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今年はインフルエンザの流行が早い可能性

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――地域によっては、例年より流行が早い可能性
都道府県別にみると、沖縄県で8月頃から患者が増え続け、9月半ばにピークを迎えたのをはじめとして、宮崎県で9/2の週、熊本県を除くその他の九州地方と石川県で9/9の週、東京都で9/16の週に、それぞれ定点あたり報告数が1.0を超えた。現在(10/14~10/20)は、その多くの都道府県でおさまりつつあるが、新たに北海道、岩手県、新潟県等で1.0を超えた。
学級閉鎖も10/14~10/20の1週間で81施設(昨年の同時期20施設)、9月からの累計で675施設(昨年の同時期108施設)と報告されている。
1 9/9~9/15に全国で1.17、9/16~9/22に1.16だった。
2――ウイルスの種類と抗原性の変化
人がかかる季節性インフルエンザには、ウイルスに存在するたんぱく質の種類によって、A~C型の3種類の型に分けられている2。A型ウイルスとB型ウイルスは、感染が伝播し流行を引き起こすが、C型ウイルスは、ある程度の年齢になれば誰もが免疫をもっていると言われており、症状も軽くて済むため、気づかないことが多いと言われている。
A型、B型いずれのウイルスにも、2種類の抗原性糖たんぱく質(HAとNA3)がある。A型は、それぞれの糖たんぱく質がさらに複数種類(HAが16種類、NAが9種類)に分かれているため、その組み合わせによって最大144種類存在することになる。現在、人に流行しているのはH1N1亜型およびH3N2亜型で、それぞれスペインインフルエンザ(1918~19)、香港インフルエンザ(1968~69)の流行の際に現れたインフルエンザ・ウイルスが少しずつ姿を変えたものだ。
さらにA型は数年から数十年単位で、突然別の亜型に取って代わることがある。これがいわゆる「新型インフルエンザ」と呼ばれるものだ。
2 牛がかかるインフルエンザにD型ウイルスがあるが、厚生労働省検疫所(FORTH)によると、人に感染し病気を引き起こすことは知られていないとのことだ(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2018/01171258.html)。
3 ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)。
3――ワクチンの供給量は2016年以降もっとも多い
毎シーズン、WHOによるウイルス監視に基づき、南半球と北半球それぞれに予想されるウイルスに対応したワクチン株4の選定が行われる。日本では、WHOによる選定結果と国内での流行状況からワクチンの製造に適した株を決定する。流行するウイルスの予測はほとんど外れないが、選定された株によるワクチン生産効率が悪いことは起き得る5。そのため、厚生労働省では期待される有効性とワクチン供給可能量をふまえて株を選定している。
特にA型はB型と比べて変異をしやすいことから(詳細は後述のとおり)、昨シーズンと比較するとA型が2種類とも変わり、B型は2種類とも同じ株を使用している(図表2)。
4 株とは、検体から分離したウイルスを人工的に培養したものをいう。
5 2017年シーズンに予定していた株の生産効率が低かったことから、それとは異なる株でワクチンを製造しなおしたという経緯があった。また、製造工程で抗原変異がおきることもある。
6 添加物はそれぞれの会社で異なる可能性があるため、副反応には違いが出ることがある。
(2019年10月25日「基礎研レター」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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