2019年01月22日

あなたの‘信用’、何点ですか?―中国12都市をモデルに進む「社会信用システム」とは?

保険研究部 准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   片山 ゆき

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もし、社会で生きていく上で、自分に点数やランクがつけられているとしたら、どうだろう。中国政府は2020年までに、国民の社会秩序の向上を目指す「社会信用システム」の構築を目指している。アリババのゴマスコアなど商用の信用偏差値とは別の、国による国民への信用格付けだ。信用ポイントが高い人はより便利な生活サービスを利用でき、ルールを守らない人には行動の制限を加えるという、国による信賞必罰の評価システムである。
 

1-国が12のモデル都市を発表、目指す2020年までの全国導入

1-国が12のモデル都市を発表、目指す2020年までの全国導入

2018年1月、中国政府は「社会信用システム」のモデル都市として、12の都市を発表した1。それは、杭州市、南京市、アモイ市、成都市、蘇州市、宿遷市、惠州市、温州市、威海市、濰坊市、義鳥市、栄成市である(図表1)。
図表1 国が指定した12のモデル都市(第一弾)
国が主導するこの取組みは、2014年6月に国務院が発表した「社会信用システム構築の計画大綱(2014-2020年)」(以下、大綱)に端を発している。2015年以降、43都市が候補として、それぞれ取組みを行ってきた。その中で、2018年1月に12のモデル都市が正式に選出された。

図表1より、(成都市を除き)12都市の多くが東部沿海地域に位置していることがわかる。また、図表2の各都市の人口と経済規模をみると、人口規模が1,000万人ほどで(1,000万人以上を含む)、域内総生産が1兆元以上の蘇州市、成都市、杭州市、南京市などの大規模な都市に加えて、人口、域内総生産の規模がその半分以下(人口が500万人前後、域内総生産が5,000億元以下)のアモイ市、惠州市、威海市など中規模都市と、大きく分けて2つのカテゴリーに分類される。
図表2 12のモデル都市の常住人口と経済規模(2017年)
 
1 12のモデル都市は、国家発展・改革委員会「首批社会信用体系建設示範城市名単公布」(2018年1月9日)による。ただし、モデル都市の指定を受けていなくても、各都市が自主的に実施をしている。
 

2-中央政府×政府機関×地方政府と、末端まで張り巡らされる個人の信用システム網

2-中央政府×政府機関×地方政府と、末端まで張り巡らされる個人の信用システム網

では、12のモデル都市はどのように選出されたのであろうか。

2014年に大綱が発表されて以降、国務院や発展改革委員会を中心に、2015年から2016年にかけて多くの関連の規定や通知が発表されている(図表3)。同時に、モデル候補都市として、2015年に11都市、2016年に32都市が追加で認定され、合計43のモデル候補都市が選出された(図表4)。モデル候補都市は民間のプラットフォーマーと提携することでノウハウを受け、それに独自の指標を加え、市単位の社会信用システムの構築に取り組んだ。2017年には政府がモデル都市を評価すべく、評価・審査の指標が正式に発表され、審査も行われている。最終的に審査にあたったのは、国家発展改革委員会、人民銀行から委託された国家改革報社(国家発展改革委員会が主管するメディア)や中国人民大学、中国財形大学などの学術機関であった。
図表3 社会信用システムの構築に関する主な規定・通知
図表4 モデル候補都市からモデル都市認定までの動き
一方、「大綱」発表前の2013年には、法の裁きに従わない人(自然人)を中心に、行動に制限をかける信用システムの構築がすでに始まっていた2。2013年、最高人民法院(最高裁判所)と中国人民銀行(中央銀行)は、「失信被執行人」のブラックリストを共有化する備忘録を結んでいる。「失信被執行人」は、裁判所が通知や命令を出しているのに、それに従わなかったり、罰金や債務を支払わない者で、法院が認定する。

当初、法院と銀行間の連携で始まったが、2018年末時点では、中国の60以上の省庁、政府機関が連携し、個人や法人の情報を蓄積・管理する共同のプラットフォーム「信用中国」を構築している3。この信用中国では、各機関の奨励情報、ブラックリストなど賞罰情報を公表している。
 
一旦、失信被執行人と認定されれば、氏名、年齢、IDナンバー、法院からの通知内容、執行状況などが信用中国のウェブサイトで公表される4

更に、失信被執行人が、指定された期間中に罰金を支払わないなど法院の命令に従わない場合は、高額消費や生活・仕事で必要とは判断されない消費を制限されることになる。それは(1)航空券、列車(軟座)、貨客船(2等以上)の席の購入、(2)星付きの旅館・ホテル、ナイトクラブ、ゴルフ場などにおける高額消費、(3)不動産の購入または新築、増築、住宅の高級改装、(4)ハイレベルなオフィス、ホテル、マンションなど賃貸しての就業、(5)業務に必要のない車輌の購入、(6)旅行、バカンス、(7)高額な学費がかかる私立学校への子女の就学、(8)高額な保険料を必要とする貯蓄・投資性保険商品への加入、(9)高速列車など一等以上の席の購入である5。最高人民法院のウェサイトでは、消費や行動を制限されている対象者のリストも別途公表されている。
 
このように、当初は中国の法律や政府から見て信用度の低いと判断された者を対象に行われていたが、60の政府機関による‘横の連携’に、中央政府、32の省・直轄市・自治区、40の地方都市(地方政府)など‘縦の連携’が加わることで、大きな社会システムへと発展した。地方政府は、信用中国の地方版を活用しながら信用ポイントを運用し、民間のプラットフォーマーとも連携することでそのシステムを市民の末端まで浸透させるつもりだ。
 
2 2008年~2012年の全国の法院(裁判所)において、債務者や判決を受けた者で支払い能力があるのにもかかわらず、7割が逃亡、責任逃れ、抵抗などで支払いを拒否しており、法の執行力が弱かった。(人民ネット2013年7月20日)。なお、中国人民銀行は、2013年に3月に、中国における信用情報の監督機関となり、市場化が開始されている。
3 信用中国ウェブサイト、「2018社会信用十大進展」(2019年1月2日発表)。
4 個人(自然人)のみならず、法人についても適用されている。
5 「最高人民法院关于限制被執行人高消費的若干規定」(2015年7月改定版)。最高人民法院のウェブサイトの統計によると、2018年12月4日までで、公表された失信被執行人のリストは1,261万例、飛行機への搭乗が制限されたのはのべ1,653万人、列車への乗車制限はのべ540万人であった(2018年12月5日アクセス)。
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保険研究部   准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき (かたやま ゆき)

研究・専門分野
中国の保険・年金・社会保障制度

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