2019年12月06日

2020年はどんな年? 金融市場のテーマと展望

経済研究部 上席エコノミスト   上野 剛志

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2) 衆議院解散・総選挙の可能性
国内政治では、衆議院解散・総選挙の可能性が注目点になる。現在の衆議院の任期は再来年の10月までだが、再来年に入ると解散時期の選択肢が狭まり、任期末間際での「追い込まれ解散」になるリスクが出てくるため、安倍首相が来年中に解散・総選挙に踏み切る可能性がある。
国政選挙前後の株価と為替の変動(2012年~) ここで、2012年9月の安倍首相の自民党総裁就任後に行われた6回の国政選挙(衆議院選・参議院選ともに3回ずつ)について、選挙前後の株価と為替の反応を振り返ってみると、まず、「衆議院選期間には毎回、円安・株高が進んでいる」ことが確認できる。安倍自民党は大規模な金融緩和と積極的な財政政策を掲げてきただけに、選挙での過半数獲得が金融緩和・財政拡大を促すと見なされ、円安・株高材料になったと考えられる。特に衆議院選は解散を伴うため、市場でポジティブサプライズになりやすいうえ、政権選択に繋がる選挙であるため、参議院選よりも市場の反応が強く現れたとみられる。
 
ただし、一方で「近年の衆参選挙ではあまり円安・株高が進んでいない」という傾向も確認できる。2014年以降の選挙は「政権交代」や「ねじれ解消」といった意味合いを持たず、現状を維持したに過ぎなかったほか、金融緩和余地の縮小などから政策への期待が高まりづらくなったことで、円安・株高反応が抑制されたと考えられる。

従って、来年、衆議院解散・総選挙が実施され、自民党が過半数を獲得したとしても、円安・株高反応は限定的になりそうだ。逆にもし自民党が過半数割れに追い込まれるような事態となれば、「安倍政権退陣→アベノミクス終了」に対する懸念から円高・株安が進む可能性が高い。
日銀政策委員会の構成と任期期限 なお、日銀については、来年も市場の脇役に留まりそうだ。日銀の追加緩和余地は既に乏しくなっている一方、物価目標達成は程遠いことから、基本的に政策の現状維持を続けると見込まれるためだ。

そうした中、来年3月と6月に原田審議委員と布野審議委員の任期末が到来することから、新たな審議委員人事が注目されるところだが、安倍政権が継続している限り、引き続き現行の大規模金融緩和に肯定的な人材が選ばれる可能性が高い。来年の審議委員人事が金融政策に大きな変化を及ぼすことは考えにくい。
(メインシナリオとリスク)
以上、来年の注目材料を見てきたが、最も重要な材料は今年の世界経済や金融市場を揺さ振ってきた米中貿易摩擦の行方だと考えられる。

メインシナリオとしては、今後も交渉は一筋縄には行かないものの、段階的な合意を経て貿易摩擦は緩和に向うと予想している。来年終盤に大統領選を控えるトランプ大統領としては、米中摩擦の激化・長期化による景気の失速や株価の下落は避けたいはずだ。また、中国の報復によって重要な票田である農家が苦境に陥っているため、トランプ大統領にとって、合意に伴う中国による農産物輸入拡大は魅力的に映るとも考えられる。米中摩擦が緩和に向うことで、両当事国をはじめ世界経済への減速圧力も弱まるだろう。また、中国の経済対策の効果も次第に顕在化してくると見込まれる。米大統領選挙の行方については流動的で予断を許さないものの、今のところウォーレン上院議員が次期大統領に選ばれるシナリオはメインシナリオではない。こうしたことから、来年の日本株の方向感としては「上昇」を予想している。

ただし、今年秋からの株価上昇によって、PERなどで見た日本株の割安感は既に後退している。また、ポピュリズムや米中の覇権争いは今後も続くほか、地政学リスクも高止まりするとみられることから、投資家は世界経済を巡る下振れリスクを警戒せざるを得ない。従って、日本株の上値も限られそうだ。
 
ドル円については、米中摩擦の緩和や世界経済の減速懸念後退がリスクオンの円売りに繋がる場面も想定されるが、来年、FRBが利上げに前向きな姿勢を示す可能性は低く、ドル高圧力は高まりにくい。一方で世界経済の下振れ懸念がリスクオフの円高圧力になる局面もたびたび発生すると見込まれるため、ドル円は105円~110円を中心とする「レンジ相場」が続くと予想している。
 
以上、来年は株価の持ち直し、ドル円のレンジ相場を予想しているが、引き続き世界経済を巡る多くの下振れリスクが存在しているだけに、株安・円高リスクにも警戒を怠れない状況が続きそうだ。
日経平均株価とPER(株価収益率)/経済政策不確実性指数(世界)

2.日銀金融政策(11月)

2.日銀金融政策(11月):当面の追加緩和に否定的な見解を示す

(日銀)維持(開催なし)
11月はもともと金融政策決定会合が予定されていない月であったため、必然的に金融政策は現状維持となった。次回会合はFOMCとECB理事会の翌週にあたる今月18~19日に開催される予定。
 
11月11日に「金融政策決定会合における主な意見(2019 年10 月30、31 日開催分)」が公表された。日銀は同会合において、現行の金融政策を維持する一方、政策金利に関するフォワードガイダンスを「物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定」へと修正し、実質的に強化した1。「主な意見」でも、「現状、モメンタムは損なわれていない」との意見が多くみられた一方で、「注意が必要な情勢にある」との認識の下、フォワードガイダンスの強化に前向きな意見が目立った。

なお、黒田総裁は11月29日に開催された衆院財務金融委員会において、金融政策について、今後モメンタムが損なわれる場合には、追加緩和に踏み切る方針を示す一方で、現時点での追加緩和には否定的な見解を示した。

また、それに先立つ28日に櫻井審議委員も記者会見において、「積極的に政策的に動いていく必要があるのかどうかというと必ずしもまだその段階でもないのかもしれない」と発言しており、情勢が悪化しない限り、当面は追加緩和から距離を置く姿勢を発信している。
 
1 従来は、「当分の間、少なくとも2020 年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定」としていた。
(今後の予想)
効果と副作用を考慮した場合、日銀の採れる追加緩和余地は乏しい。従って、メインシナリオとしては、今後とも出きる限り追加緩和を回避し、適宜フォワードガイダンスの強化程度の措置を実施するに留めると予想する。

一方、もし市場が緊迫化し、大幅な円高が進行したり、内外景気が失速したりする場合には、日銀も動かざるを得なくなる。この際には、緩和の打ち止め感や副作用増大を覚悟のうえで、マイナス金利深堀り(副作用緩和策とセットで)を主軸とする本格的な追加緩和に踏み切ることになると見ている。
短期政策金利の見通し/長期金利誘導目標の見通し 
長

3.金融市場(11月)の振り返りと予測表

3.金融市場(11月)の振り返りと予測表

(10年国債利回り)
11月の動き 月初-0.1%台後半でスタートし、月末は-0.0%台後半に。
月上旬は、米中協議進展に対する楽観の高まりに加え、堅調な米経済指標や日銀による超長期国債買入れ減額などを受けてマイナス幅を急速に縮小し、低調な国債入札結果を受けた12日には-0.0%台前半に達した。その後は米中協議への楽観後退や低調な中国経済指標を受けて低下基調に転じ、香港情勢を巡る米中対立の激化懸念が高まった20日には-0.1%台前半まで低下した。月終盤は米中協議を巡る見方が交錯する中で-0.1%を挟んだ展開となったが、月末は弱めの国債入札結果を受けてやや上昇し、-0.0%台後半で終了した。
日米長期金利の推移(直近1年間)/日本国債イールドカーブの変化/日経平均株価の推移(直近1年間)/主要国株価の騰落率(11月)
(ドル円レート)
11月の動き 月初108円付近でスタートし、月末は109円台半ばに。
月初、米中協議に対する進展期待の高まりや堅調な米経済指標を受けて円売りドル買いが進み、6日に109円台に、8日には一時109円台半ばに迫った。その後は香港情勢の悪化もあって米中協議への期待がやや後退、ドル円は弱含む展開となり、トランプ大統領とパウエルFRB議長の会談でドル高が話題になったことが明らかになった19日には108円台半ばを付けた。月終盤には米中協議への楽観が再び強まったほか、堅調な米経済指標を受けてドル円が上昇し、月末は109円台半ばで終了した。
ドル円レートの推移(直近1年間)/ユーロドルレートの推移(直近1年間)
(ユーロドルレート)
11月の動き 月初1.11ドル台前半でスタートし、月末は1.09ドル台後半に。
月初、4日に1.11ドル台後半を付けた後、堅調な米経済指標を受けてユーロが下落基調になり、8日には1.10ドル台前半を付ける。その後、月の中旬には米中協議の先行き不透明感からドルがやや売られ、18日には1.10ドル台後半に上昇した。しかしながら、下旬に入るとユーロ圏の経済指標悪化を受けて再びユーロが弱含み、25日には1.10ドル台前半に。月末も1.10ドルを若干下回る水準で終了した。
金利・為替予測表(2019年12月6日現在)
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2019年12月06日「Weekly エコノミスト・レター」)

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【2020年はどんな年? 金融市場のテーマと展望】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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