- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 社会保障制度 >
- アジアの社会保障制度 >
- 韓国の貧富の格差がさらに拡大―持てる者(5大財閥グループ)の土地資産は急増、持たざる者(所得下位20%世帯)の所得は大きく減少―
韓国の貧富の格差がさらに拡大―持てる者(5大財閥グループ)の土地資産は急増、持たざる者(所得下位20%世帯)の所得は大きく減少―

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1――5大財閥グループの土地資産は急増
記者会見で発表された調査結果によると、5大グループが保有している土地の帳簿価格は2007年の23.9兆ウォンから2017年には67.5兆ウォンに43.6兆ウォンも増加していることが明らかになった。10年間の増加額を財閥グループ別に見ると、現在自動車が19.4兆ウォンで最も多く、次いでサムスン(8.4兆ウォン)、SK(7.1兆ウォン)、LG(4.8兆ウォン)、ロッテ(4.0兆ウォン)の順であった。
経実連は、「5大グループが不動産投機による不労所得を狙って業務及び事業向けの土地ではない、非業務用土地を保有しているにも関わらず、韓国政府がこれを放置した結果、不動産バブルが大きくなりマンションの価格と賃料の上昇につながっている。過去90年代の盧泰愚元大統領2、金泳三元大統領3時代には非業務用の不動産に対して高い税率を適用する措置と、非業無用土地などの不動産を強制的に売却させる措置等を行うことにより財閥を中心とした企業の不動産投機を防いだものの、2000年と2007年に不動産関連規制を緩和したことにより、過去の規制は効力を失うことになったためである」と説明した。また、「韓国社会の不平等や格差を減らすためには、公共財である土地を利潤追求の手段として利用する行為を防ぎ、不労所得を返還させる制度が必要である」と主張した。
経実連は、「財閥企業の土地取得とそれによる不労所得の発生を最大限抑制するためには、会計基準を変更し、すべての外部監査法の対象企業に適用する必要がある」と主張した。また、優先的に「公示対象企業集団(2018年現在、資産総額が5兆ウォン以上である60大企業(所属会社2,083社))が保有している不動産(土地と建物)の所在地、面積、帳簿価額、公示地価などを義務的に公示させ、株主や投資家の国民が財閥企業の土地と不動産の保有実態を把握できるシステムを構築しなければならない」と提案した。
1 本稿は、金 明中(2019)「曲がり角の韓国経済(41)5大財閥グループの土地資産が急増」東洋経済日報 2019 年 3 月 1 日3 面を加筆・修正したものである。
2 大統領任期: 1988年2月25日 - 1993年2月25日
3 大統領任期: 1993年2月25日 - 1998年2月25日
2――所得下位20%世帯の所得は大きく減少
このように所得下位20%世帯の所得が減少したことに比べて、所得上位 20%世帯の所得は増加したことにより、所得上位 20%世帯の所得が所得下位20%よりどのぐらい高いかを示す所得5分位倍率(均等化処分可能所得)は5.47倍に拡大した。2003年に関連統計が作成された以降、第4四半期基準では最大値だそうだ。
3――結びに代えて
(2019年03月14日「基礎研レター」)

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/15 | 韓国は少子化とどう闘うのか-自治体と企業の挑戦- | 金 明中 | 研究員の眼 |
2025/03/31 | 日本における在職老齢年金に関する考察-在職老齢年金制度の制度変化と今後のあり方- | 金 明中 | 基礎研レポート |
2025/03/28 | 韓国における最低賃金制度の変遷と最近の議論について | 金 明中 | 基礎研レポート |
2025/03/18 | グリーン車から考える日本の格差-より多くの人が快適さを享受できる社会へ- | 金 明中 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【韓国の貧富の格差がさらに拡大―持てる者(5大財閥グループ)の土地資産は急増、持たざる者(所得下位20%世帯)の所得は大きく減少―】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
韓国の貧富の格差がさらに拡大―持てる者(5大財閥グループ)の土地資産は急増、持たざる者(所得下位20%世帯)の所得は大きく減少―のレポート Topへ