コラム
2011年04月14日

東日本大震災と東京・大阪二眼レフ論

櫨(はじ) 浩一

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1.復興に必要なビジョン

東日本大震災から一ヶ月が過ぎたが、未だに被災地では多数の行方不明者の捜索が続いており、十数万人の方々が厳しい避難生活を送っている。多くの人命が奪われ、物的にも甚大な被害を受けた。被災地の皆様には、心からお見舞いを申し上げたい。福島第一原子力発電所では、過酷な状況下で関係者が懸命の努力を続けていることにも、頭が下がる思いだ。被災地及び日本の復興には長く粘り強い努力が必要であり、これをうまく進めるためには大きなビジョンが求められる。
   2007年に起きた中越沖地震に際して筆者が書いた、「中越沖地震の影響~首都圏直下型地震に大阪の予備機能を 」(当コラム2007/07/30号 )をもう一度お読み頂きたい。この一文は首都圏直下型地震を想定して書いたもので、今回のような東日本の広域的な電力不足のような事態を予測していた訳ではない。しかし、万一首都圏の機能が著しく低下した場合のバックアップを、東京からある程度離れたところに用意しておくべきではないかという考えを、今回の大震災からの復興計画では是非検討して欲しいものだと思う。


2.無駄と必要なコスト

災害に対処する際の考え方として、人間の脳が固い頭蓋骨で守られているように重要な部分に対する防御を強固にして守るという方法と、万一災害に会って機能が失われた場合のスペアを予め用意するという方法とがある。人間の臓器の多くは一対になっていて、一つだけでも生命を維持できるようになっている。もっとも脳や心臓などは一つしかないので、同じものを二つ持つことには問題もあるだろう。もしも脳が二つあったらどちらの指令に従うべきかで混乱する恐れはあるが、通常用と非常用を使い分けることは可能だ。
   起こる可能性の低いことに備えるのは一見非効率でムダにも見えるが、可能性は低くとも甚大な影響が出てしまうならば、それに備えることは必要なコストである。非効率なものを何でも無駄と言って切り捨ててしまうことは簡単だが、無駄と必要なコストとを見分けることは容易ではない。しかしそれが管理者や経営者、政治家といった組織のリーダーに求められることだ。


3.「復旧」ではなくより良い日本の建設を

今はまだ、日々の生活もままならない被災者の方々の状況の改善や、原子力発電所の問題を終息させる道筋を付けることの方が優先課題だ。しかしこの先のステップとして復興プランを検討する際には、単なる「復旧」ではなくより良い日本を建設するプランを検討して欲しいものだ。
   それは今回津波にあった地域の市街地を高台に移すというような被災地に関するプランだけではなく、日本全体をより災害に強い社会にするためのものであるべきだ。大阪に政府の機能を維持するための用意をしておくべきであるというだけではく、個々の企業も事業継続計画(Business Continuity Plan、 BCP)の一つの項目としてバックアップ機能をもう一度見直す必要があるだろう。

(2011年04月14日「エコノミストの眼」)

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