2019年08月06日

オフィス市況は好調維持。REIT市場は年初来高値圏で推移-不動産クォータリー・レビュー2019年第2四半期

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

文字サイズ

4. J -REIT(不動産投信)市場

2019年6月末の東証REIT指数(配当除き)は、3月末比1.6%上昇しTOPIX(▲2.5%下落)の収益率を3四半期連続で上回った。セクター別では、商業・物流等が2.8%、住宅が1.8%、オフィスが0.7%の上昇となった(図表-18)。6月末時点のバリュエーションは、純資産9.9兆円に保有物件の含み益3.2兆円を加えた13.1兆円に対して時価総額は14.5兆円でNAV倍率は1.1倍、分配金利回りは3.9%、10年国債利回りとのスプレッドは4.0%となっている。
図表-18 東証REIT指数(配当除き、2018年12月末=100)
J-REITによる第2四半期の物件取得額(引渡しベース)は4,525億円(前年同期比+42%)、上期累計で8,954億円(▲13%)となった(図表-19)。不動産売買市場では依然として物件の品薄感が強いなか、第2四半期は物流施設やホテルを中心にスポンサーからの取得が大幅に増加した。なお、アセットタイプ別の取得割合(上期累計)は、オフィス(30%)、物流施設(24%)、ホテル(15%)、商業(11%)、底地など(10%)、住宅(9%)の順となっている。
図表-19 J-REITによる物件取得額(四半期毎)
7月に入り東証REIT指数は一段と上昇し、7/11には節目となる2,000ポイントの大台を2007年12月以来、11年7カ月ぶりに回復した。現在のマーケット環境について、(1)前回の不動産ミニバブル期で初めて2,000を突破した局面(2007年1月)、(2)アベノミクス相場で直近高値1,990を付けた局面(2015年1月)と比較すると、今回の上昇スピードは過去と比べて緩やかなため過熱感に乏しく、先高期待はなお強い(図表―20)。足もとの市場ファンダメンタルズも良好で、分配金水準は賃料収入の増加や金融コストの減少などにより、(1)及び(2)の各時点を12%、31%上回る。また、NAV(ネット・アセット・バリュー、純資産価値)についても不動産価格の上昇によりそれぞれ28%、43%増加し資産価値が高まっている。この結果、現在のバリュエーションは分配金利回りで3.7%、NAV倍率で1.2倍となり、これまでの上昇局面と比較して割高感は強まっていない。さらに、10年金利がマイナス圏で推移するなかイールドスプレッドは3.9%と高い水準で、利回り指標の面から上値の余地があると言えそうだ。

もっとも、東証REIT指数が大台を突破したことで今後は値動きが激しくなり市場のボラティリティが高まる可能性がある。前回の不動産ミニバブル期ではその後5ケ月で一気に30%も上昇し天井を形成した。株式市場の動向やグローバル景気の減速など外部環境に不透明感もあり、今後は市場ファンダメンタルズに沿った落ち着いた展開が望まれる。
図表-20 過去の上昇局面との比較(2019年7月末時点)
 
 

(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2019年08月06日「不動産投資レポート」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【オフィス市況は好調維持。REIT市場は年初来高値圏で推移-不動産クォータリー・レビュー2019年第2四半期】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

オフィス市況は好調維持。REIT市場は年初来高値圏で推移-不動産クォータリー・レビュー2019年第2四半期のレポート Topへ