2019年05月10日

米金融政策見通しと注目点-当面は様子見も、当研究所のメインシナリオは次の政策金利変更が「利上げ」との見通しを維持

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. FRBは18年に4回政策金利の引き上げを行った後、19年に入ってからは政策金利を据え置いている。直近5月のFOMC会合でも、当面は政策金利に関する意思決定を先延ばしする方針が確認された。実際にFOMC参加者の政策金利見通し(中央値)は、19年内の政策金利が据え置きとなっている。
     
  2. FRBは金融政策の意思決定を先延ばしする理由として、欧州や中国を中心に海外経済の減速懸念、通商政策などの国内政治の不透明感、金融環境の引き締り、などの米経済に対するリスク要因を挙げたほか、インフレ率が目標水準を下回り物価上昇圧力が抑制されていることを指摘している。
     
  3. 一方、足元で米国の堅調な経済指標が増えているほか、FRBの金融政策目標の達成状況からは、金融市場が織り込むような政策金利を引き下げる状況ではないとみられる。
     
  4. 当研究所は、海外経済の大幅な減速や、米中貿易戦争の小康、資本市場の安定を前提に次の政策金利変更は利下げではなく、利上げとの予想を維持している。もっとも、足元で米中貿易戦争の激化懸念が再浮上しているほか、FRB理事の人事も含めて利下げに対する政治的な圧力が高まっているため、利上げのハードルは上がっている。
(図表1)政策金利およびPCE価格指数、失業率
■目次

1.はじめに
2.金融政策の正常化と当面の様子見姿勢への転換
  ・(金融政策の正常化)
   :政策金利は15年12月、バランスシートは17年10月から正常化を開始
  ・(金融政策スタンスの変更):19年入り後、金融政策の正常化スタンスが後退
  ・(5月FOMCの振り返り):当面の政策金利据え置き方針を確認
3.金融政策見通し
  ・(金融市場の織込み):年内の利下げ織込みが6割程度
  ・(金融政策目標達成状況)
   :「雇用の最大化」目標はほぼ達成、今後のインフレ動向が鍵
  ・(政治圧力):FRB理事の人選も含めて利下げ圧力がかかる見通し
  ・(金融政策見通し)
   :当研究所は19年の追加利上げを予想。ただし、利上げのハードルは高い
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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