2019年09月11日

コンビニ24時間営業の是非-高齢化する来店客、持ち回り深夜営業でインフラ機能を維持しては

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
  • 日本のコンビニは「時間」と「距離」、「品揃え」という3つの利便性を柱に発展し、「多様化したサービスの提供」や「丁寧な接客」という面でも進化し続けている。高齢化で買い物困難者が多い地域では、商品の配達サービスや移動販売などが進んでおり、海外と比べて、清潔なトイレの無料開放や店員の接客態度の質が高さも特徴的だ。
     
  • 一方でコンビニ発展当初と現在の消費者の状況は変化している。来店客の高齢化が進み、セブンイレブンでは、1989年と比べて20代以下が3分の1に減る一方、50歳以上が4倍に増えている。高齢化により24時間営業に対するニーズは低下しているのではないか。
     
  • かつてはコンビニの主要客であった若者の価値観も変化している。経済不安が強く、モノがあふれた成熟した消費社会に生まれ育ったがゆえに、コストパフォーマンス意識が高いため、定価で商品が売るコンビニよりも、ディスカウントストアや格安ネット通販を利用する傾向がある。
     
  • また、未婚化や晩婚化、核家族化の進行で高齢単身世帯が増えている。高齢単身世帯の生活にとって、商品が小分けで近所に立地するコンビニは親和性が高い。高齢単身世帯は高齢化・過疎化が進む地方部ほど多いため、人手不足に悩む地域ほど深夜営業の必要性は低下しているのではないか。
     
  • コンビニは家事の時短化ニーズの強い共働き世帯の受け皿にもなっている。しかし、特に子どものいる共働き世帯では帰宅時の利用が予想され、深夜営業に対するニーズは強くない。また、注文後、数時間で配送するネット通販サービスも増えており、人手不足の中で、コンビニだけが24時間営業に固執して疲弊する必要はないだろう。
     
  • 一方で、特に高齢単身世帯の多い地方部では、コンビニは社会的なインフラとしても機能している。24時間営業の店舗が全くないと緊急時などの不安が高まるため、地域の診療体制のように、コンビニ各社が持ち回りで24時間営業を担ってはどうか。
     
  • ただし、コンビニは24時間営業を前提として商品の製造や配送、商品の陳列等の店舗運営がなされているため、営業時間の短縮に合わせて、配送や製造の時間帯も変える必要がある。人手不足を背景にしたコンビニの時短営業化の実施には、コンビニのビジネスモデルそのものの見直しが求められている。

■目次

1――はじめに
 ~バブル期に発展したコンビニ24時間営業、果たして今の時代に必要なのか
2――コンビニの発展と日本の特徴
 ~時間・距離・品揃えの3本柱に加え、進化し続ける日本のコンビニ
3――コンビニ24時間営業は必要か
 ~高齢化する来店客、持ち回り深夜営業でインフラ機能を維持しては
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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