コラム
2018年06月21日

出でよ、次のユニコーン~経済産業省のプログラム「J-Startup」がスタート!~

  中村 洋介

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1――はじめに

2018年6月19日、フリーマーケットアプリのメルカリが東証マザーズに上場した。メルカリは日本の数少ない「ユニコーン」と言われた有力ベンチャー企業。上場初日の株価は、公開価格を大きく上回る大商い、市場の注目の高さがうかがえる。「メルカリの次に来るユニコーンは?」という期待が高まるものの、米国や中国と比べると日本はユニコーンの数や規模感で見劣りする1。そのような中、「次のユニコーン」を生み出すべく、経済産業省のプログラムが動き出した。
 
1 日米中のユニコーンの状況については、拙稿『成長戦略に「ユニコーン」創出目標が掲げられる』(2018年6月14日)を
参照されたい http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=58851?site=nli

2――経済産業省のプログラム「J-Startup」

2018年6月15日に閣議決定された政府の「未来投資戦略2018」では、「企業価値又は時価総額が10 億ドル以上となる、未上場ベンチャー企業(ユニコーン)又は上場ベンチャー企業を2023年までに20 社創出」するという、新たな目標が設定された。それを達成すべく、閣議決定に先立つ2018年6月11日、経済産業省のベンチャー支援プログラム「J-Startup」がスタートした。
(図表1)J- Startu p企業の推薦対象・基準 このプログラムの目的は、「世界で戦い、勝てるスタートアップを生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供すること」だ。日本で活動するベンチャー企業(スタートアップ)約10,000社の中から、経済産業省・事務局が指名した委員が有望ベンチャーを推薦。外部審査委員会の審査を経て選ばれた企業を「特待生(J-Startup企業)」として認定。認定された特待生企業は、政府や民間サポーター企業の様々な支援を受けられる(図表2)。このプログラムでは、政府や民間サポーター企業等を含めた「コミュニティ」を構築し、そこで「特待生」をタイムリーかつスピーディに支援することを目指している2
(図表2)J- Startu p 支援例 今回認定された「特待生(J-Startup企業)」は92社3。推薦した委員4には、実力・実績ともに十分の国内有名ベンチャーキャピタリストやエンジェル投資家が並ぶだけに期待は高まる。特待生に選ばれたのはどのような企業だろうか。メルカリ、クラウドワークス(クラウドソーシング事業)、CYBERDYNE(医療。介護向けロボットスーツ)、ペプチドリーム(創薬バイオベンチャー)、マネーフォワード(家計簿アプリ)等の「上場組」も含まれている。未上場ベンチャーでは、Spiber(人口クモ糸の開発)、お金のデザイン(ロボアドバイザー)、アクセルスペース(超小型人工衛星)、Preferred Networks(AI)等、報道でもよく目にする有名ベンチャーも多く選ばれた。各ベンチャーが手掛ける領域は、素材開発、宇宙ビジネス、創薬、AI、フィンテック等と幅広い。

民間サポーター(J-Startup Supporters)にも、多くの企業が名を連ねた5。主要ベンチャーキャピタル(以下、VC)。そして、通信キャリア、製薬会社、電機メーカー、不動産会社、運輸等、幅広い業種の大手事業会社。メガバンク、大手生損保、証券会社等の金融機関。そして、コンサルティング企業や法律事務所、監査法人。改めて、イノベーション・ベンチャーへの注目の高さが分かる。

3――ロールモデル創出、海外を目指すマインドの醸成に期待

日本のベンチャーの課題として、起業に挑戦する人の少なさ(低い開業率)、リスクマネー供給の少なさ、世界を目指す視点が足りないこと等が長らく指摘され、日本のベンチャーを取り巻く環境(ベンチャー・エコシステム)に如何に厚みをもたらすかが議論されてきた。今回の経済産業省のプログラムで構築しようとしている「コミュニティ」は、有力ベンチャー、政府、投資家(VC、金融機関等)、大手事業会社、その他ベンチャーを支えるプレイヤーが集まる、いわば「官製ベンチャー・エコシステム」のようなものであり、課題解決に向けた一つの解となることが期待されている。また、選りすぐりの「特待生」を国内外の事業会社や投資家に広く認知させることで、今後の資金調達や事業提携に繋がるケースも出てくるだろう。

日本において、起業に挑戦する人が少ない、世界展開を目指すスケールの大きいベンチャーが少ないという課題の一因として、「ロールモデルの不在」が言及されてきた。起業に至ったとしても、日本は幅広いビジネス領域で一定の市場規模があり、積極的な投資を通じた世界展開をせずとも株式市場に上場することも出来た。「ユニコーン」でなくとも、十分な成功の果実は得られてきたのだ。しかしながら、世界展開する大きなITプラットフォーマーが席巻し、米国や中国のベンチャー企業が桁違いの資金を調達して研究開発や事業展開を進める中で、日本の市場が一気に取られてしまう恐れもある。起業家やベンチャー投資家にも、今まで以上にグローバルな高い視座が求められる環境になっている。そこに取組むのが、「特待生」を「集中支援」する今回のプログラムと言えよう。

世界で成功するロールモデル、次のユニコーンを創出に繋がるプログラムとなるか、官民一丸となった今後の取組みに注目だ。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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(2018年06月21日「研究員の眼」)

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