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新卒一括採用の今後ー就活ルールの見直しを前向きに捉え、議論を継続させる
基礎研REPORT(冊子版)12月号
清水 仁志
1―ついに始まった就活ルール見直し
就活ルールの根拠となる経団連の「採用選考に関する指針」は、外資、ベンチャーなどの経団連非加盟企業には適用されないうえ、一部の加盟企業でも指針が守られていないとの声も聞く。また、企業は秋卒業の留学生や外国人など多種多様な人材を積極的に採用し、ダイバーシティの推進をすることが求められている。
経団連は上記を踏まえ、2020年度以降に卒業予定の学生については「採用選考に関する指針」を策定しないことに決定した。一方で、採用を巡る混乱の回避や学業への配慮等から、何らかのルールは必要とする声も多く、ルール作りは政府主導で行われることとなった。
10月29日に、政府は2020年度に卒業予定の学生の採用活動時期については、経団連が定める現状の指針を維持することに決定したが、インターンのあり方などのその他の詳細内容や、2021年度以降については、今後も引き続き議論される。
2―採用活動の早期化・長期化
政府主導の採用ルール作りとは言え、それはあくまで要請であり、最終的なルールの運用は各企業にゆだねられる。経団連から政府へとルール作りの旗振り役が代わったが、強制力を持たなければ企業のルール遵守は期待できないだろう。仮に学生から人気の高い経団連加盟の大企業が採用活動を前倒しした場合、他の企業は更に早く採用活動を開始するという、いたちごっこになり、採用活動の早期化・長期化は避けられない。
3―地方中小企業、学生に配慮した強制力を持ったルール
上記に加え、政府主導のルールがどの程度守られるのかわからないため、採用活動の混乱は避けられない。無秩序な採用活動となれば、企業・学生が共倒れとなるリスクが存在する。
政府はこうした点を考慮し、影響が大きい地方の中小企業や学生に配慮しつつ、一定の強制力を持ったルールを作るべきだろう。
4―学業を頑張った人が報われる環境
一般的に日本の大学生は勉強をあまりしないと指摘されている。欧米と比べ大学の卒業に勉強がそれほど必要ないということに加え、上述の通り、採用で学業が必ずしも重視されないことが原因だと考えられる。つまり、就職活動を短期化するだけでは、学生が学業に注力するとは限らない。逆に、採用活動が長期化したとしても、企業が採用で学業を重視するならば、学生は学業に注力する可能性がある。
ある調査*によると、日本の労働市場では企業が求めるスキルを満たす人材が不足し、世界で最も深刻な人材のミスマッチが起きているという。重要なことは、企業・大学が一体となり、学業を頑張った人が報われる評価体系を取り入れることで、大学での成長が促され、企業が求めるスキルを満たす人材が育つ環境を作り出すことだ。
5―おわりに
*Hays「The Hays Global Skills Index」
清水 仁志
研究・専門分野
(2018年12月07日「基礎研マンスリー」)
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