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中国経済の見通し-景気対策強化も エンジンを噴かすようなことは慎み 成長率は6%台前半へ

三尾 幸吉郎
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1.中国経済の概況

これまでの流れを振り返ると、17年の党大会を間近に控えた15年、中国は輸出の減少と株価の相次ぐ急落で、景気が失速しそうになっていた。そこで、中国政府はインフラ投資の加速や小型車減税の導入で景気テコ入れを図った。そして、16年後半には景気が持ち直し17年に開催された党大会を無事に迎えた。しかし、インフラ投資を加速させた背後では、債務が膨張することとなった。そこで党大会後の17年冬、中国政府は「重大リスクの防止・解消」に舵を切り、債務圧縮(デレバレッジ)を進めたため、18年に入るとインフラ投資が急減速することとなった。それに追い打ちをかけたのが米中貿易摩擦だった。米中対立が激しさを増す中で、これまで好調だった「中国製造2025」関連にも陰りが見え始め、集積回路(IC)の生産にはピークアウト感がでてきている(図表-2)。その影響は株式市場にも及び中国株は大きく下落、チャイナショック後の16年1月に付けた安値を割り込むこととなった。そして、株価の下落は消費者マインドを直撃、自動車販売が前年割れに落ち込むなど高額消費が減退、中国経済を減速させることとなった。
2.消費の動向
業種別の内訳が分かる限額以上企業の統計を見ると、住宅バブル抑制策により住宅販売が低迷したことを背景に、家具類が前年比10.1%増と17年の12.8%増を下回り、家電類も同8.9%増と17年の同9.3%増を下回った(図表-5)。また、自動車の販売も不振で、18年は2808万台と前年比2.8%減に落ち込んだ。自動車販売の不振は、15年夏の株価急落時に導入された小型車(排気量1.6L以下)減税が17年末で撤廃されたことに伴う反動減や、米中貿易摩擦を嫌気した株価の低迷が背景と見られる(図表-6)。また、ネット販売は前年比23.9%増と引き続き高い伸びを示したものの、17年の同39.2%増に比べると伸びが鈍化した。
個人消費への影響が大きい雇用関連指標は今のところ堅調で、都市部の求人倍率は1.3倍、登録失業率は3.8%、調査失業率は4.7%と、いずれも17年末より改善している。また、消費者信頼感指数はまちまちの動きを示しており、中国国家統計局の統計では18年夏に落ち込んだ後に少し改善、UnionPay(銀聯)カードの統計では18年夏をピークに低下してきている(図表-7)。
3.投資の動向
投資を3大セクターに分けて見ると、製造業は前年比9.5%増と17年の同4.8%増を大きく上回り、不動産開発投資も同9.5%増と17年の同7.0%増を上回ったものの、インフラ投資が同3.8%増と17年の同19.0%増を大きく下回った。インフラ投資に急ブレーキが掛かった背景には、習近平政権が「重大リスクの防止・解消」のために債務圧縮(デレバレッジ)を進めたことがある。18年末時点の社会融資総量残高は約201兆元(日本円に換算すると3212兆円)で約18兆元増えたものの、名目成長率並みの増加率だったため、対GDP比ではほぼ横ばいに留まった(図表-9)。また、製造業では鉄精錬加工が前年比13.8%増と高い伸びを回復した。過剰生産設備を抱える鉄精錬加工の回復には違和感もあるが、環境対策関連の投資が加速したものと見られる。なお、「中国製造2025」関連の投資は高水準を維持したものの、その勢いには陰りが見え始めている。
(2019年02月18日「Weekly エコノミスト・レター」)
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