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最適な資産運用は青い鳥~リスク許容度の計測だけでは分からないのでは~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮
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ただ、正確に採寸さえできればぴったりのサイズの服が手に入るといった風潮があることに、素人ながら違和感を覚えている。筆者は百貨店でシャツをオーダー注文したことがある。初回の作成時に「徐々に理想の形に近づけていくもの」と言われた。いきなりぴったりのシャツは作れないため、トライ&エラーが必要とのことであった。実際に出来上がったシャツは、既製品と違って変なシワがよらず、とても見た目は綺麗に着られるのだが、筆者の好みの問題もあるかもしれないが着心地はいまひとつであった。その後にオーダー注文したシャツの出来もいまひとつで、採寸自体は正確に行っていると思われるが、いまだに理想のシャツは手にできていない。やはり正確な採寸データがあっても、見た目も着心地も良いシャツを作るのは至難のようだ。
個人の資産運用を考える上で重要となるのが、リスク許容度である。リスク許容度とは、簡単にいうと投資家がどの程度の資産価格の下落までなら耐えられるかの度合である。実際にラップ口座やロボ・アドバイザーでは、まず5問から15問程度のアンケートで投資家のリスク許容度を計測する。その後にアンケートから計測した投資家のリスク許容度に合った運用プラン(ポートフォリオ)や金融商品が提示される。アンケートの設問は年齢、年収、性格に関するもの、投資経験の有無、投資予定期間などが主である1。
ただ、リスク許容度さえ計測すれば投資家にとって最適な運用が行えるわけではないと筆者は考えている。資産価格が動いたことに対して自分自身がどのように感じるかを理解することが資産運用では特に大切であり、そのことは計測したリスク許容度だけでは分からないためである。最適な資産運用を考えるには、実際に運用して経験してみることが何より大切になる。つまり、資産運用もオーダーシャツと同じでトライ&エラーを繰り返しながら、最適な資産運用に近づけていくことが必要だと思われる。
ゆえに資産運用を始めようか悩んでいる人は、最初から青い鳥のような最適な資産運用を探そうとせず、とりあえず一歩踏み出してみることを奨めたい。最適な資産運用でなくても、リスク回避的に少額から、つまり損失を出しても後悔しない金額から始めれば良いのである。ある程度慣れてきて、まだまだ価格変動に耐えられる、もしくはより良い資産運用方法が分かってから、金額を増やしても遅くないのである。
1 詳しくは「ロボ・アドバイザー入門」参照
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
(2019年02月25日「研究員の眼」)

03-3512-1785
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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