2019年09月11日

コンビニ24時間営業の是非-高齢化する来店客、持ち回り深夜営業でインフラ機能を維持しては

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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1――はじめに~バブル期に発展したコンビニ24時間営業、果たして今の時代に必要なのか

8月下旬から、経済産業省がコンビニエンスストアのオーナーに対して聞き取り調査を開始した。背景には、今年2月、大阪府のコンビニのオーナーが人手不足を理由に営業時間の短縮に踏み切ったことで、コンビニの24時間営業の是非が世論を巻き込む大論争となったことがある。当初、コンビニ本社側は、24時間営業に戻さなければ契約を解除するという強硬な姿勢を取っていた。しかし、メディアが報じたオーナー負担の大きさは世論を動かす事態となり、コンビニの深夜営業を短縮する実証実験をするまでとなった。実証実験は今年3月から開始され、現在、複数のコンビニチェーンに広がっている。まだ結果は公表されていないようだが、人手不足が深刻化する中で、今後ともコンビニ24時間営業の是非は注目されるだろう。

ところで、「24時間タタカエマスカ」とは平成元年(1989年)の流行語だ1。バブル景気の真っただ中、栄養ドリンクのCMに使われたキャッチコピーで、背景には企業戦士として猛烈に働くことを美徳とする風潮があった。コンビニの店舗数は、同時期から増加し始めている(図表1)。

30年前と比べて現在では、コンビニの店舗数は約8倍にもなる一方、コンビニの主な来店客である15~64歳の生産年齢人口は約1割減っている(図表2)。時代は平成から令和へと代わり、長時間労働は美徳ではなく、是正されるべきものとして「働き方改革」が進んでいる。同じ栄養ドリンクのシリーズでも、「24時間戦う」のではなく、「人生100年時代を応援する」というコンセプトの新商品が今年2月に登場している2

人々の暮らし方が変われば、商品やサービスの形も変わる。果たして、24時間営業を続けるコンビニのビジネスモデルは今の時代に合ったものなのだろうか。本稿では改めて、コンビニの24時間営業の是非について考察したい。
図表1 コンビニエンスストア店舗数の推移/図表2 年齢三区分別に見た日本の人口の推移
 
1 自由国民社「ユーキャン 新語・流行語大賞」
2 第一三共株式会社「リゲイン」シリーズでは従来の栄養ドリンクに加えて、今年2月から新コンセプトで「リゲイン トリプルフォース」が発売されている。
 

2――コンビニの発展と日本の特徴

2――コンビニの発展と日本の特徴~時間・距離・品揃えの3本柱に加え、進化し続ける日本のコンビニ

木下安司著「コンビニエンスストアの知識」(日本経済新聞社、2002)によれば、コンビニは「時間」と「距離」、「品揃え」という3つの利便性を柱に発展してきた。

時間については、コンビニは基本的に24時間営業であるため、いつでも消費者が商品を買うことができる。よって、時間の面で消費者の制約がなく利便性が高い。

2点目の距離については、自宅の近くにもあるために利便性が高い。コンビニは大規模なデパートやスーパーとは異なり小規模な店舗であるため、都市部の駅や幹線道路周辺だけでなく、住宅街にも立地している。さらに、店舗数が多いため、おおむねどこにでもあるという利便性の高さもある。図表1を見ると、2018年のコンビニの店舗数は約6万店にもなり、小売業ではコンビニに次いで店舗数の多いドラッグストア(16,058店)やスーパー(5,000店)と比べて格段に多い(経済産業省「商業動態統計(2019年6月)」)3

3つ目の品揃えについては、言うまでもないが、コンビニには食料品や日用品、文具類、新聞・雑誌など幅広い商品が揃っている。近年はドラッグストアでも食料品を扱うところが増えているが、営業時間の長さや品揃えにおいて、コンビニが優位性を保っている。

なお、日本では、2011年3月の東日本大震災をはじめ、近年、深刻な災害が相次いでいる。特に災害時は、地域に店舗網が張り巡らされ、生活必需品が揃うコンビニの存在意義は大きい。現在、多くのコンビニでは、緊急時の物資供給や帰宅困難者の支援において自治体と連携協定を結び、社会的なインフラ機能を担うようになっている。

ところで、海外でコンビニへ行った際、日本のコンビニの良さを改めて感じる日本人も多いのではないだろうか。同じコンビニチェーンの店舗であっても、品揃えやサービス、店員の対応は国によって様々だ。

品揃えでは、海外では保存の効く加工食品が多い印象だが、日本ではそれだけでなく、弁当やおにぎり、惣菜、生鮮食品等の鮮度の高い食品も多い。これらに加えて、レジの横では、おでんや揚げ物、コーヒーなど、その場で調理された温かい食品も売られている。近年では、コンビニが独自で開発するプライベートブランド(PB)商品も人気だ。PB商品はおおむね全ての商品領域に広がっている。

モノである商品だけでなく、コンビニで提供されているサービスも豊富だ。コピーやFAX、金融機関のATM、各種チケットや乗車券等の販売代行、宅配便やクリーニングの受付、光熱・水道費などの公共料金の収納代行、住民票等の各種証明書の交付サービスなどにも対応している。

さらに、最近のコンビニでは、3つに利便性を越えて、「多様化したサービスの提供」や「丁寧な接客」といった面でも進化し続けている。

例えば、高齢化が進み、買い物困難者が多い地域では、商品の配達サービスや移動販売なども進んでいる。また、清潔なトイレを誰にでも無料で開放しているという点も、日本独自のサービスなのかもしれない。店員の接客態度も質が高いだろう。海外では時に憮然とした態度やレジ打ちの遅い店員などに遭遇するが、日本では一般的にマニュアルに基づいた丁寧な対応がなされており、利用客のストレスが少ないように感じる。レジでの素早い対応や来店客へかかさない挨拶、整然とした商品陳列、行き届いた店内の清掃などは、日本の「おもてなし」精神が根底にあるのではないだろうか。
 
3 なお、同調査のデータでは、コンビニ店舗数は56,485店。
 

3――コンビニ24時間営業は必要か

3――コンビニ24時間営業は必要か~高齢化する来店客、持ち回り深夜営業でインフラ機能を維持しては

今やコンビニは、日本人の生活に深く入りこんでおり、欠かせない存在だ。「コンビニエンス」の名の通り、多様な面で利便性が高まっている。一方で、今の時代においても、24時間営業が必要なのかというと、必ずしもそうではないだろう。
図表3 セブンイレブン来店客の年齢分布の変化 実はコンビニの来店客は高齢化が進んでいる。日本のコンビニ最大手のセブンイレブンの来店客を見ると、1989年では20代以下の若者が来店客の約6割を占めていたが、2017年には2割へと減っている(図表3)。一方で、50歳以上は約1割から約4割へと4倍にも増えている。高年齢層は若者と比べて深夜の利用が少ないことが容易に予想されるため、高齢化の進行とともに24時間営業に対するニーズは低下するはずだ。

このようにセブンイレブンの来店客は日本の人口以上に高齢化が進んでいる4。その背景として、若者の消費行動の変化と高齢単身世帯の増加があげられる。

アベノミクスで景気は浮上したものの、バブル崩壊後、長らく続いた景気低迷の中で、若い世代ほど厳しい経済状況となっている。

これまでにも述べた通り5、若い世代ほど非正規雇用者が増え、正規雇用者でも賃金水準が低下している。また、少子高齢化による将来の社会保障不安もあるだろう。一方で、現在では技術革新により安くて品質の良いモノやサービスがあふれている。若い世代ほど成熟した消費社会に生まれ育ったために、コストパフォーマンス意識が高い傾向がある。定価で商品が売られているコンビニよりも、値引き率の高いディスカウントストアを利用したり、インターネット通販などで十分に比較検討した上で商品を買う傾向がある。

また、未婚化や晩婚化、核家族化の進行で高齢単身世帯が増えている。現在、日本の世帯全体の3割強が単身世帯であり、そのうち3分の1が65歳以上だ(「平成27年国勢調査」)。高齢単身世帯の生活とコンビニは親和性が高い。コンビニでは小分けの惣菜や3枚入り食パンなどが売られ、商品単位が小さくなっている。また、自宅近くにも立地しており、遠くのスーパーへ行くよりも利便性が高い。なお、高齢単身世帯は都市部と比べて高齢化の進む地方部で多い。つまり、人手不足に悩む地域ほど、深夜営業の必要性は低下していると言える。

なお、コンビニは家事の時短化ニーズの強い共働き世帯の受け皿にもなっている。「女性の活躍推進」政策の後押しもあり、共働き世帯は今後も増えるだろう。また、現在、18歳未満の子どものいる世帯の約6割が共働きだ(厚生労働省「平成30年国民生活基礎調査」)。子どものいる共働き世帯のコンビニ利用は帰宅時の買出しなどが多いとすれば、深夜営業に対するニーズは強くない。

一方で、前述の通り、コンビニは24時間営業という利便性の高さを背景に発展してきた。よって、24時間営業をやめれば利便性が低下すると言う声もあるだろう。しかし、最近ではコンビニ以外でも利便性の高い代替手段が登場している。ネット通販では、商品を注文後、数時間で配送可能なサービスも増えている。よって、人手不足の中で、コンビニだけが24時間営業に固執して疲弊する必要はないのかもしれない。

ただし、特に高齢単身世帯の多い地方部では、コンビニの社会的なインフラ機能としての存在意義は大きい。24時間営業の店舗を全く無くしてしまうと、緊急時などの不安が高まる。そこで、地域の診療体制のように、コンビニ各社が持ち回りで24時間営業を担ってはどうだろうか。全ての店舗が24時間営業をする必要はないが、24時間営業をする店舗が1つでもあればインフラ機能を維持できる。また、少なくなっているとはいえゼロではない深夜需要を捉えることで、コンビニ側の売上げも担保できる。

なお、コンビニは24時間営業を前提として商品の製造や配送などの物流網が構築され、商品の陳列や清掃等の店舗運営がなされている。よって、営業時間が短縮されれば、それに合わせて配送や製造の時間帯も変える必要がある。配送時間帯が変わることで、配送ルートの変更なども必要になのかもしれない。人手不足を背景にしたコンビニの時短営業化の実施には、コンビニのビジネスモデルそのものの見直しが求められている。
 
4 久我尚子「コンビニは若者からシニアのものへ」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2018/9/13)
5 久我尚子「求められる氷河期世代の救済」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2019/07/02)や「平成における消費者の変容(3)経済不安でも満足度の高い若者」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2019/03/22)、「若年層の経済格差と家族形成格差」、基礎研レポート(2016/07/14)など。
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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

(2019年09月11日「基礎研レター」)

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【コンビニ24時間営業の是非-高齢化する来店客、持ち回り深夜営業でインフラ機能を維持しては】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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