2019年07月09日

欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-

文字サイズ

続いて、長期保証措置のうちのマッチング調整に関しては、概ね以下の内容等が記載されている。
・マッチング調整の説明
・適用会社及び適用ポートフォリオとマッチング調整の水準
・対象となる資産の説明
・内部再保険における考え方
・適用による影響

D.2.2.3 経済的前提
b)マッチング調整
Avivaは、UK Life and AII(F.4項参照)の特定の負債にマッチング調整(MA)を適用する。マッチング調整は、キャッシュフローが比較的固定されており(例えば、将来の保険料や解約リスクがない)、満期まで保有する予定で、相対的に固定されたキャッシュフローを有している資産と十分にマッチしている保険負債を評価するためのリスクフリーレートを増加させる。その意図は、満期まで保有される場合、会社は非流動性リスクに関連しているこれらの資産に対して、追加の利回りを得ることができるということである。

グループ方法論
内部再保険者が(自らの留保リスクに関して)受け取ったMA利益は、グループの貸借対照表に保存される。AII MA利益の価値を反映するために、当グループの連結最良推定負債に対して調整が行われる。UKLAP MAの目的上、グループの連結最良推定負債を準備する際に、内部持分発行証券化は消失しないと仮定されている。

2018年12月31日に使用されたマッチング調整は下表の通りである。



対象となる資産
・エクイティリリース住宅ローン資産は、そのような資産が内部SPVに証券化され、それらの資産で担保された固定クーポン券をMAのポートフォリオの保険事業に発行する場合の包含基準を満たしている(UKLAPの場合)。このような再編の前は、持分払い戻し抵当資産は算入基準を満たしていない。このようにして再編された株式公開モーゲージ資産は、IFRSの認識中止基準を満たしていないため、内部の証券化が行われていないと仮定してソルベンシーIIの貸借対照表で測定される。

・商業用不動産ローンやMAに含めるのに適した株式公開住宅ローン資産のような外部格付けを持たない資産は、当社の資産運用会社による内部信用格付けに基づいて基本スプレッド(デフォルト及び格下げによる予想損失を表す)が割り当てられる。内部格付方法論の枠組みに従って(C.3.1(未監査)を参照)。

内部再保険
AIIは、後者から前者に出再された契約について、UKLAPについて計算されたものと同一のMAを使用する。これは、2つの事業体間の割当株式割当が同一の適格資産及び負債プロファイルを確実にするように設定されるためである。これらの出再された負債に関連するUKLAPで再保険回収額は、MAなしの基本的なリスクフリー金利期間構造を使用して測定される。一貫性を保つために、AIIにおける再保険の最良推定負債総額は、ポートフォリオ内の全ての資産の利回りから決定されるMAを使用して測定される。再保険回収額に関連するポートフォリオの部分は、ゼロのリスク調整後スプレッド(すなわち、ゼロのMA)を有する。

(以下、省略)

さらに、長期保証措置のうちのボラティリティ調整に関しては、概ね以下の内容等が記載されている。
・ボラティリティ調整の説明
・適用会社
・通貨毎のVAの水準
・適用による影響

c)ボラティリティ調整
ボラティリティ調整(VA)は、市場における流動性の低下又は信用スプレッドの極端な拡大、特に国債に関連するスプレッドの一時的な歪みを反映することを意図している。VAはEIOPAによって規定され、ウェブサイト上の基本的なリスクフリー金利曲線と共に公開されている。

英国では、PRAは、UKLAP、Aviva Insurance Limited(AIL)(損害保険業務)及びAII(生命保険及び損害保険業務)(セクションF.4参照)に適用される申請を承認した。当グループの英国以外の重要な欧州経済圏(EEA)(フランス、アイルランド、イタリア、ポーランド)では、VA適用の申請を要求されないフランスとイタリアで適用される。該当する場合、VAは、承認された申請に沿って、VAが適用されないUK Lifeにおけるユニットリンク契約を除いて、MAが適用されない全ての負債に適用される。各通貨のVAは、欧州委員会実施規則参照2019/228に記載されているとおり、以下の表に記載されている。トルコ、シンガポール、中国、香港及びインドでは、EIOPAによってVAが提供されておらず、VAが適用されていない。



長期保証及び移行措置の影響は、段階的アプローチを用いてQRT S.22.01.22(セクションF.2参照)に開示されている。 ボラティリティ調整をゼロに設定することによる影響の定量化は、移行期間の削除後に行われることに注意する必要がある。

実際には、VAの撤廃により技術的準備金に対する移行救済が増加するため(移行救済の承認を得ている当グループの事業体にとって)影響はより低くなる可能性がある。

(以下、省略)

 

3―SCRとMCRの計算方法の説明

3―SCRとMCRの計算方法の説明

各社とも、「E.2 Solvency Capital Requirement and Minimum Capital Requirement(E.2ソルベンシー資本要件と最低資本要件)」において、SCRとMCRの計算方法の概要を説明している。

1|SCRMCRの計算方法の説明概要
以下では、この項目に関しての記述内容が相対的に充実しているAXA、Prudential、Aegonの3社についての説明概要を報告する。
(1)AXA 
AXAのSCRとMCRの計算方法の説明(の一部)は、以下の通りとなっている。

SCRとMCRを計算するために、内部モデルの使用や米国等での同等性評価、さらには非保険部門については部門別ルールに基づいていることを説明している。これにより、AXAのグループSCRのうち、グループ全体でみると、66%が内部モデル、4%が標準式、25%が同等性、6%が銀行・資産運用会社、年金基金等の他の規制基準の適用に基づくものとなっている。2017年と比べて、XL Group(Bermuda)の影響により、同等性による割合が高くなって、内部モデルによる割合が低下している。

なお、グループのSCRの計算において、XL Groupについては、現在はバミューダの標準式SCRに基づいて、同等性に従って評価されているが、2019年はソルベンシーIIの標準式で、早ければ2020年にも内部モデルで算出する意向を示している。

また、内部モデルの使用に関しては、「内部モデルは、AXAの会社が、ローカルリスクプロファイルをよりよく反映するローカルキャリブレーションを選択し、グループがさらされている全ての重要なリスクを捉えることができるように設計されている。結果として、AXAグループは、内部モデルは、AXAグループ全体のSCRをより忠実に反映し、SCRメトリクスが経営陣の意思決定とより整合的になると考えている。」と説明している。

さらに、グループの分散化効果について、例えば、「内部モデルでは、主要なリスクカテゴリ(市場、信用、生命、損害、オペレーショナルリスク)全体にわたる集計と、地理/会社間の集計という、主な集計ステップを考慮したマルチレベル集計アプローチが実施されている。」と説明している。

E.2ソルベンシー資本要件(SCR)と最低資本要件(MCR
当グループは、2015年11月17日、ソルベンシーIIのSCRを計算するために内部モデルを使用することについてACPR(フランスの監督当局)と監督カレッジからの承認を受けた。内部モデルは、同等とみなされるAXA US及び2018年に取得した以前はXL Groupの一部であった会社(XL事業体)を除く、全ての重要な会社に対するAXAグループの経済資本モデルの使用を包含している。2018年12月31日現在、XL Groupの一部であった会社に対するSCRは、グループは、バミューダの標準式SCRに基づいて、同等性制度に従って計算されるものに加えて、移行措置として、グループの主たる監督者(すなわちACPR)によって要求される5%のアドオンで計算される。さらに、ACPRの決定に従い、2019年3月31日から、XL事業体は(ソルベンシーII指令で規定された連結手法に従って)ソルベンシーIIの目的のために完全に連結され、グループのソルベンシー資本要件への貢献はソルベンシーIIの標準式を使用して計算される。ACPRの事前承認を条件として、当グループは、早ければ2020年にも、その内部モデルをXL事業体に拡大する予定である。内部モデルは、AXAの会社が、ローカルリスクプロファイルをよりよく反映するローカルキャリブレーションを選択し、グループがさらされている全ての重要なリスクを捉えることができるように設計されている。結果として、AXAグループは、内部モデルは、AXAグループ全体のSCRをより忠実に反映し、SCRメトリクスが経営陣の意思決定とより整合的になると考えている。

一般原則
ソルベンシーIIは、2つの異なるレベルのソルベンシー資本要件を規定している。(I)最低資本要件(MCR)。会社レベルで適用され、保険契約者や受益者が許容できないレベルのリスクにさらされる自己資本の額である。(II)ソルベンシー資本要件(SCR)。これは会社及びグループの両方のレベルで適用され、保険及び再保険会社が多額の損失を吸収することを可能にする適格自己資本のレベルに相当する。 それは、支払が期日までに行われるという保険契約者及び受益者への合理的な保証を与える。

規則の第297条-(2)に従い、フランスの全てのSFCR申告者について、ACPRは2020年12月31日までに終了する移行期間中に資本の追加項目の開示を要求しないことを選択した。

ソルベンシー資本要件(SCR
2019年2月21日に公表された2018年12月31日現在のAXAグループのソルベンシーII比率は193%であり、AXAの目標170%~220%の範囲内にとどまっている。グループは、2018年の全ての時点でSCRを超過する適格自己資本を維持した。

当グループは、内部モデルの範囲、基礎となる方法論及び前提条件を定期的に見直し続け、それに応じてSCRを調整する。しかしながら、内部モデルの大きな変更は、SCRの水準を調整することを求めるかもしれないACPRによって承認されなければならない。

2018年にモデル変更方針に関する重要なモデル変更がACPRに提出され承認を受けた。内部モデルの境界は、(2017年のAXA Global Lifeとの合併後)AXA Global Reが負担するLifeリスクまで拡張され、その後、正式な申請と監督当局による承認の後、2018年12月31日に内部モデルに導入された。

さらに、当グループは、その目的を通じて欧州保険会社のモデルの一貫性の見直しを行うことが期待されているEIOPA(欧州保険年金監督局)の作業計画を監視している。そのような見直しが、コンバージェンスを高め、国境を越えたグループの監督を強化するための規制改正につながる可能性がある。

2018年12月31日現在で、AXAのグループSCRは302億ユーロで、内部モデル範囲(199億ユーロ)、標準式会社(11億ユーロ)、同等性による会社(74億ユーロ)、部門別ルール (年金事業、銀行、資産運用)(18億ユーロ)という異なる要素に分割される。AXAグループSCRに関する追加情報については、QRT S.25.02.22「ソルベンシー資本要件- 標準式及び部分内部モデルを使用するグループのための」を参照のこと。

2017年に比べて、AXAのグループSCRは282億ユーロから302億ユーロに増加した。この進展は以下の理由による。

・株式市場の低迷による経済的要因により当社の株式エクスポージャーが減少した。
・経営行動により売上高及びヘッジが開始され、以前の経済的影響と相まって、これにより株式エクスポージャー、したがって市場リスクが大幅に減少した。
・主な影響は、同等性によるXLの包含が、米国の子会社の新規株式公開(IPO)により一部相殺されていることによる。

2018年12月31日現在、SCRのリスクカテゴリによる内訳は、市場リスク41%、生命保険26%、損害保険20%、信用リスク7%、オペレーショナルリスク6%となっている。

グループ分散効果
内部モデルの分散効果は、異なるリスク/サブリスク又は異なるポートフォリオ/会社への集計方法の適用によって駆動される。したがって、分散効果は、特定のリスク要因の範囲内、ポートフォリオ間、地域間又は異なるリスクカテゴリ間で現れる。

一例として、デュレーションギャップは、例えば、保障商品のための長い期間と年金のための短い期間のように、異なるポートフォリオに対して異なる符号を有することができる。このような場合、2つのポートフォリオを組み合わせると金利リスクが低下する。

リスク集計アプローチ内の細かさのレベルは、分散効果の測定に影響する主要な要因である。典型的には、集計アプローチが、地理、事業単位/法人レベル、リスクタイプ、商品タイプなどの次元に応じて、ポートフォリオや活動を区別するほど、より明示的な分散効果が明らかになる。内部モデルでは、主要なリスクカテゴリ(市場、信用、生命、損害、オペレーショナルリスク)全体にわたる集計と、地理/会社間の集計という、主な集計ステップを考慮したマルチレベル集計アプローチが実施されている。

2018年12月31日現在の主要なリスク(市場、信用、生命、オペレーショナル)における分散効果は103億ユーロであった。

範囲と計算方法
以下の表は、グループSCRを計算するために使用される内部モデルの範囲内にある会社を一覧表にしたものである。

(表については省略)

グループ内で、指令2009/138 / ECの第230条及び第233条で言及されている方法1(デフォルト法)と方法2(控除合算法)の組み合わせを使用して、グループ・ソルベンシーが計算される。方法2を用いる会社は、銀行、資産運用会社、年金基金を中心とした保険以外の金融部門やソルベンシー制度が同等とみなされている米国又はバミューダの子会社に関連している。 関連する主要な会社は以下の表に要約されている。

(表については省略)

Xでシェアする Facebookでシェアする

中村 亮一

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-のレポート Topへ