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貯蓄額よりも貯蓄率-リタイアメント・リスクについて考える

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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同センターの報告1によると、1983年におけるNRRIが31%であったのに対し、2016年におけるNRRIは50%にまで上昇している。つまり、2016年において米国の勤労者世帯の半数は、退職後に生活水準を大きく落とさざるを得ない状況に陥っていると言い換えることができる。
生活水準の低下をリスクと捉えている点が興味深い。同センターは、世帯収入に応じて世帯を3分割し、グループ別の退職後に生活水準を大きく落とさざるを得ない状況に陥っている世帯の割合も公表している。その割合は、世帯収入が高いグループから順に、41%、54%、56%(2016年時点)である。世帯年収が低いほどこの割合が高いことは想定の範囲内であろうが、世帯収入が最も高いグループの割合の高さ(41%)は意外ではないだろうか。
様々な媒体で老後に備え用意すべき金額の目安を眼にするが、これは概して平均的な高齢世帯の生活を送るために必要な金額である。貯蓄額が目安より少なくても、退職前から慎ましい生活をしている世帯なら問題ないが、逆に貯蓄額が目安より多くても、豪勢な生活をしている世帯のリスクは高い。これは、生活水準の低下をリスクと捉えているからである。NRRIが定義するリスクを前提にすると、リタイアメント・リスク軽減のためには収入の一定割合を貯蓄に回すことが必要である。つまり、金額が多い、少ないという貯蓄額よりも、収入に対する貯蓄の割合である貯蓄率が重要となるのではないだろうか。
1 Center for Retirement Research at Boston College (2006)” Retirements at Risk : A New National Retirement Risk Index”
Center for Retirement Research at Boston College (2018)” National Retirement Risk Index Shows Modest Improvement In 2016”
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年03月18日「研究員の眼」)
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
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