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2019年01月30日
EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(2)-EIOPAの2018年報告書の概要報告-
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なお、MAの適用状況をグループで考えると、21グループが適用し、その国別内訳は、英国が14、スペインが6、オランダが1となっている。
以下の図表は、この方法を使用した全ての会社のSCR比率に対するMAの非適用の影響を示している。 図中の各点は、個々のSCR比率をMA非適用の場合の推定SCR比率と比較した1つの会社を表している。各会社の種類は点の色で示される。SCR比率では、71%の会社が0%から100%の間の絶対的な影響を報告した。MAを適用している会社の41%(14の会社、EEAの総技術的準備金の10%)が、MA非適用のSCR比率が100%を下回っていると報告した。また、MAを適用している会社の9%(3つの会社、EEAの総技術的準備金の0.4%)が、MA無しでSCRをカバーするための負の適格自己資本を報告した。MAについては、生命保険会社と生損保兼営会社の間に明確な違いはない。
なお、ノルウェー、フィンランド、スペインのような国においては、TTPの適用とVAの適用の間には大きな重複がある。
また、VAを適用しているグループ数は142である。
また、VAを適用しているグループ数は142である。
(2)SCR比率への影響
VAを適用しなかった場合のSCR比率への影響については、以下の上の図表の通りである。
EEA全体の平均では239%から222%に17%ポイント低下する。
国別では、オランダは184%から142%に42%ポイント低下し、絶対水準でも、影響度割合でも最も影響が大きい。デンマークが296%から255%に41%ポイント低下し、ドイツが363%から325%に38%ポイント低下で続いている。これは、これらの国々においては、VA非適用によりSCRが大きく増加(オランダは27.5%、デンマークは12.5%、ドイツは11.4%)することによっている。
一方で、主要国では、MA適用会社の多い英国とスペインでの影響は、英国が3%ポイント、スペインが4%ポイント、と低くなっている。また、フランスは14%ポイント、イタリアは6%ポイントの影響となっている。
いずれにしても、前回の報告書と比較して、VAを非適用とすることによる平均的な影響は全体的に減少している。
以下の下の図表が、VAを適用している会社の適用前後の状況を示している。
VAを適用している会社の96%の絶対的な影響は0%から50%の範囲内となっている。また、会社数の1%に相当する8社(技術的準備金の市場シェアで0.6%)がVAを適用しない場合、SCR比率が100%未満となる。なお、VAを適用しない場合、適格自己資本がマイナスになる会社はない。
VAを適用しなかった場合のSCR比率への影響については、以下の上の図表の通りである。
EEA全体の平均では239%から222%に17%ポイント低下する。
国別では、オランダは184%から142%に42%ポイント低下し、絶対水準でも、影響度割合でも最も影響が大きい。デンマークが296%から255%に41%ポイント低下し、ドイツが363%から325%に38%ポイント低下で続いている。これは、これらの国々においては、VA非適用によりSCRが大きく増加(オランダは27.5%、デンマークは12.5%、ドイツは11.4%)することによっている。
一方で、主要国では、MA適用会社の多い英国とスペインでの影響は、英国が3%ポイント、スペインが4%ポイント、と低くなっている。また、フランスは14%ポイント、イタリアは6%ポイントの影響となっている。
いずれにしても、前回の報告書と比較して、VAを非適用とすることによる平均的な影響は全体的に減少している。
以下の下の図表が、VAを適用している会社の適用前後の状況を示している。
VAを適用している会社の96%の絶対的な影響は0%から50%の範囲内となっている。また、会社数の1%に相当する8社(技術的準備金の市場シェアで0.6%)がVAを適用しない場合、SCR比率が100%未満となる。なお、VAを適用しない場合、適格自己資本がマイナスになる会社はない。
(4)VAの水準
ユーロの2017年末現在のVAの水準は4 bpsであり、2016年末の13bpsから減少している。これまで報告したように、VA非適用がソルベンシーポジションに与える影響が多くの国でかなりのものであることが示されている。なお、2017年の欧州のVAのサイズは2016年と比べて70%減少しているが、VAの非適用の影響は多くの国ではその減少をそのまま反映していない。
数値の比較は、分析に組み込まれている一部の内部モデル使用者のVAの動的モデリングによって影響を受けることに注意が必要である。
ユーロの2017年末現在のVAの水準は4 bpsであり、2016年末の13bpsから減少している。これまで報告したように、VA非適用がソルベンシーポジションに与える影響が多くの国でかなりのものであることが示されている。なお、2017年の欧州のVAのサイズは2016年と比べて70%減少しているが、VAの非適用の影響は多くの国ではその減少をそのまま反映していない。
数値の比較は、分析に組み込まれている一部の内部モデル使用者のVAの動的モデリングによって影響を受けることに注意が必要である。
(5)内部モデルにおけるVAの取扱
SCRを計算するために内部モデルが使用される場合、VAについて2つの異なる取扱が行われている。
いくつかの内部モデルでは、VAは次の12ヶ月間変化しない(固定VA)とみなされる。このアプローチは、SCR計算のための標準式におけるVAの取扱と同じである。
他の内部モデルでは、今後12ヶ月間のVAの変化の可能性を考慮(動的VA、ダイナミックVA)している。
VA計算の基礎となる市場指標のスプレッドが変化したり、VAへのリスク修正が変化するため、VAは時間とともに変化する。さらには、VA計算で適用される代表資産ポートフォリオの年次更新に反映される形で保険及び再保険会社の投資行動が変化することにより、VAは変化する。
VAが会社の資産のスプレッドに沿って動く場合、動的VAのモデリングは、保険会社の自己資本に対するスプレッドの拡大及び縮小の効果を減少させる。スプレッドの拡大によって生じる資産価値の減少は部分的に又は完全にVAの変化による技術的準備金の減少によって補填される。同様に、より狭いスプレッドによって生じる資産価値の増加が補填される。その結果、動的VAモデルが使用されている場合、固定VAが使用されている場合よりもスプレッド拡大のリスクに対する資本要件が、通常、より低くなる。
(5-1)動的VA適用会社数
以下の図表は、国ごとの動的VAモデリングを使用した会社の数と会社の種類を示している。
ドイツ、フランス、オランダで多くの会社が動的VAを適用している。
なお、会社の種類別では、生命保険会社や生損保兼営会社だけでなく、損害保険会社も同様に動的VAを適用している。
SCRを計算するために内部モデルが使用される場合、VAについて2つの異なる取扱が行われている。
いくつかの内部モデルでは、VAは次の12ヶ月間変化しない(固定VA)とみなされる。このアプローチは、SCR計算のための標準式におけるVAの取扱と同じである。
他の内部モデルでは、今後12ヶ月間のVAの変化の可能性を考慮(動的VA、ダイナミックVA)している。
VA計算の基礎となる市場指標のスプレッドが変化したり、VAへのリスク修正が変化するため、VAは時間とともに変化する。さらには、VA計算で適用される代表資産ポートフォリオの年次更新に反映される形で保険及び再保険会社の投資行動が変化することにより、VAは変化する。
VAが会社の資産のスプレッドに沿って動く場合、動的VAのモデリングは、保険会社の自己資本に対するスプレッドの拡大及び縮小の効果を減少させる。スプレッドの拡大によって生じる資産価値の減少は部分的に又は完全にVAの変化による技術的準備金の減少によって補填される。同様に、より狭いスプレッドによって生じる資産価値の増加が補填される。その結果、動的VAモデルが使用されている場合、固定VAが使用されている場合よりもスプレッド拡大のリスクに対する資本要件が、通常、より低くなる。
(5-1)動的VA適用会社数
以下の図表は、国ごとの動的VAモデリングを使用した会社の数と会社の種類を示している。
ドイツ、フランス、オランダで多くの会社が動的VAを適用している。
なお、会社の種類別では、生命保険会社や生損保兼営会社だけでなく、損害保険会社も同様に動的VAを適用している。
(2019年01月30日「保険・年金フォーカス」)
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