2019年10月21日

貿易統計19年9月-輸出の低迷が続くが、IT関連は下げ止まりの動き。7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.2%程度のマイナスに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易赤字(季節調整値)が継続

財務省が10月21日に公表した貿易統計によると、19年9月の貿易収支は▲1,230億円の赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:23億円、当社予想は▲454億円)を下回る結果となった。輸出入ともに前月から減少幅が縮小したが、輸出の減少幅(8月:前年比▲8.2%→9月:同▲5.2%)が輸入の減少幅(8月:前年比▲11.9%→9月:同▲1.5%)を上回ったため、貿易収支は前年に比べ▲2,471億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲2.3%(8月:同▲6.0%)、輸出価格が前年比▲2.9%(8月:同▲2.4%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比6.8%(8月:同▲6.1%)、輸入価格が前年比▲7.8%(8月:同▲6.2%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲972億円と7ヵ月連続の赤字となり、8月の▲1,167億円から赤字幅が若干縮小した。輸出が前月比1.4%の増加となり、輸入の増加幅(前月比1.1%)を上回った。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 9月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=64.4ドル(当研究所による試算値)となり、8月の67.4ドルから低下した。原油価格(ドバイ)は50ドル台後半で推移しており、通関ベースの原油価格は10月も60ドル台半ばとなることが見込まれる。原油高による輸入金額の増加は一段落しており、先行きについては、消費税率引き上げ後の内需低迷を反映した輸入の減少によって貿易収支(季節調整値)は黒字に転じる可能性もある。

2.輸出は低迷が続くが、IT関連は下げ止まり

19年9月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲4.0%(8月:同▲3.5%)、EU向けが前年比0.2%(8月:同▲2.3%)、アジア向けが前年比▲6.0%(8月:同▲8.9%)となった。

19年7-9月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲5.6%(4-6月期:同▲0.1%)、EU向けが前期比4.1%(4-6月期:同▲5.5%)、アジア向けが前期比▲1.1%(4-6月:同0.4%)、全体では前期比▲1.1%(4-6月期:同▲0.9%)となった。EU向けは3四半期ぶりに上昇したが、4-6月期に6四半期ぶりに上昇したアジア向けが再び低下し、これまで堅調だった米国向けが自動車を中心に大きく落ち込んだ。

輸出は全体としては低調な推移が続いているが、輸出を大きく押し下げてきた半導体電子部品がアジア向けを中心に2ヵ月連続で前年比プラスになるなど、IT関連品目の輸出が下げ止まりつつあることは明るい材料といえる。

一方、7-9月期の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前期比0.7%(4-6月期:同0.2%)と2四半期連続で上昇した。消費税率引き上げ前の駆け込み需要に対応する輸入が押し上げ要因となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/IT関連輸出の推移

3.7-9月期の外需寄与度は▲0.2%程度のマイナスに

9月までの貿易統計と8月までの国際収支統計の結果を踏まえて、19年7-9月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比ほぼ横ばい、輸入が前期比1%程度の増加となった。この結果、7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.2%(4-6月期:同▲0.3%)と2四半期連続のマイナスとなることが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年10月21日「経済・金融フラッシュ」)

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