2018年08月24日

消費者物価(全国18年7月)-コアCPIの1%到達が遠のく

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は前月と変わらず

消費者物価指数の推移 総務省が8月24日に公表した消費者物価指数によると、18年7月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.8%(6月:同0.8%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:0.9%、当社予想も0.9%)を下回る結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.3%(6月:同0.2%)と5ヵ月ぶりに前月から上昇率を高めた。生鮮食品が前年比4.3%(6月:同▲1.2%)と高めの伸びとなったため、総合は前年比0.9%(6月:同0.7%)と上昇率が前月から0.2ポイント拡大した。
コアCPIの内訳をみると、ガス代(6月:前年比2.5%→7月:同2.6%)、灯油(6月:前年比20.5%→7月:同22.2%)、ガソリン(6月:前年比16.1%→7月:同16.8%)は上昇幅が拡大したが、電気代(6月:前年比3.1%→7月:同2.5%)の上昇幅が縮小したため、エネルギー価格の上昇率は前年比7.3%(6月:同7.3%)となり、前月と変わらなかった。原油価格上昇に伴い燃料費調整単価は上昇しているが、原発稼動を受けて関西電力が値下げを実施したことが全国の電気代を押し下げた。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 また、7月の東京都区部では家賃の上昇(6月:前年比0.0%→7月:同0.3%)が見られたが、全国では前年比▲0.2%と前月と変わらなかった。

一方、外食は前年比1.0%と6月の同0.9%から伸びを高めた。外食は原材料費や人件費の上昇を反映し、17年8月の前年比0.1%からじわじわと上昇率を高めている。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.57%(6月:0.57%)、食料(生鮮食品を除く)が0.18%(6月:0.17%)、その他が0.04%(6月:0.05%)であった。

2.上昇品目数が減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、7月の上昇品目数269品目(6月は273品目)、下落品目数は187品目(6月は183品目)となり、上昇品目数が前月から減少した。上昇品目数の割合は51.4%(6月は52.2%)、下落品目数の割合は35.8%(6月は35.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は15.7%(6月は17.2%)であった。

コアCPI上昇率はゼロ%台後半の推移が続いているが、上昇品目数の割合は引き続き50%を上回っているものの、18年に入ってから減少傾向となっている。物価の基調は徐々に弱まる方向にある。

3.コアCPIの1%到達が遠のく

コアCPIに対するエネルギーの寄与度 7月のコアコアCPIは5ヵ月ぶりに伸びを高めたが、引き続きゼロ%台前半の低水準にとどまっている。エネルギー価格は、原油価格上昇の影響が遅れて反映される電気代、ガス代を中心に9月までは伸びを高めるが、その後はガソリン、灯油の上昇率が大きく低下することから、伸び率の鈍化が見込まれる。

基調的な物価上昇圧力が強まる兆しが見られない中、円安、原油高がなければコアCPI上昇率の1%到達は難しい状況となってきた。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年08月24日「経済・金融フラッシュ」)

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