2019年01月31日

2018年10-12月期の実質GDP~前期比0.3%(年率1.3%)を予測~

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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●10-12月期は年率1.3%を予測~2四半期ぶりのプラス成長~

2018年10-12月期の実質GDPは、前期比0.3%(前期比年率1.3%)と2四半期ぶりのプラス成長になったと推計される1

外需寄与度は前期比▲0.3%(年率▲1.1%)と3四半期連続で成長率を押し下げたが、自然災害の影響で7-9月期に減少した民間消費(前期比0.6%)、設備投資(同2.3%)が揃って高い伸びとなり、国内需要が外需の落ち込みをカバーした。

設備投資は高水準の企業収益を背景に回復基調を続けており、7-9月期の落ち込みが一時的なものであったことが再確認されることになろう。一方、民間消費は10-12月期には高めの伸びとなる可能性が高いが、2017年4-6月期以降、増加と減少を繰り返しており、基調としては緩やかな持ち直しにとどまっていると判断される。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が0.6%(うち民需0.6%、公需▲0.0%)、外需が▲0.3%と予測する。
 
名目GDPは前期比0.3%(前期比年率1.4%)と2四半期ぶりの増加となり、実質と同程度の伸びとなるだろう。GDPデフレーターは前期比0.0%(7-9月期:同▲0.1%)、前年比▲0.4%(7-9月期:同▲0.3%)と予測する。国内需要デフレーターは前期比0.3%の上昇となったが、輸出デフレーターの伸び(前期比▲1.1%)が輸入デフレーターの伸び(同0.2%)を下回ったことがGDPデフレーターを押し下げた。
 
なお、2018年(暦年)の実質GDP成長率は0.7%(2017年は1.9%)、名目GDP成長率は0.6%(2017年は1.7%)となることが見込まれる。
 
2018年10-12月期は前期比年率1%程度とされる潜在成長率を上回るプラス成長となったが、自然災害の影響で大幅マイナス成長となった7-9月期の後としては物足りない伸びにとどまった。景気は実勢として弱めの動きとなっており、年明け以降も停滞色の強い状況が続く公算が大きい。海外経済の減速に伴う輸出の失速を起点として景気が後退局面入りするリスクはここにきて高まっている。
 
1 1/31までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。
 

●主な需要項目の動向

●主な需要項目の動向

・民間消費~天候不順の影響がなくなり、高めの伸び~
 民間消費は前期比0.6%と2四半期ぶりの増加を予測する。

7-9月期は相次ぐ台風上陸による外出の手控えや生鮮野菜、エネルギー価格の高騰によって下押しされたが、10-12月期は天候が比較的落ち着いていたこと、生鮮野菜の価格高騰一服、ガソリン、灯油価格の下落によって家計の実質購買力が上昇したことが、消費の増加に寄与した。
消費関連指標の推移 10-12月期の消費関連指標を確認すると、「鉱工業指数」の消費財出荷指数は前期比▲0.5%(7-9月期:同▲1.6%)と2四半期連続で低下したが、「商業動態統計」の実質小売業販売額指数(小売業販売額指数を消費者物価指数(財)で実質化)は前期比1.2%(7-9月期:同0.1%)と高めの伸びとなった。業界統計をみると、外食産業売上高が前期比0.6%(7-9月期:同0.7%)と堅調を維持したほか、百貨店売上高が前期比0.3%(7-9月期:同▲2.1%)と小幅ながら5四半期ぶりの増加となった。
・住宅投資~2四半期連続の増加~
住宅投資は前期比1.9%と2四連続の増加を予測する。
新設住宅着工戸数の推移 新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2018年1-3月期の89.7万戸から4-6月期に96.6万戸へと大幅に増加した後、90万戸台半ばの推移が続いている。利用関係別には、相続税対策需要の一巡から貸家は弱い動きが続いているが、持家、分譲住宅が持ち直している。2019年10月に予定されている消費税率引き上げに備えた駆け込み需要が押し上げに一定程度寄与しているものとみられる。
・民間設備投資~高水準の企業収益を背景に好調を維持~
 民間設備投資は前期比2.3%と2四半期ぶりの増加を予測する。

設備投資の一致指標である投資財出荷(除く輸送機械)は2018年7-9月期の前期比▲1.5%の後、10-12月期は同2.3%の増加となった。一方、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2018年7-9月期に前期比0.9%と5四半期連続で増加した後、2018年10、11月の平均は7-9月期を▲4.2%下回っている。

日銀短観2018年12月調査では、2018年度の設備投資計画(含むソフトウェア、除く土地投資額)が前年度比11.6%(全規模・全産業)となり、12月調査としては過去最高の伸びとなった。

7-9月期の設備投資は自然災害による供給制約の影響もあり前期比▲2.8%と大きく落ち込んだが、10-12月期はその反動もあり高い伸びになったとみられる。企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景に設備投資は堅調を維持している。
設備投資関連指標の推移/設備投資計画(全規模・全産業)
・公的固定資本形成~6四半期連続の減少~
公的固定資本形成は前期比▲0.8%と6四半期連続の減少を予測する。
公共工事請負金額、出来高の推移 公共工事の先行指標である公共工事請負金額は、2018年7-9月期の前年比▲4.3%から10-12月期には同3.6%と増加に転じた。一方、公共工事の進捗を反映する公共工事出来高(建設総合統計)は、2018年7-9月期に前年比▲2.9%と2四半期連続の減少となった後、10、11月の平均は前年比▲4.7%と減少幅が拡大した。

災害からの復旧・復興を中心とした総額9,356億円の2018年度第一次補正予算(2018/11/7成立)による公共工事の押し上げ効果が顕在化するのは2019年入り後となるだろう。
・外需~3四半期連続のマイナス寄与~
外需寄与度は前期比▲0.3%(前期比年率▲1.1%)と3四半期連続のマイナスとなり、7-9月期の前期比▲0.1%からマイナス幅が拡大するだろう。財貨・サービスの輸出は前期比1.4%と2四半期ぶりに増加したが、供給制約の緩和や国内需要の持ち直しから、財貨・サービスの輸入が前期比3.0%と輸入の伸びを上回ったことから、外需は成長率の押し下げ要因となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 10-12月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比3.8%(7-9月期:同▲4.4%)、EU向けが前期比5.3%(7-9月:同▲2.4%)、アジア向けが前期比▲1.5%(7-9月期:同▲1.2%)、全体では前期比0.6%(7-9月:同▲2.9%)となった。

米国、EU向けは高めの伸びとなったが、アジア向けが4四半期連続で低下したため、全体では2四半期ぶりの上昇となったものの、7-9月期の落ち込みを取り戻すまでには至らなかった。アジア向けのうち景気減速が鮮明となっている中国向けが前期比▲2.6%(7-9月期:同▲2.7%)と大きく落ち込み、全体の足を引っ張る形となった。

 
日本・月次GDP 予測結果
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年01月31日「Weekly エコノミスト・レター」)

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