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- トルコ・ショックとEU-経済・金融システムよりも気掛かりな移民・難民政策への影響-
2018年08月22日
■要旨
- 米国との外交摩擦を引き金とするトルコ・リラの大幅な下落は、トルコと共通する問題を抱える幾つかの新興国の通貨安を引き起こした。先進国では、欧州への影響が最も大きいと見られたことで、ユーロ安、欧州銀行株安も進んだ。
- トルコと欧州の経済関係は緊密だ。交渉は滞っているものの、トルコはEU加盟候補国であり、EUとの間で関税同盟を締結している。金融面でも、スペイン、フランス、イタリアなどの大手行が、現地行に出資しビジネスを拡大してきた。
- しかし、トルコの問題が、欧州の景気の基調を変えたり、金融システム不安の再燃の引き金となったりすることはない。EU経済や欧州の銀行市場の規模に対してトルコ・ビジネスの規模は限定的であり、エルドアン大統領の政策手法という固有の要因が働いたトルコ・ショックは新興国に広がる危機の兆候とは言えない。
- だが、EUにとって、移民・難民問題の鍵を握るトルコ情勢の不安定化は政治的には潜在的な脅威だ。16年3月の「EU・トルコ声明」でトルコからギリシャ渡る移民・難民は減少に転じたが、EUの不法移民との戦いは続いている。移民・難民問題は、EU市民の関心も高く、最優先の政治課題。トルコと移民・難民対策での共同行動がとれないような事態に問題が発展することは何としても避けたいところだ。しかし、現状ではトルコへのマクロの金融支援(MFA)は難しく、当面、状況を注視するほかない。
(2018年08月22日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
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