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- 消費者物価(全国19年9月)-消費税率引上げ後のコアCPI上昇率はゼロ%台半ばの推移が続く見込み
2019年10月18日
1.コアCPI上昇率は前月から0.2ポイント縮小
総務省が10月18日に公表した消費者物価指数によると、19年9月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.3%(8月:同0.5%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.3%、当社予想も0.3%)通りの結果であった。コアCPI上昇率は19年4月の前年比0.9%をピークに鈍化傾向が続き、17年4月(同0.3%)以来の低い水準となった。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.5%(8月:同0.6%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。生鮮食品が前年比▲2.2%の下落となったため(8月:同▲4.9%)、総合は前年比0.2%(8月:同0.3%)とコアCPIの伸びを下回った。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.5%(8月:同0.6%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。生鮮食品が前年比▲2.2%の下落となったため(8月:同▲4.9%)、総合は前年比0.2%(8月:同0.3%)とコアCPIの伸びを下回った。
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(8月:前年比▲4.8%→9月:同▲6.9%)、灯油(8月:前年比▲1.3%→9月:同▲2.6%)の下落幅が拡大し、電気代(8月:前年比1.8%→9月:同0.4%)、ガス代(8月:前年比1.8%→9月:同0.4%)の上昇幅が縮小したことから、エネルギー価格が前年比▲1.9%となり、8月の同▲0.3%から下落幅が拡大した。
2.上昇品目数の割合は高水準を維持
3.消費税率引上げ後のコアCPI上昇率はゼロ%台半ばの推移が続く見込み
コアCPIはエネルギー価格の低下を主因として19年4月の前年比0.9%をピークに鈍化傾向が続いている。
19年10月以降のコアCPI上昇率は消費税率引き上げによって押し上げられる一方、幼児教育無償化によって押し下げられる。
まず、コアCPIのうち消費税の課税対象となる品目の割合は約7割だが、今回は食料(酒類と外食を除く)及び新聞に軽減税率が導入されるため、消費税率が8%から10%へと引き上げられる品目の割合は5割強となる。税率引き上げ分が課税品目すべてにフル転嫁されると仮定すれば、消費税率引き上げによってコアCPI上昇率は1%ポイント程度(ただし、10月は電気代、ガス代、通信料など一部の財・サービスでは経過措置によって旧税率が適用されるため0.8%ポイント程度)押し上げられる。
一方、幼児教育無償化によって、幼稚園保育料(公立、私立)の価格がゼロ(無償化の上限を超えない部分)、保育所保育料の一部の価格がゼロとなるため、コアCPI上昇率は▲0.6%ポイント程度押し下げられる。
外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きは継続しており、物価の基調がここにきて弱まっているわけではないが、エネルギー価格下落の影響を打ち消すほどの強さはない。また、消費税率引き上げによる影響は前回増税時に比べれば小さいものの、個人消費が一定程度減少し、需給面からの物価上昇圧力が弱まることは避けられないだろう。
消費税率引き上げ、幼児教育無償化の影響を含めたコアCPI上昇率は、当面ゼロ%台半ばで推移することが予想される。
19年10月以降のコアCPI上昇率は消費税率引き上げによって押し上げられる一方、幼児教育無償化によって押し下げられる。
まず、コアCPIのうち消費税の課税対象となる品目の割合は約7割だが、今回は食料(酒類と外食を除く)及び新聞に軽減税率が導入されるため、消費税率が8%から10%へと引き上げられる品目の割合は5割強となる。税率引き上げ分が課税品目すべてにフル転嫁されると仮定すれば、消費税率引き上げによってコアCPI上昇率は1%ポイント程度(ただし、10月は電気代、ガス代、通信料など一部の財・サービスでは経過措置によって旧税率が適用されるため0.8%ポイント程度)押し上げられる。
一方、幼児教育無償化によって、幼稚園保育料(公立、私立)の価格がゼロ(無償化の上限を超えない部分)、保育所保育料の一部の価格がゼロとなるため、コアCPI上昇率は▲0.6%ポイント程度押し下げられる。
外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きは継続しており、物価の基調がここにきて弱まっているわけではないが、エネルギー価格下落の影響を打ち消すほどの強さはない。また、消費税率引き上げによる影響は前回増税時に比べれば小さいものの、個人消費が一定程度減少し、需給面からの物価上昇圧力が弱まることは避けられないだろう。
消費税率引き上げ、幼児教育無償化の影響を含めたコアCPI上昇率は、当面ゼロ%台半ばで推移することが予想される。
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(2019年10月18日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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