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中国経済の見通し-景気対策強化も エンジンを噴かすようなことは慎み 成長率は6%台前半へ
三尾 幸吉郎
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4.輸出の動向
米中貿易摩擦の悪影響はこれから顕在化してきそうである。米国が中国からの輸入品に高関税を課したにもかかわらず、18年の対米輸出は輸出全体の動きよりも概ね好調に推移した(図表-13)。その背景には米国による制裁関税引き上げ前の駆け込み輸出があると見られるため、今後は反動減が予想される。19年1月に輸出全体が増加する中で対米輸出が減少したのは、その反動減のはじめの一歩かも知れない。また、新規輸出受注は拡張・収縮の境界線(50%)を大きく割り込み、「チャイナショック」で株価が急落した15年とほぼ同水準となった。今後は輸出の大幅減少を覚悟せざるを得ないといえるだろう(図表-14)。
5.中国経済の見通し
習近平政権は17年の中央経済工作会議で、「重大リスクの防止・解消」を2020年までに達成すると目標を定めた。そして、18年に入ると「重大リスクの防止・解消」の金融引き締め効果で景気が悪化、それに米中貿易摩擦が追い討ちを掛け、成長率は3四半期連続で減速した。これを受けて、習近平政権は「反循環調節」という名の景気対策に動き出した。しかし、李克強首相は「バラマキ」はやらないと明言、債務圧縮(デレバレッジ)を進めつつも零細企業向け融資を促進したり、地方政府債務の監督強化を図りつつも地方債を増発したりと、景気テコ入れ一辺倒ではない。したがって、習近平政権はリーマンショック後の「4兆元の景気対策」時のような債務拡大(2010年までの2年で約1.7倍に急増)は慎み、「重大リスクの防止・解消」と「反循環調節」を両立するために、19年の成長率目標を「6%以上」へ引き下げる(18年は「6.5%前後」)と見ている(図表-15、16)。
19年の成長率は前年比6.3%増、20年は同6.2%増と予想している。個人消費は、米中貿易戦争による株価下落で自動車販売が落ち込むなど不安材料もあるが、中間所得層の増加がサービス消費を拡大し、ネット販売化が新たな消費需要を喚起する流れが続くとともに、乗用車はまだ普及途上の段階にあるため、底堅い伸びを維持すると見ている。投資は、米中貿易戦争で半導体産業に先行き不透明感が強まるものの、中国政府が景気テコ入れに動き出したため、債務圧縮(デレバレッジ)の圧力は弱まり、インフラ投資の持ち直しで底割れ回避と予想する。また、米中貿易戦争に伴う工場の海外流出で輸出の伸びが鈍化する一方、中国政府の輸入拡大方針で輸入は輸出を上回る伸びを示すため、引き続き純輸出が成長の足かせとなる。なお、19年の消費者物価は前年比2.1%上昇、20年は同2.4%上昇と予想している(図表-17)。
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(2019年02月18日「Weekly エコノミスト・レター」)
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