コラム
2019年07月31日

あい次ぐ異常気象~まず簡単にできることからはじめよう~

客員研究員   櫨(はじ) 浩一

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1――あい次ぐ異常気象

欧州の6月は暑すぎず爽やかな季節で旅行にはベストシーズン、というのは旅行会社の宣伝で良く見る文句だ。しかし、今年は6月下旬に熱波が襲ったため、これまで夏でもエアコンなど必要としなかった欧州の国々でも猛暑に苦しんでいると聞いて驚いた。ところが7月下旬もまた、欧州で過去最高気温を記録しているというニュースが連日報道されている。日本でも、ここ数年あちこちで記録的な豪雨が発生し多くの人命を奪った。今年もまた、各地で「これまで経験したことがない」と言われるような豪雨が発生している。このようにめったに起こらないことが偶然続く確率は低く、むしろ地球規模で気候に大きな変化が起こっていて、かつてはめったに起こらず異常だったことが、頻繁に起こる普通のことになっている可能性の方が高いだろう。

少し前の政府文書にも、こうした異常気象は地球温暖化のためで、日本では大雨の発生数が長期的に増加傾向にあって、「地球温暖化が今後進行した場合、さらに大雨の発生数は増加すると予測されます」という記述があった。(注)

日本では地球温暖化問題に対して欧州ほど危機意識が高まっていない。日本の夏は高温多湿だが冬はかなり寒いため、家屋は多少の暑さ寒さには対処できるようにできている。こうしたことも、その原因の一つかも知れない。

(注)平成17年度「国土交通白書」第Ⅰ部、コラム「地球温暖化と大雨、台風の関係」

2――不確実の中での意思決定

地球が温暖化しているという説に疑問を呈する人も少なからずいるのは確かだ。6月に大阪で開催されたG20でも環境問題は大きなテーマとなったが、トランプ米大統領は気候変動に否定的だった。今年の1月に米国北西部などを激しい寒波が襲った際に、「温暖化は一体どうなっているんだ」とツイートし皮肉ったとも伝えられている。日本でも7月末になって急に暑くなったが、それまでは関東甲信越を中心に異常な日照不足で肌寒い日が続き、地球は温暖化していないではないかと思えるほどだった。

多くの科学者が温室効果ガスの発生が地球温暖化の最大の要因だと判断しているとされるが、これに疑問を呈する科学者はいる。実験や観測できちんとした証拠を示せば全ての人を納得させられると考えるのは楽観的過ぎる。めったに起こらないことが続けて起こる可能性はゼロではないので、誰もが温室効果ガスによって地球の気候が大きな影響を受けていると考えるようになるまでには長い時間が掛かってしまう恐れがあるだろう。

もしも、省エネルギーや再生エネルギーへの転換に多大な労力を注ぎ込んだものの、後々温室効果ガス主因説が間違っていたことが判明すれば、多くの努力は無駄になる。しかし、我々が気候変動への対策を十分に行わなかったが、やはり温室効果ガス主因説は正しかったということになった時には、地球の環境が既に簡単には修復できない状態になっていて、我々の子孫は大変な苦しみを味わうことになるかも知れない。そのようなことがないように、無駄な努力に終わる可能性があるとしても温室効果ガスを削減するというのは、ごく常識的な判断ではないだろうか。

3――進んでいない日本の対応

2004年にノーベル平和賞を受賞した、ワンガリ・マータイさんが、「もったいない」という日本語に感銘を受けたという逸話は良く知られている。天然資源に恵まれずに輸入に頼ってきたので、マスコミの報道などでも日本は資源を大切にする国だという論調を良くみかける。GDPを生み出すために必要なエネルギーという視点から見れば、日本は多くの国の中で相対的に効率の良い経済であることも確かだ。

しかしこうした主張は、貧しい国々の立場からは、効率の良い先進諸国が大量のエネルギーを使い続けることを正当化するための論法にしか見えない。実際のところ、例えば国民一人当たりの使用量という尺度でみれば、豊かな先進諸国の国民が貧しい発展途上国に比べて多くのエネルギーや天然資源を使っている。地球の環境を守りながら、貧しい発展途上国の人達がより豊かな生活を実現する余地を作るためには、豊かな先進諸国が温室効果ガスの排出を大幅に減少させる必要がある。
日本の二酸化炭素排出量 日本では東日本大震災で起きた電力不足を契機に、電力消費量の少ないLED照明への転換が進むなど一段と省エネルギー化が進んだ。しかし、この一方では石炭火力発電所の増加が続いたため、日本の非化石電源比率は2010年度の36%から2013年度には12%にまで低下した。こうした事情もあって、主要な温室効果ガスである二酸化炭素の日本の排出量は、京都議定書で基準年とされている1990年度からほとんど減少しておらず、人口一人当たりでみれば、むしろ増加している状況だ。特に家庭の利用のために発生した二酸化炭素は、1990年度に比べて2017年度は約2割も増加している。

二度にわたる石油危機では日本社会は優れた対応をみせたし、東日本大震災直後の電力不足に対しても、駅や鉄道の照明が間引きされて少し心細い思いをしたが、国民の協力によって大きな混乱なく乗り切ることができた。地球環境問題への対応でも、政府が中心となって大きな方針を示せば、再び日本社会は難題を解決していけると筆者は信じている。

地球環境問題への対応は長期戦であり、いきなり生活を大きく変えようとしたり、無理をしたりすると長続きせず失敗してしまう。大きなことをしようとするよりも、とにかくまず何か行動することが大切だ。日常生活で不必要なエネルギー消費を抑えるために、灯りをこまめに消すなど簡単にできることからはじめようではないか。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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客員研究員

櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

研究・専門分野

(2019年07月31日「エコノミストの眼」)

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