2019年11月15日

2019~2021年度経済見通し(19年11月)

経済研究部 経済調査部長   斎藤 太郎

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地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 (輸出の低迷が続くが、明るい兆しも)
輸出は2018年後半から低迷が続いているが、ここにきて下げ止まりの兆しもみられる。2019年7-9月期のGDP統計の財貨・サービスの輸出は前期比▲0.7%の減少となったが、日韓関係の悪化に伴い訪日外国人数が減少したことからサービス輸出が前期比▲4.4%と大きく落ち込んだことが大きく、輸出全体の約8割を占める財輸出は前期比0.3%(4-6月期:同0.2%)と小幅ながら2四半期連続で増加した。
海外経済の見通し(実質GDP成長率) 輸出の先行きを左右する海外経済を展望すると、米国は2018年の実質GDP成長率が2.9%となり、2017年の2.4%から加速したが、歳出拡大の時限措置終了、減税による押し上げ効果の減衰、保護主義的な通商政策による下押しなどから、2019年が2.3%、2020年、2021年が1.9%へと減速すると予想している。製造業を中心に低迷が続くユーロ圏の実質GDPは、2019年4-6月期、7-9月期ともに前期比年率0.8%の低成長となったが、10-12月期以降も1%台前半の成長にとどまることが見込まれる。また、2019年7-9月期に前年比6.0%と2四半期連続で減速した中国は、景気対策の効果などから2020年に成長率がいったん持ち直すものの、2021年にかけては5%台まで減速すると予想している。総じてみれば、今回の予測期間である2021年度まで海外経済は低成長が続くと想定している。
一方、グローバルなIT関連財の調整に目処がついてきたことは明るい材料だ。世界半導体売上高は2018年前半をピークに伸び率が急低下し、2019年入り後には前年比で二桁の大幅減少となったが、足もとでは下げ止まりの動きが見られる。

また、日本の情報関連財輸出(日本銀行作成の実質輸出)は2018年4-6月期から2四半期連続で前期比増加となり、大幅な悪化が続いていた国内の電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は2019年4-6月期に7四半期ぶりにプラスに転じた後、7-9月期は出荷の減少幅が縮小する一方、在庫の減少幅が拡大したため、出荷・在庫バランスのプラス幅が大きく拡大した。海外経済の低成長が続くため、輸出の伸びが大きく加速することは見込めないが、情報関連財を中心に2019年度末にかけて下げ止まり、2020年度以降は増加基調となるだろう。GDP統計の財貨・サービスの輸出は2019年度に前年比▲1.4%と7年ぶりの減少となった後、2020年度が同1.8%、2021年度が同2.7%と緩やかな増加が続くと予想する。
世界半導体売上高(前年同月比)/電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス
(消費は低迷が継続)
民間消費は2019年度が前年比0.1%、2020年度が同0.1%、2021年度が同0.5%と低い伸びが続くと予想する。民間消費の伸びは、2014年度から5年連続で実質GDP成長率を下回っているが、この関係は今回の予測期間である2021年度まで変わらないだろう。
新規求人数、雇用者数の推移 労働需給は引き締まった状態が続いているが、ここにきて雇用情勢の改善には陰りもみられる。失業率は2%台前半の低水準で推移しているが、雇用者数の伸びは2018年中の前年比2%程度の伸びから1%程度まで鈍化している。また、労働市場の先行指標である新規求人倍率は高水準を維持しているが、2019年2月の2.50倍をピークに9月には2.28倍まで低下し、新規求人数は前年比でマイナスに転じている。生産活動の低迷を受けて製造業の減少幅が特に大きくなっている。
賃金については、労働需給の引き締まりが反映されやすいパートタイム労働者の時給は大きく上昇しているが、一般労働者(正社員)の所定内給与は伸び悩みが続いている。

厚生労働省の「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によれば、2019 年の賃上げ率は2.18%となり2018年の2.26%を▲0.08ポイント下回った。企業の人手不足感は引き続き高いが、2018年度後半に企業収益が悪化したこと、賃上げ交渉が本格化した2018年度末にかけて景気の減速懸念が高まったことが賃金交渉に影響を及ぼした。2020年の賃金交渉は消費増税後の景気悪化が判明する時期に行われる可能性が高いため、2020年の春闘賃上げ率は2.14%と2年連続で伸び率が低下すると予想する。7年連続のベースアップは実現するものの、消費者物価上昇率で割り引いた実質の伸びはほぼゼロ%にとどまるだろう。

また、業績との連動性が高いボーナス(賞与)は基本給以上に厳しいものとなっている。厚生労働省が11/8に公表した2019年夏季賞与(6~8月の特別給与のうち賞与として支給された給与を特別集計したもの)は、前年比▲1.4%(事業所規模5人以上)と4年ぶりの減少となった。足もとの企業収益は製造業の悪化が目立っているが、日銀短観2019年9月調査の経常利益計画では、2019年度下期は消費税率引き上げの影響もあって、非製造業の減益幅が大きくなっている。法人企業統計の経常利益は2012年度から2018年度まで7年連続で増益となっていたが、2019年度は減益に転じる可能性が高く、2019年の年末賞与に続き、2020年の賞与も減少する可能性が高い。

1人当たり賃金の伸び悩み、雇用者数の増加ペース鈍化から実質雇用者報酬の伸びは2018年度の前年比2.1%から2019年度が同0.9%、2020年度が同0.7%、2021年度が同0.5%へと低下するだろう。
賞与(夏季、年末)の推移/実質雇用者報酬の予測
また、超低金利の長期化に伴う利子所得の低迷、マクロ経済スライドや特例水準の解消による年金給付額の抑制、年金保険料率の段階的引き上げなどによって、家計の可処分所得の伸びは雇用者報酬の伸びを大きく下回っており、この構図は予測期間中も変わらないだろう。消費税率引き上げの影響は限定的だが、実質可処分所得の伸び悩みを主因として予測期間を通じて消費は低迷が続くことが予想される。
(製造業を中心に設備投資の牽引力は弱まる)
高水準の企業収益を背景に設備投資は堅調を維持しているが、その勢いには陰りがみられる。日銀短観2019年9月調査では、2019年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア投資、除く土地投資額)が6月調査から▲0.3%下方修正され、前年度比6.0%増となった。増加基調は維持されているが、同時期(9月調査)の2017、2018年度の伸びを下回った。

法人企業統計では、製造業の設備投資が2019年1-3月期、4-6月期と2四半期連続で前期比マイナスとなるなど、企業収益の悪化がすでに設備投資に波及している。

人手不足対応の省力化投資、研究開発投資など景気循環に左右されにくい需要は引き続き旺盛であるため、設備投資が大崩れする可能性は低い。ただし、これまでの設備投資の回復はあくまでも企業収益の大幅な増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景としたもので、キャッシュフローに対する設備投資の比率は引き続き低水準にとどまっている。消費増税後の国内需要の悪化によってこれまで増加を続けてきた非製造業の収益が悪化すれば、非製造業の設備投資も抑制されるだろう。
設備投資計画(全規模・全産業)/設備投資とキャッシュフローの関係
歳出総額(一般会計)の推移 (2018年度第2次補正、2019年度当初予算が公共事業を押し上げ)
公的固定資本形成は2019年1-3月期から7-9月期まで3四半期連続で増加している。政府は、2018年12月に閣議決定した「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」に基づき、2018年度の第2次補正予算で公共事業関係費を大幅に積み増したほか、2019年度の当初予算でも公共事業関係費を2018年度当初予算比で9,310億円増(うち、臨時・特別の措置が8,503億円)、前年比15.6%の大幅増加とした。

安倍首相は11/8、台風19号など相次ぐ自然災害からの復旧・復興や、景気の下支えを図るため経済対策の策定を指示した。経済対策の裏付けとなる補正予算は2020年1月に召集される通常国会で成立することが見込まれる。公的固定資本形成は先行きも増加が続く可能性が高いだろう。
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2019年4月の前年比0.9%をピークに鈍化傾向が続き、9月には同0.3%となった。2017年2月から2年以上にわたって上昇を続けてきたエネルギー価格が原油価格下落の影響で2019年8月に下落に転じたことがその主因である。

外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きは継続しており、物価の基調がここにきて弱まっているわけではないが、エネルギー価格下落の影響を打ち消すほどの強さはない。消費税率引き上げによる影響は前回増税時に比べれば小さいものの、個人消費が一定程度減少し、需給面からの物価上昇圧力が弱まることは避けられないだろう。

また、サービス価格との連動性が高い賃金は伸び悩みが続いているが、2020年の賃上げ率は2年連続で前年を下回る可能性が高いため、賃金面からの物価上昇圧力も高まらないだろう。消費者物価上昇率はゼロ%台の低空飛行が続く可能性が高い。

2019年10月以降は消費税率引き上げと教育無償化により物価上昇率が大きく変動する。コアCPI上昇率は消費税率引き上げ(軽減税率導入の影響を含む)によって1%ポイント程度(ただし、10月は電気代、ガス代、通信料など一部の財・サービスでは経過措置によって旧税率が適用されるため0.8%ポイント程度)押し上げられるが、同時に実施される幼児教育無償化によって▲0.6%ポイント、2020年4月に予定されている高等教育無償化によって▲0.1%ポイント押し下げられる。消費税率引き上げと教育無償化を合わせたコアCPI上昇率への影響は、2019年度が+0.2%、2020年度が+0.1%である。

コアCPI上昇率は2019年度が前年比0.5%、2020年度が同0.4%、2021年度が同0.5%、消費税率引き上げ・教育無償化の影響を除くベースでは2019年度が前年比0.3%、2020年度が同0.3%、2021年度が同0.5%と予想する。
消費税率引き上げと教育無償化による消費者物価への影響/消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測


 
日本経済の見通し(2019 年7-9月期1次QE(11/14発表)反映後)/米国経済の見通し/欧州(ユーロ圏)経済の見通し
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2019年11月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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