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- 外貨建て資産のパフォーマンス評価について-より良い投資選択をする方法-
2019年08月26日
日本では長期にわたり金利低下傾向が続き、ここ数年はほぼゼロ金利となり、株価も不安定であり、国内証券市場ではプラスの利回りの確保が困難になってきている。そこで外貨建て資産への投資で、何とかプラスのリターンを獲得しようと個人投資家も含め、年金基金や生命保険会社など、各投資家が相当な努力をしている。
そこで、外貨建て資産のパフォーマンス実績評価や今後の投資方針策定等にとって、必要不可欠なリターンの把握の仕方について、参考となる方法について紹介してみたい。
そこで、外貨建て資産のパフォーマンス実績評価や今後の投資方針策定等にとって、必要不可欠なリターンの把握の仕方について、参考となる方法について紹介してみたい。
1―― 外貨建て資産のリターンとは何か
2―― 外貨建て資産の外貨リターンと為替リターンに2つに分ける方法の欠点
以上のような分析や結論が、より明示的に簡単に出る方法がある。「期待リターンの大きさはリスクプレミアムで決まる」という考え方に基づく方法である。
外貨建てリターンを(1)外貨での資産リターンと(2)為替リターンの2つに分けるのではなく、
(1)外貨建て資産の外貨建てリスクプレミアム
(2)外貨建てリスクフリーレート+為替リターン ⇒ (2)が円換算のリスクフリーレート
の2つに分ける方法である。
なお、このケースではリスクフリーレートは各国預金金利としているが、投資期間によっては5年国債、10年国債の利回り等がリスクフリーレートとして使える。具体的に、先ほどの3つのケースを当てはめてみる。
日本株と米国株のリスクプレミアムは
外貨建てリターンを(1)外貨での資産リターンと(2)為替リターンの2つに分けるのではなく、
(1)外貨建て資産の外貨建てリスクプレミアム
(2)外貨建てリスクフリーレート+為替リターン ⇒ (2)が円換算のリスクフリーレート
の2つに分ける方法である。
なお、このケースではリスクフリーレートは各国預金金利としているが、投資期間によっては5年国債、10年国債の利回り等がリスクフリーレートとして使える。具体的に、先ほどの3つのケースを当てはめてみる。
日本株と米国株のリスクプレミアムは
もちろん、実際の投資に当たっては、流動性や手数料、タイミングやマーケットインパクト、法規制や投資制約等、多くの要素を考慮しなければならない。しかし基本となる外貨建て資産のリターンの分析においては、一般的な外貨建てのリターンと為替リターンに分解して検討する手法に加えて、以上のように、「(1)外貨建て資産の外貨建てリスクプレミアム、(2)外貨建てリスクフリーレート+為替リターンに分けて分析する」ことも有益ではないだろうか。
また、この考え方は、外貨建て資産の投資選択だけでなく、各種資産の組み合わせであるポートフォリオ組成やパフォーマンス分析を実施する際にも応用できる考え方でもある。では次に、アセットアロケーション策定での活用方法を見ていきたい。
また、この考え方は、外貨建て資産の投資選択だけでなく、各種資産の組み合わせであるポートフォリオ組成やパフォーマンス分析を実施する際にも応用できる考え方でもある。では次に、アセットアロケーション策定での活用方法を見ていきたい。
3―― アセットアロケーションでの活用方法
この【表3】を見ると、株式としては豪州、日本のリスクプレミアムが高く魅力的である一方で、一般的な見方で魅力的に見えた米国株はindexを下回るリスクプレミアムしかないことが分かる。
一方で、各国預金金利+為替リターン(円換算金利)では、ドイツおよび米国が魅力的であることが分かる。従って、株式としては日本株をオーバーウェイトし、米国株をアンダーウェイトする一方、円換算金利としては米国とドイツをオーバーウェイトし、日本、豪州をアンダーウェイトするのが良いのではないかという分析ができる。実際に【表2】を前提とした場合の各国株式と各国預金金利+為替の全ての組み合わせのリターンは以下の【表4】の通りとなる。具体的な計算としては、分かりやすさを優先し以下のように足し算で算出している。
外貨建て株式リターン+投資対象通貨金利-株式投資国通貨金利+為替リターン(円貨)
例えば、米国株式に投資+ドイツの預金に投資の場合、
米国株式リターン9.5%+ドイツ金利3.5%-米ドル金利5.0%+為替1.0%=9.0% となる。
なお、【表3】を用いるともっと簡単で
米国株式リスクプレミアム4.5%+ドイツの円金利換算4.5%=9.0% と計算できる。
一方で、各国預金金利+為替リターン(円換算金利)では、ドイツおよび米国が魅力的であることが分かる。従って、株式としては日本株をオーバーウェイトし、米国株をアンダーウェイトする一方、円換算金利としては米国とドイツをオーバーウェイトし、日本、豪州をアンダーウェイトするのが良いのではないかという分析ができる。実際に【表2】を前提とした場合の各国株式と各国預金金利+為替の全ての組み合わせのリターンは以下の【表4】の通りとなる。具体的な計算としては、分かりやすさを優先し以下のように足し算で算出している。
外貨建て株式リターン+投資対象通貨金利-株式投資国通貨金利+為替リターン(円貨)
例えば、米国株式に投資+ドイツの預金に投資の場合、
米国株式リターン9.5%+ドイツ金利3.5%-米ドル金利5.0%+為替1.0%=9.0% となる。
なお、【表3】を用いるともっと簡単で
米国株式リスクプレミアム4.5%+ドイツの円金利換算4.5%=9.0% と計算できる。
この【表4】と【表3】を見ると、オーバーウェイトすべきなのは、株式では各国通貨ごとに見ると、やはり日本株と豪州株、通貨では米ドルとユーロではないかということになるのではないだろうか。このように各国株式のアロケーションは現地通貨ベースの株式リスクプレミアムに注目して行い、それを踏まえて為替オーバーレイを検討するという方法が有効と考えられる。
次に同じ具体例を用いて、パフォーマンス計測がどうなるかを見てみたい。
次に同じ具体例を用いて、パフォーマンス計測がどうなるかを見てみたい。
(2019年08月26日「基礎研レポート」)
安孫子 佳弘
研究・専門分野
安孫子 佳弘のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2022/01/14 | 投資リターンの正しい見方とは-プラスのリターンとマイナスのリターンは重みが違う | 安孫子 佳弘 | 研究員の眼 |
2021/09/10 | 上場会社にとってESGのGとは何か、目的は達成できているか-企業価値の向上を株式評価モデルで考える- | 安孫子 佳弘 | 基礎研レポート |
2019/09/24 | ファイナンスの世界での様々なファンタジー~精緻な理論の本当の実力~ | 安孫子 佳弘 | 研究員の眼 |
2019/08/26 | 外貨建て資産のパフォーマンス評価について-より良い投資選択をする方法- | 安孫子 佳弘 | 基礎研レポート |
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