2019年01月07日

最近の人民元と今後の展開(2019年1月号)~米中貿易戦争の停戦中は横ばい、その後は波乱含み

経済研究部 上席研究員   三尾 幸吉郎

中国経済 金融市場・外国為替 などの記事に関心のあるあなたへ

btn-mag-b.png
基礎研 Report Head Lineではそんなあなたにおすすめのメルマガ配信中!
各種レポート配信をメールでお知らせするので読み逃しを防ぎます!

ご登録はこちら

twitter Facebook g+ このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

文字サイズ

  • 12月の人民元レート(対米ドル、基準値、中国外貨取引センター)は前月末比1.1%上昇し1米ドル=6.8632元で終えた。また、日本円に対する人民元レートは、米ドルに対する日本円レートが人民元以上に上昇したため、前月末比1.7%の元安・円高で取引を終えた。
     
  • 19年3月末に向けての人民元は、米中貿易戦争の停戦中は横ばい圏で推移する可能性が高いものの、その後は波乱含みと見ている。貿易協議が決裂すれば、中国は景気失速を回避するため利下げに踏み切り、人民元が下落する可能性がある。一方、その過程では、購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感に焦点が当たり、人民元が上昇する可能性もあるからだ。想定レンジは3月以降の波乱を勘案して、1米ドル=6.3~7.2元、1元=14.9~16.5円。

1――12月の人民元の動き

12月の人民元レート(対米ドル、基準値、中国外貨取引センター)は前月末比1.1%上昇し1米ドル=6.8632元で終えた。これまでの流れを簡単に振り返ると、15年8月の人民元ショック以降、中国では資金流出懸念が高まり、人民元は17年1月に1米ドル=6.9526まで下落した。しかし、17年5月に中国政府が基準値設定方法を変更したことやユーロが上昇に転じたことなどから、18年春には人民元ショック前水準(同6.2元台)まで値を戻すこととなった。その後、中国経済が減速し始めると米金利上昇に伴う米中金利差縮小が嫌気されて下落に転じた。18年8月に中国政府が基準値設定方法を再び厳しくすると下げ止まり、米長期金利が18年11月の3.2%台をピークに低下に転じたため、人民元は2ヵ月連続の上昇となった(図表-1)。なお、日本円に対する人民元レートは100日本円=6.2294元(1元=16.05円)と、米ドルに対する日本円レートが人民元以上に上昇したため、前月末比1.7%の元安・円高で取引を終えた(図表-2)。
(図表-1)人民元レート(対米ドル基準値)/(図表-2)12月の主要通貨の変化率(対米ドル、前月末比、WM/Reuters)

2――今後の展開

さて、19年3月末に向けての人民元は、米中貿易戦争の停戦中(3月1日まで)は横ばい圏で推移する可能性が高いものの、その後は波乱含みと見ている。米中間の貿易協議が決裂すれば、中国は景気失速を回避するため利下げに踏み切り、人民元が下落する可能性がある。一方、貿易協議の過程では、購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感に焦点が当たり「現代版プラザ合意」のようなことが起きて、人民元が上昇する可能性もあるからだ。そこで、3月以降の波乱を勘案して想定レンジは広めに設定している(1米ドル=6.3~7.2元、1元=14.9~16.5円)。
(図表-3)米中の短期金利の推移 米中経済を概観すると、米景気は依然高水準で追加利上げもあり得る状況だが、最近の株価乱高下を受けて不透明感もある。他方、中国では景気減速が鮮明となっており、米中貿易協議が決裂すれば、景気失速を回避するため利下げに踏み切るだろう。したがって、米中金利は逆転する可能性が高く、人民元を押し下げる要因となる(図表-3)。

一方、米中両国は18年12月の首脳会談で、米国が19年1月1日に発動する予定だった追加関税(2000億ドル相当の製品に対する関税を10%から25%に引き上げる)を3月1日まで猶予した上で、中国は米国から農産物、エネルギー、工業製品などの購入を増やして貿易不均衡の是正を図るとともに、中国の構造的問題(技術移転の強要、知的財産権の保護、非関税障壁の是正、サイバー攻撃の停止、サービスと農業分野の市場開放)の解決に関する議論を進めることとなった。
(図表-4)米ドルに対する割安度(米ドル=100とした場合) 新冷戦の瀬戸際にあった米中両国が、貿易戦争を一時停止し、共存共栄の道を探り始めた点は評価できる。しかし、米中貿易不均衡の是正という点では力不足である。貿易不均衡が生じた背景には、前述の構造的問題に加えて、“米国の過剰消費”と“中国の過剰生産”という根本的な問題があるからだ1。そして、その背後には購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感がある。新興国の通貨は一般に、金利水準は高いものの国際的信用が低いため割安に放置されるが、世界第2位の経済大国で大幅貿易黒字の中国もその例外ではない。現下のこうした環境は、1985年のプラザ合意前に、米国の貿易赤字が拡大していたにも拘らず、高金利を背景に米ドル高が進んだ局面を想起させる(図表-4)。今回の米中貿易協議の過程では、購買力平価(PPP)基準で見た人民元の割安感に焦点が当たり「現代版プラザ合意」のようなことが起きて、人民元が上昇するという可能性も排除できないと考えられる。
 
1 米中貿易不均衡の根本的な原因に関しては「図表でみる世界経済(米中関係編)~米中貿易戦争はどうなるのか?」基礎研レター2018-10-19を参照
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予 測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
twitter Facebook g+ このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む
80_ext_01_0.jpg

経済研究部   上席研究員

三尾 幸吉郎 (みお こうきちろう)

研究・専門分野
中国経済

(2019年01月07日「経済・金融フラッシュ」)

レポート

アクセスランキング

【最近の人民元と今後の展開(2019年1月号)~米中貿易戦争の停戦中は横ばい、その後は波乱含み】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

最近の人民元と今後の展開(2019年1月号)~米中貿易戦争の停戦中は横ばい、その後は波乱含みのレポート Topへ