コラム
2019年03月13日

公共施設のシェア利用

社会研究部 都市政策シニアリサーチャー・ジェロントロジー推進室兼任   塩澤 誠一郎

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いつも通勤途中に横切る公園で、キャッチボールをする親子が目に入った。冬休みに入り、お父さんも休みが取れたのだろう。親子で楽しそうにボールを投げ合う姿は微笑ましく、通りかかった者の気持ちを和ませてくれた。子どもはまだ手元がおぼつかなくて、父親はどこに飛んでいくかわからないボールに注意を向けていた。

キャッチボールをするには、周囲に気を配る必要がある広さのこの場所、実は公園自体は広い。この脇にはネットがあり、ネットの向こうには広々とした空間がある。何だと思われるだろうか?実は野球場である。

誰も利用していない公設野球場の周囲で、親子は周りを気にしながらキャッチボールをしていたのだ。野球場であればもっとのびのび楽しめるだろう。

親子も野球場を利用すればよいと思われるかもしれない。しかし、野球場は有料の貸し出し施設である。借りられる時間帯も決まっていて、その間借りた者が占有して利用することを前提としている。親子でキャッチボールをするのに料金を支払って、本格的な野球場全体を占有してまでしようと思わないのが普通だ。

だが、今この時間に野球場を利用している者はいない。だとしたら、誰でもキャッチボールできるように開放したらよいのではないか。つまり占有利用する者がいない間、空間をシェアするのだ。キャッチボールをする者、バントの練習をする者、プロの連携プレーを真似する者などが一緒にいてよい。皆、同じ野球を目的に集うので、お互いの行動に配慮し合うはずだ。そして、そこに野球を迷惑がる人はいない。人数が揃えば即席でチームを作ってゲームが始まるかもしれない。

借りる者がいないからといって閉め切りにしておくよりよっぽど、公共空間の有効活用になる。市民の福祉を増進させるという公の施設の目的にも、その方がよほど叶う。

料金を支払って利用する人との間に不公平が生じるという見方があるかもしれない。それなら維持管理に必要な最低限の料金を徴収してもよいだろう。それより、誰も利用していなくても維持管理コストが発生し続けていることを放置しておくことの方が問題ではないか。

ここでは野球場の例を出したが、こうしたことは、公共施設全般に当てはまる。本来公の施設は、市民誰もが利用してよいもののはずである。有料にしても無料にしても、占有利用を前提にした貸し出し方法しか設けず、借り手がいなければ閉め切りにしておくのはあまりにもったいない。

それよりもシェア利用を前提にして、通常は開放しておき、占有利用したい場合に事前に申し込んで、相応の占有料を支払ってもらうという運用の方が効率的で無駄がないのではないか。あの親子のような潜在ニーズを呼び起こすことにつながるはずだ。

現在、公共施設の老朽化対策として施設の再編や適正管理に全国の自治体が取り組んでいる。それは必要なことなのだが、そもそものところで工夫する余地がもっとあると思われる。そしてそれは、それほど難しいことではないのではないか。そうすればもっと無駄が省け、かつ多くの市民に必要とされる公共施設になるはずである。
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社会研究部   都市政策シニアリサーチャー・ジェロントロジー推進室兼任

塩澤 誠一郎 (しおざわ せいいちろう)

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

(2019年03月13日「研究員の眼」)

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