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バイオシミラーの普及-薬剤費抑制のためには、どういう取り組みが必要か?
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
1――はじめに
ジェネリック医薬品と同様に、バイオ医薬品にもバイオシミラーという後続の低価格品があり、徐々に市場に出始めている。しかし、ジェネリック医薬品のようにスムーズに普及が進むとは限らない。
本稿では、バイオ医薬品やバイオシミラーの現状と、普及に向けた検討課題をみることとしたい。
2――バイオ医薬品とは
1|バイオ医薬品の製造には、微生物や動物細胞の機能が利用される
バイオ医薬品は、その名前が示すとおり、製造にバイオテクノロジーが用いられる。具体的には、微生物や動物細胞の機能を用いて、発酵、培養などにより製造したタンパク質を医薬品として用いる。近年、遺伝子組み換えや細胞培養などのバイオテクノロジーが進歩して、製造精度を向上させている。
ひとくちにバイオ医薬品といってもさまざまな種類があるが、大きくは、(1)補充療法に用いられる医薬品、(2)抗体医薬品、(3)その他(酵素やワクチンなど)に分けられる。
このうち、(1)は生体内のタンパク質を複製したり、改変したりしてつくられる薬であり、主に体内で不足する生理活性タンパク質を補う働きをする。たとえば、糖尿病に対するインスリン、血友病に対する血液凝固因子、腎性貧血に対するエリスロポエチンが補充療法の医薬品として挙げられる。
一方、(2)は免疫機構の抗体の構造を利用してつくられる薬であり、主に、病気に関連する分子の機能を阻害する働きをする。たとえば、抗リウマチ薬や、抗がん剤の免疫チェックポイント阻害薬などが抗体医薬品として挙げられる1。
1 抗リウマチ薬には抗TNF抗体。抗がん剤には抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体、抗HER2抗体などが利用される。
バイオ医薬品の特徴として、化学合成医薬品と比べて、分子量が非常に大きいことが挙げられる。同じ製法で製造しても、タンパク質の糖鎖構造などが完全に同じになるとは限らず、品質特性が不均一となる可能性がある。
また通常、バイオ医薬品は経口投与しても、体内の消化酵素の作用により分解されてしまう。すなわち、タンパク質構造が維持できず、薬効が発揮できない。そのため一般的に、注射剤として静脈、筋肉、皮下などに直接投与するか、もしくは点滴として静脈に投与する2。注射剤は、一般の人が用いる一般用医薬品としては適当ではないとされる。このため、バイオ医薬品はすべて、医師や歯科医師の処方箋が必要な医療用医薬品となっている。
2 現在のところ、注射剤ではないバイオ医薬品は、トラフェルミン噴霧剤(褥瘡(じょくそう)の薬)、トラフェルミン歯科溶液、ドルナーゼアルファ吸入液(嚢胞性線維症の肺機能改善薬)のみ。
バイオ医薬品は、微生物や動物細胞の機能を用いて、発酵、培養などにより製造されるため、培養棟など大がかりな製造設備を要する。また、製法の管理や、生成された成分の分析には、多くのデータが必要となる。このため、バイオ医薬品の製造には多額のコストがかかる。一方、つくられた医薬品は顕著な薬効を示すことが多い。こうしたことから、バイオ医薬品は薬価が高額となる傾向がある。
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
公式SNSアカウント
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