35.6%減)がそれぞれ大きく減少した。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの19年10月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比0.1%増と、前月の同1.2%減から上昇し、小幅プラスに転じた。輸出の基調は昨年12月から今年1月にかけて短期的に落ち込んだが、その後は電子製品の増加を一次産品の減少が相殺する格好となり、概ね前年並みの安定した推移が続いている。また輸入額も前年同月比10.8%減(前月:同10.5%減)と若干低下した。結果として、貿易収支は32.5億ドルの赤字となり、前月から2.2億ドル赤字が拡大した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の5割強を占める電子製品は同7.0%増と、前月の同3.9%増から上昇し、7ヵ月連続のプラスとなった(図表14)。電子製品の内訳を見ると、主力の半導体デバイス(同8.9%増)と電子データ処理機(同12.0%増)が上昇したほか、家電製品(同43.8%増)が好調に推移した。その他9品目は総じて増加した品目が多かった。旅行用品とハンドバッグ(同155.9%増)やその他鉱産物(同84.9%増)、金(同52.9%増)、生鮮バナナ(同15.7%増)、その他製造品(同4.6%増)、イグニッションワイヤーセット(同2.0%増)が増加した一方、機械・輸送用機器(同42.7%減)と化学(同18.4%減)、金属部品(同16.7%減)が減少した。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
アジア・新興国経済

(2019年12月10日「経済・金融フラッシュ」)

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