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最近の人民元と今後の展開(2019年1月号)~米中貿易戦争の停戦中は横ばい、その後は波乱含み
三尾 幸吉郎
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- 12月の人民元レート(対米ドル、基準値、中国外貨取引センター)は前月末比1.1%上昇し1米ドル=6.8632元で終えた。また、日本円に対する人民元レートは、米ドルに対する日本円レートが人民元以上に上昇したため、前月末比1.7%の元安・円高で取引を終えた。
- 19年3月末に向けての人民元は、米中貿易戦争の停戦中は横ばい圏で推移する可能性が高いものの、その後は波乱含みと見ている。貿易協議が決裂すれば、中国は景気失速を回避するため利下げに踏み切り、人民元が下落する可能性がある。一方、その過程では、購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感に焦点が当たり、人民元が上昇する可能性もあるからだ。想定レンジは3月以降の波乱を勘案して、1米ドル=6.3~7.2元、1元=14.9~16.5円。
1――12月の人民元の動き
2――今後の展開
米中経済を概観すると、米景気は依然高水準で追加利上げもあり得る状況だが、最近の株価乱高下を受けて不透明感もある。他方、中国では景気減速が鮮明となっており、米中貿易協議が決裂すれば、景気失速を回避するため利下げに踏み切るだろう。したがって、米中金利は逆転する可能性が高く、人民元を押し下げる要因となる(図表-3)。一方、米中両国は18年12月の首脳会談で、米国が19年1月1日に発動する予定だった追加関税(2000億ドル相当の製品に対する関税を10%から25%に引き上げる)を3月1日まで猶予した上で、中国は米国から農産物、エネルギー、工業製品などの購入を増やして貿易不均衡の是正を図るとともに、中国の構造的問題(技術移転の強要、知的財産権の保護、非関税障壁の是正、サイバー攻撃の停止、サービスと農業分野の市場開放)の解決に関する議論を進めることとなった。
新冷戦の瀬戸際にあった米中両国が、貿易戦争を一時停止し、共存共栄の道を探り始めた点は評価できる。しかし、米中貿易不均衡の是正という点では力不足である。貿易不均衡が生じた背景には、前述の構造的問題に加えて、“米国の過剰消費”と“中国の過剰生産”という根本的な問題があるからだ1。そして、その背後には購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感がある。新興国の通貨は一般に、金利水準は高いものの国際的信用が低いため割安に放置されるが、世界第2位の経済大国で大幅貿易黒字の中国もその例外ではない。現下のこうした環境は、1985年のプラザ合意前に、米国の貿易赤字が拡大していたにも拘らず、高金利を背景に米ドル高が進んだ局面を想起させる(図表-4)。今回の米中貿易協議の過程では、購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感に焦点が当たり「現代版プラザ合意」のようなことが起きて、人民元が上昇するという可能性も排除できないと考えられる。
1 米中貿易不均衡の根本的な原因に関しては「図表でみる世界経済(米中関係編)~米中貿易戦争はどうなるのか?」基礎研レター2018-10-19を参照
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(2019年01月07日「経済・金融フラッシュ」)
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