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1――TikTok を手掛けるのは中国ByteDance
TikTokを手掛けるのは中国のユニコーン1企業、2012年創業のByteDanceである。同社のニュースアプリ、Toutiao (今日頭条)は中国で多くのユーザーを抱えている。同社のプラットフォームは、AIを活用し、利用者それぞれが関心を持ちそうなコンテンツを提供するようになっているそうだ2。この11月には、未上場の企業ながら、日本のソフトバンクグループなどの投資家から30億ドル(1ドル112円換算で約3,360億円)という巨額の資金調達を実施したと報じられた3。その際につけられた評価額(企業価値)は、750億ドル(約8.4兆円)とも言われ、世界最大級のユニコーンとなった。
もしかしたら、中国企業の製品だと知らずに使っているユーザーも多いかもしれない。日本でTikTokがリリースされたのが2017年の夏である。素直に「面白い」と受け入れられた結果、わずか1年程度で多くの日本の若者の心を鷲づかみにした。ユーザーが1日に何度も起動するアプリになれば、ビジネスの可能性はより広がっていく。メディアとしての広告価値は高まり、メッセージアプリのLINEのように違った領域に横展開していく可能性もあろう。
1 一般に、創業10年以内で企業価値が10億ドル以上(1ドル=112円換算で1120億円)の未上場ベンチャー企業を指す。
2 ByteDance ウェブサイトによる。https://bytedance.com/ai/
3 Bloomberg”Bytedance Is Said to Secure Funding at Record $75 Billion Value”(2018年10月26日)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-10-26/bytedance-is-said-to-secure-funding-at-record-75-billion-value
2――世界では革新的なベンチャーが生まれ、巨額の資金を集めて突き進んでいる
世界中でユニコーンと呼ばれる巨大ベンチャーが生まれている(図表1、2)。評価額(企業価値)が大きいということは、それだけ巨額の資金を集めて事業拡大に投下しているということを意味する。優秀な人材や魅力的な技術をかき集め、研究開発やマーケティングに巨額の資金を投下し、有望な会社を買収する。国や業種の壁を越えて、新たな市場の獲得を目指している。こうしたイノベーション競争の中で、日本は立ち回っていかなくてはならない。
起業家が少ない、リスクマネーが少ないと言われてきた日本だが、少しずつベンチャー・エコシステム(生態系)が育ちつつある。大企業がオープンイノベーションを求めてベンチャーとの連携を増やしている。リスクマネーも米中と圧倒的な差はあるが増えており、日本にも画期的なベンチャーが生まれてきている。ベンチャーが次々と生まれるエコシステムが「テイクオフ」するまで、あと一押し必要だ。世界的なイノベーション競争の中、あと数年で「決着」がついてしまう可能性もある。残された時間が多いわけではない。産官学を挙げた取組みが必要だ。
ベンチャー投資に携わったことのある身として、TikTokのヒット、そしてJICの問題には、改めて深く考えさせられた。これを機に、日本のベンチャー・エコシステムをどう育てていくのか、政府のベンチャー支援策がどうあるべきか、官民ファンドはどうあるべきか等について、前向きな議論が進むことを期待したい。
4 経済産業省 「第四次産業革命に向けたリスクマネー供給に関する研究会-取りまとめ」http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20180629001.html
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中村 洋介
研究・専門分野
(2018年12月13日「研究員の眼」)
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